【レポート】第6回NFC Forumジャパンミーティングが開催、EMVCoが「トークナイゼーション」導入にかける期待とは?

 

 

NFC Forumは2015年1月23日、東京・港区芝のNEC本社地下ホールにて第6回目となるジャパンミーティングを開催した。約70名が参加し、非会員が参加可能なオープンセッションと、会員のみが参加可能なメンバーセッションの2部構成で行われた。キーノートスピーチにはEMVCoの理事会メンバー(Member of Executive Committee & Board of Managers)の田中 淳也氏が登壇し、「トークナイゼーション」などについて紹介。EMVCoでは、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、トークナイゼーションをはじめEMV規格以外の決済関連仕様の策定についても幅広く取り組んでいく方針だという。

 

●2014年はNFCモバイル普及の時代、2015年はNFCアプリ・サービス普及の時代に

冒頭に挨拶したNFC Forumチェアマンの田川 晃一氏は、主としてNFC Forumの最近の更新情報および2015年の活動計画について紹介した。

2014年はNFCモバイルデバイスの出荷が6億台を達成し、端末の増加が目立つ年であった。アメリカでは加盟店端末のEMV未対応が故に発生する、不正取引の責任がイシュアからアクワイアラへ移行する「ライアビリティシフト」が2015年10月から始まる。これに際して、加盟店端末のEMV対応を2020年までに100%とする動きが本格的に始まっている。その際、コスト面での追加投資が少ないことから、同時に非接触決済にも対応していくことが標榜されており、NFCモバイルペイメントのインフラ整備が進んでいくものと予想される。

昨年10月にローンチされた「Apple Pay」には、サービス開始後わずか72時間で100万人の登録があった。2014年初めにはGoogleが「HCE(Host Card Emulation)」を発表。従来のSIMベースのカードエミュレーションに対して、クラウド上などにセキュリティを置いた状態でのカードエミュレーションを決済に応用するサービスの商用化も進んでいる。この2つのサービスによりNFCモバイルペイメントの認知が広まりつつあるという。

観光庁では訪日外国人を2014年の1,300万人から2020年までに2,000万人とする目標を掲げており、多くのNFCモバイルを持つ外国人が来日する。なお、2014年1月に観光庁から公表された「訪日外国人消費動向調査」によると、2014年の訪日外国人旅行者による消費総額は2兆305億円と、過去最高額を更新している。このような背景もあり、NFC Forumでは2020年を見据えて、訪日外国人に向けたNFCモバイルペイメントを不自由なく利用可能なアプリの充実が必要不可欠だと感じている。2015年はNFCモバイルペイメントを利用しやすい環境の整備に向けた課題抽出やビジネスチャンスについて、真剣に考える過渡期であると受け止めており、本腰をいれて活動していく方針だという。

NFC Forumチェアマン 田川 晃一氏

NFC Forumチェアマンの 田川 晃一氏

 

 ●不正利用の攻撃対象が変化、対抗策にトークナイゼーションが利用される

キーノートスピーチに立ったEMVCo Member of Executive Committee & Board of Managersの田中 淳也氏は、「トークナイゼーション」の概要説明と、その背景について紹介した。

決済業界のトレンドは、昨今、カードと加盟店端末間での物理的な取引にとどまらず、EC決済や非対面であったり、オンラインとオフラインの融合したデジタルな取引へと移行している。NFCモバイルをカード代わり(カードエミュレーション)として決済する形態のApple Payや、電子的なお財布(デジタルウォレット)としてネット上で決済する形態、アプリ内で決済する方法など、さまざまな決済が生まれてきている。

そうしたなか、アメリカでは2013年に大手小売であるターゲット社でのカード番号流出などが契機となって、業界ではカード番号を持っていること自体がリスクと判断し、解決策を講じた。その結果生まれたのが「トークナイゼーション」だという。

トークナイゼーションは16桁のカード番号を疑似番号(以下、トークン)に変換するものである。元のカード番号を決済取引に用いることをせず、仮にトークンが盗まれた際にはトークンそのものを無効にすることで不正利用を防止する。また、発行されたトークンは元のカード番号に紐付いているものの、その利用範囲や用途が細かくコントロール可能なことも特徴だ。例えば、このトークンは特定のデバイスでしか利用できない設定としておけば、そのデバイス以外で利用された(決済された)場合は不正取引とみなすことができるほか、特定の加盟店での決済にしか利用できないトークンなども作成できる。

「カード番号情報を盗もうと試みる攻撃者に対し、デバイスや加盟店での利用をコントロールすることで、盗まれたカード番号が異なる場所で決済に利用されるリスクを抑えることが、トークナイゼーション導入の1つの狙いである」(EMVCo Member of Executive Committee & Board of Managers 田中 淳也 氏)

EMVCo Member of Executive Committee & Board of Managers 田中 淳也 氏

EMVCo Member of Executive Committee & Board of Managers の田中 淳也 氏

●Androidアプリコンテスト受賞者がGoogle本社、Evernote社を訪問

日経BP社は昨年、Android環境でのアプリケーション開発作品を競う「2014年アンドロイドアプリケーションコンテスト」を開催した。本コンテストで受賞したブリリアントサービスとドリームオンラインの各担当者が、受賞者特典旅行の体験報告を行った。

日経BP社では日本のアプリケーションを海外に発信することを目標として、コンテストなど業界を盛り上げる企画を実施している。コンテストの受賞企業には特典としてアメリカ・シリコンバレー行きのチケットを贈呈し、Google本社やEvernoteなどとの交流を提供するなど、貴重な体験を提供している。

