PayPal Pte. Ltd.東京支店は6月25日、東京都内で「新機能記者説明会」を開催し、新たに3つの機能を提供すると発表した。ペイパルの一般的な利用シーンといえば、提供された商品やサービスの「買い手」である個人が、「売り手」の企業に代金を支払うもの。しかし、今回ペイパルでは、これとは反対の流れで、企業が個人にお金を支払う機能を拡充し、より使いやすいサービスに改めた。BtoCならぬ「CtoB」で取り込みを狙うのはどのような支払いニーズだろうか。【本稿では、2つ目、3つ目の新機能をレポートする。1つ目はこちらの記事を参照のこと】
■企業はメアドと金額を指定するだけ
PayPal 東京支店でカントリーマネージャを務める曽根 崇 氏(写真1)は、「これまでのペイパルを使った支払いの流れは、買い手から売り手だった。これに加えて、『売り手から買い手への支払い』を強化していく」と記者発表の口火を切った。
7月以降、ペイパルでは企業による個人ユーザーへの支払い機能として「ペイアウト」のサービスを提供する(写真2)。これを利用すると、個人ユーザーは1回当たり10万円までの支払いが受け取れるようになる。受け取った残高は、他のペイパルでの支払いに充てることができる。
実は、企業が個人に対して支払う機能はこれまでも提供されていた。しかし、登録要件が最もシンプルな「パーソナルアカウント」を保有する個人の場合、利用するためには銀行口座などの登録を行って本人確認を済ませ、「プレミアアカウント」に資格変更する必要があった。今回のサービス拡充では、本人確認を行っていない「パーソナルアカウント」ユーザーでも10万円までの上限範囲であれば企業からの支払いを受け取れるようになる(図表1)。
ペイアウト機能を利用したい企業は別途、ペイパルへの申し込みが必要になる。企業が支払いを行う際には、相手先の個人がペイパルに登録しているメールアドレスだけが必要で、金額を指示するだけで送金が可能になる。CSVファイルやAPI連携にも対応しているので、多数の宛先にも送金できる(写真3)。国内外ともリアルタイムで送金でき、22通貨に対応することもペイパルの強みを生かしたサービスといえる。
■ペイアウトの国内向け手数料は1件当たり最大120円
PayPal 東京支店の野田陽介 事業開発部長(写真4)は、「近年のシェアリングエコノミーや副業解禁、クラウドソーシングといった昨今のトレンドを見ると、支払いを受ける個人が増えている。『ペイアウト』でこのニーズに応えたい」とサービス強化の背景を説明する。
なお、ペイアウトの利用に当たり、送金を受け取る個人には手数料がかからない。送金する企業の側では、日本国内向けに送金する場合で、1件当たり支払額の2%、もしくは120円のどちらか安いほうの金額(=最大120円)が手数料として徴収される。海外向け送金の場合は、1件当たり支払額の2%、もしくは5,000円の安いほう(=最大5,000円)が手数料となる。
7月以降のペイアウト導入表明企業として、チケットの個人間売買を取り次ぐ事業を手掛けるチケット流通センター(写真5)のほか、商品モニターサイト「モニプラを運営するアライドアーキテクト、CAMPFIRE、GMOメディア(Point Town)、ピクシブ(BOOTH、PIXIV FANBOX)が名前を連ねている。
■ペイパルの請求情報をショートURLに QRコード化の事例も
記者説明会で3つ目の新機能として紹介されたのは「PayPal.me」。ペイパルの請求情報をコード化して短いURLリンクを生成するサービスで、EメールやSMSのほか、ソーシャルメディア(SNS)上で請求情報を通知できる(写真6)。
本サービスは今年4月から提供開始しており、すでにフリーランスのインスタグラマー(フォトグラファー)や、ペイパルユーザーグループの勉強会参加費などの受付に導入されているという。
「プログラミングスキルは不要、請求業務を効率化できるのが『PayPal.me』。中小企業や個人事業主の方に使いやすい仕組みを提供したい」とPayPal 東京支店 SMBセグメント統括 兼 ストラテジー ディレクターの白石 高志 氏(写真7)は話す。
先述の個人インスタグラマーの導入事例では、今後、PayPal.meのURLをQRコードに変換し、決済手段として利用することも予定しているとのこと。QRコードとの親和性が高いURL決済だけに、さまざまな利用バリエーションが広がりそうだ。