クレジットカードをはじめとする決済カードでは、安全性向上の観点から、従来の磁気ストライプカードから接触型ICカードへの移行が世界的に進んでいる。これらのICカードはEMV規格という世界標準のルールに基づいて開発・発行されており、利用の際にはICカードを読み取り機に挿し込んだ後に手元のキーパッドから暗証番号を入力する方式(「チップ&PIN」)が採用されている。日本でもおなじみの決済方法だ。
関連する事業者にとってはお金が余計にかかる話なので、もちろん各国の対応に温度差は見られるのだが、中でも突出して未対応を貫いてきたのが米国である。世界地図にぽっかりと開いた広大なセキュリティホールと言っても過言ではないだろう。
そんな中、5月13日、米国のクレジットユニオンであるUNFCU(United Nations Federal Credit Union)は、今年2010年の後半からEMV取引に対応したICカードの発行を始めると発表した。
世界最大のICカードベンダーであるジェムアルト(Gemalto)社のICカードを採用。同カードはEMV規格の高度な認証タイプであるDDAに対応し、接触・非接触に両対応するデュアルインターフェースICカードとなる。
ジェムアルトによると、米国のカードイシュアー(主として金融機関)がEMVに対応する決済ICカードを本格的に発行するケースは初めてという。
UNFCUのカード会員は頻繁に米国外へ海外旅行に訪れる顧客が多く、国際的にEMV取引への移行が進む中で、米国から持参した磁気カードベースのクレジットカードを使用した際のトラブルが年々増えていた。(タクシーやチケット発行機などのオフライン環境でのカード利用が制限される、など)
●Gemalto
http://www.gemalto.com/php/pr_view.php?id=749
一方、世界最大の流通小売業である米ウォルマートがEMV対応を準備していることがわかった。今週アリゾナ州で開催されたスマート・カード・アライアンス(Smart Card Alliance)の年次総会で担当者が明らかにした。すでにPOSのハードウェア側は全台が「チップ&PIN」のEMV取引に対応しており、ソフトウェアの追加だけで受け入れが可能になるという。
米ウォルマートがEMV化を急ぐ理由は明確で、カード取引のセキュリティ強化にある。同社のこうした態度は、磁気ストライプカードのみを受け入れるカード加盟店(マーチャント)がいよいよ世界中からカード犯罪の標的として定められつつあることを物語っている。
●Smart Card Alliance
http://www.smartcardalliance.org/