ブリリアントサービス 品川開発部 シニアチーフの梶井 祐介氏が発表した受賞作品は「ikesu(イケス)」という、スマートフォン内の自分の水槽に好みの魚を飼うことができるアプリである。水槽に魚を取り込む方法としてNFCを採用している。特定の魚のデータが書き込まれたNFCタグにNFCスマートフォンをかざすことで水槽に魚を取り込むことができる。水族館とのコラボにより、実物の魚を見ながらikesuに魚を入れることのできる、子供心をくすぐるアプリだ。

ドリームオンライン 開発部の田澤 由樹氏が紹介した受賞作品は「スマートロックNFC」アプリ。あらかじめアプリにロックを解除するための鍵(NFC対応のカードなど)を登録しておき、スマートフォンのNFCリーダにそれらNFCの鍵をかざすことでロックを解除するものである。Suicaなどの交通系ICカードや、指輪、時計など、日頃身に付けておけるものを鍵として登録できるため、鍵の紛失の心配がなくなる。また、所有者に無断で鍵をかけたスマートフォンを操作すると、インカメラにより無断使用者の写真を密かに撮影しておく機能も利用できる。

 

●決済がおサイフケータイのすべてではない、おサイフケータイの可能性を模索

NTTドコモ・スマートライフ推進部 ビジネス基盤推進室 ビジネス戦略 NFC基盤 主査の大西 浩喜 氏は、技術の進歩を見据えたNTTドコモのあるべき姿を話した。

NTTドコモではおサイフケータイの将来像を模索している。先般ラスベガスで開催されたCESでは、ウェアラブルやIoTなどの最新技術が多数出展されたが、ウェアラブルやIoTではスマートフォンが中心となってサービスをコントロールする傾向が強く、NTTドコモはそこに目を向けているという。そうした中で、決済だけでなく、これからのライフスタイルにおいて身近なものとなる新しいデバイスのコントロール役としておサイフケータイを活用していく、さらには「コントロールする側はおサイフケータイに限られるわけではなく、ウェアラブルなどがコントロールの中心となることも想定し、新たな製品提供にも積極的に挑戦していきたい」(同・大西氏)というのが同社の目指す方向性だ。

NTTドコモの決済以外の分野における新たなサービスの一例として、「ドコモヘルスケア」がある。これは健康管理に着眼点をおいたサービスで、ブレスレット型の「ムーヴバンド(ウェアラブル端末)」を利用する。日々の生活の中で身につけているムーヴバンドをスマートフォンへかざすことによって、睡眠時間や消費カロリーが把握できるなどの健康管理が可能である。これにとどまらず「健康プラットフォーム」と呼ばれる、ユーザーから得られた健康データの蓄積や分析、予測を行い、最終的にはユーザーの健康を総合的にサポートする付加価値を提供している。そしてNTTドコモでは、今後はこのデータを提携関係のある事業者との間(BtoB)で共同利用するなどの取り組みを行っていくという。

株式会社NTTドコモ スマートライフ推進部 ビジネス基盤推進室           ビジネス戦略 NFC基盤 主査  大西 浩喜 氏

株式会社NTTドコモ スマートライフ推進部 ビジネス基盤推進室ビジネス戦略 NFC基盤 主査の大西 浩喜 氏

 

●あらゆるモノがインターネットにつながるIoT、NFCの普及にはマーケティングが必要

最後に、NFC Forumジャパンミーティングを運営する「NFC Forum Japan Task Force(JTF)」の事務局人事に関連し、事務局の千賀 靖子氏に代わり、今年1月から新たに山下 哲也氏(山下計画 代表取締役)が就任したことが紹介された。山下氏からはJTFが取り組んでいる「JTFマーケティングプログラム」の紹介が行われた。

昨今、注目の集まっているIoT(Internet Of Things)。これは、「モノのインターネット」を意味しており、プリンターやパソコンだけでなく、クルマや冷蔵庫、デジタルカメラといったあらゆるモノがインターネットにつながることを指す言葉である。一方で、機械とインターネットをつなぐひとつの方法として挙げられるのがNFCであり、ペアリングと呼ばれる、NFCモバイルをかざすことによってインターネットにつなげる機能が利用できる。

例えばNFCのペアリング機能を用いた1つの代表例として、NFCモバイルをかざすことで両者間をBluetoothでつなぎ音楽を転送できる「モバイルスピーカー」などがあるが、この方法は他の機器にも応用でき、実際にクルマなどへも応用が試みられている状況だという。このように、まさしくIoTを実現しているNFCだが、その認知度がまだまだ乏しいことが目下の課題となっているそうだ。こうした状況に対し、今回のJTFマーケティングプログラムを通じて、NFCそのものの認知度を上げていこうとする試みである。特に、既存の製品をインターネットにつなげる方法やアイデアを企業同士で練り上げることによって、新しいイノベーションを生み出すことを目的に活動していきたいという。

NFC Forum Japan Task Force事務局 山下 哲也氏

NFC Forum Japan Task Force事務局の山下 哲也氏

 

なお、NFC Forum Japan TFでは「第7回 ジャパン・ミーティング」を東京・市ヶ谷のDNP本社C&Iビルにて3月19日(木)に開催する予定とのこと。テーマは「IoT」とのことなので、ご関心のある方はぜひご参加を。

 

【関連リンク】

NFC Forum

 

[2015-03-4]

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ePayments News

日々、電子決済サービス関連各社のプレスリリース発表を泳ぎ回り、秀逸なニュースを集めて紹介する電子決済研究所のスタッフ。ほぼ人力のボット。

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