ヤマダ電機はこのほど、同社が運営するECサイト「ヤマダウェブコム」(PCサイト・モバイルサイトの両方)における商品購入時の支払いサービスの1つとして、ペイパルの「ID決済」を追加した。ペイパル会員であれば、あらかじめ登録済みのペイパルIDとパスワードを用いることで、個人情報やクレジットカード番号をあらためてヤマダウェブコムに打ち込む必要なく、支払いから配送情報の連絡までが完了する。
「ヤマダ電機ECサイト「ヤマダウェブコム」にデジタルウォレット(ID決済)として導入」(PayPal 社によるプレスリリース)
ヤマダ電機のECサイトでは、従来から会員登録なしでも購入できる「ゲスト購入」機能を提供してきたが、ペイパルのID決済によりさらに購入にかかる手間が軽減される。例えば、通信販売の宿命として、たとえゲスト購入であっても配送先として住所や氏名などの個人情報を入力する必要は生じてしまう。この部分でも、ペイパルのID決済を利用すれば、ペイパルに登録した個人情報がヤマダウェブコムの配送先登録画面に引き継がれるため、面倒な入力の手間が軽減される。またペイパルであれば、機微性の高いクレジットカード情報についても、ECサイト側に通知や保管がされないため、ユーザーの安心にもつながる。
あらかじめユーザー情報やクレジットカードなどの決済情報が紐付け登録された会員サイトのID・パスワードを用いて、ネット決済時のユーザー側の操作負担を軽減する「ID決済」は、ヤフーやAmazonなども参入して競争が激化している領域。世界では1.7億人が使用する(アクティブアカウント数)ペイパルだが、「国内ユーザーは現状100万人ほど」(PayPal Pte. Ltd.東京支店コミュニケーションズ部長の杉江知彦氏)にとどまるのが実情だ。
メジャーな情報ポータルやショッピングサイトなどと比べ、消費者に対するブランド力は相対的に低い(知られていない)ペイパルだが、決済専業である自らの立ち位置を生かし、リアルタイムでの不正検知機能や、年中無休のカスターマーサポート、売り手・買い手間での保護制度など、安心・安全な決済をアピールする。さらに、今年7月にeBayから分離、単独での上場を果たした以降は、次世代決済への対応を強化している。例えばペイパル傘下のブレインツリーでは、海外において「Android Pay」や「Apple Pay」のネット決済に対応するショッピングカートを提供。具体的な計画こそないが、「(現状ペイパルIDに紐付けている)クレジットカード以外にも選択肢を広げ、さまざまなペイメントの”OS”の立ち位置を目指したい」(同・杉江氏)と話す。
[2015-11-05]