QRコードを用いたスマートフォン向け決済サービス、「Origami Pay(オリガミ・ペイ)」を提供するOrigamiは9月20日、東京港区の六本木ヒルズに関係者を招待し、「Origami Conference 2018」を開催した。当日発表になったOrigamiの戦略の各事項について、関係者の当日のコメントも交えて紹介する。
■銀行は15行、クレジットカードはVMに加えて、AJDDにも対応へ
Origami Payは、QRコード認証に紐付ける決済手段として、「銀行口座(引き落とし)」と「クレジットカード/デビットカード」の2種類を用意している。これを両手段ともに、対応する先を拡大すると発表した。
銀行口座は、カンファレンス当日の9月20日時点で4行(みずほ銀行、三井住友銀行、大垣共立銀行、青森銀行)が対応していたが、新たに11行との連携を順次開始し、計15行まで広げる計画を示した(写真1)。
新規11行の内訳は、9月27日までに連携を開始した静岡銀行、三重銀行、第三銀行の3行のほか、ゆうちょ銀行、イオン銀行、SBJ銀行、じぶん銀行、ジャパンネット銀行、紀陽銀行、北越銀行、みちのく銀行の8行とした。
またクレジットカード/デビットカードはこれまで、Visa、Mastercardブランドのカードにのみ対応していたが、今後はアメリカン・エキスプレス、ジェーシービー(JCB)、ダイナースクラブ、ディスカバーの4ブランドに順次連携していくという(写真2)。
■新規加盟店が続々導入予定、年度内に実稼働10万店舗目指す
Origami Payの新規加盟店として、ナショナルチェーンではウエルシア、吉野屋、バスキン・ロビンス(サーティワンアイスクリーム)、ブックオフ、ディスクユニオン、ビックカメラ/コジマ/ソフマップの名前が発表され、また直近の導入店舗として西武新宿ぺぺ/Brick St.などの事例が紹介された(写真3)。店舗ではないが、今後は公共料金の支払いにもOrigami Payを使えるようにしていくとのこと。
Origami Payは9月20日時点で、コンビニエンスストアのローソンをはじめ約2万店が対応しているが、導入加盟店を拡大していくことで、今年度末までに10万店舗への導入実稼働を目指している(写真4)。
■中小店舗の拡大視野に、協業パートナーと連携
加盟店の拡大に関してOrigamiは、「日本国内のキャッシュレス比率を現状の20%から80%へ上げていく(日本政府の掲げる目標数値)ためには、本当に小さなお店であってもOrigami Payを使ってもらえる必要がある」(Origami・事業開発ディレクターの伏見慎剛氏/写真5)と考え、協業パートナーとの関係構築を強化している。
全国に261ある信用金庫の中央組織、信金中央金庫(写真6)と業務提携を行い、全国へのOrigami Pay導入で連携するほか、店舗向けにQR決済の受け入れサービスを提供するリクルートライフスタイルの「AirPAY QR」とも連携する(写真7)。
■インバウンド/アウトバウンドの両面で銀聯とタッグ
Origamiは今年(2018年)からグローバル展開にも取り組んでいく。同社インターナショナル/法務 ディレクターのマックス・マッキー氏は「アジアで日本人が安心してOrigami Payを使える環境を作っていく」と延べ、中国の銀聯国際(UnionPay International)と提携し、銀聯の抱えるアジアなど世界24カ国、約750万の加盟店でOrigami Payを使えるようにしていくことを発表した。アウトバウンドでは銀聯国際の他にも、提携先を予定しているという。
また、銀聯国際とはインバウンド(訪日外国人旅行者)向けサービスでも連携し、Origami Payの加盟店で銀聯のQR決済が使えるようにすることも目指す。インバウンドでは他に、台湾の「JKOPAY(街口支付)」とも提携し、同様にOrigami Pay加盟店を開放していくという(写真8)。
■資金移動業に進出、資産運用や与信ビジネスも視野に
「『現金レス』とは決済のことだけではないと思っている。そこで、『お金、決済、商いの未来を創造する。』というミッション(写真9)を掲げた」(Origami 代表取締役社長の康井義貴氏)
これまでも、ECと実店舗決済という、それまでまったく異なると思われてきたフィールドにインターネット技術を持ち込むことで、新しいサービスを切り開いてきたOrigami。それを率いる康井社長(写真10)は、「ここに来て小売業のお客さまから、『もっとオムニ(チャネル)化していきたい』との声を頂いている」という。
こうしたニーズを肌で感じている康井社長は、「オフライン(実店舗)にもEコマースのリテーラーのサイトの中にもOrigamiボタンを組み込ませていただき、リアルとネットの履歴を共通化してもらう。ここを見える化していく」と思いをにじませた。
具体例として、Origami Payに続く、新しいサービスイメージも明かされた。
「Origamiクーポン」(写真11)は、店舗がQRコードを店頭や街中などに貼り出し、それをお客がOrigamiアプリで読み取ると電子クーポンが入手できる仕組み。すでに実際で提供されているものだ。
また「Origamiウォレット」(写真12)は、現状、「銀行口座(引き落とし)」と「クレジットカード/デビットカード」に限られているOrigami Payの決済手段に、資金移動業に対応する「Origami残高」、つまり個人間での送金も可能な仮想口座を追加する構想。2018年度内にサービスを開始したい意向だ。
「Origamiトレード」(写真13)は、前記のOrigamiウォレットで開設されたOrigami残高を使って、簡単に資産運用ができるサービスのイメージ。
そして、「Origamiクレジット」(写真14)では与信ビジネスに参入する。「従来は非インターネットで、プラスチックな与信だったが、インターネットの仕組みを使って、よりライトで効率的なサービスを専門家の皆さまと一緒に提供できたら面白い」(康井社長)
これらの新サービスを体系的に図示したのが写真15。これをOrigamiでは「未来の金融」と位置付けて、サービスの構築と提供を目指していくという。
■提携Payで「あるアプリの中に、ある日、Origamiボタンが現れる」
康井社長がOrigamiのサービス提供スタイルで特に強調したのは、「オープンなプラットフォームである」という点。「デイリーユースではBtoCのOrigami Payを中心に広げていくが、仕組みを皆さんがバラバラに持つのではなく、1つのオープンなプラットフォームとして提案させていただく」(康井社長)
これを具体化したのが、同日に発表された「提携Pay(Origami Partner Pay)」だ(写真16)。Origamiの決済機能が無償でSDKとして提供され、他社のスマホアプリにOrigami Payの機能を導入できる仕組みだ。すでにパートナー企業(写真17)との協業は始まっており、「あるアプリの中に、ある日、Origamiボタンが現れて、それがいろいろなお店で使えるようになる」(康井社長)
康井社長は「先輩の皆さまが築いてこられたクレジットカードの時代と同じように、今後おそらく○○Payは増えていくかもしれない。その時に、Origamiが開拓した加盟店や金融機関の皆さまを当社が囲い込んで、ぐるぐる回していこうなどとは思っていない」として、他のQRコード決済を提供する事業者との立ち位置の違いを強調した。
■クレジットカード会社大手が揃って出資、銀聯国際も
今後の戦略がこれでもか、と相次いで発表されたカンファレンス会場。これを現実のものとするための実行体制の拡充として発表されたのが、新たな資金調達の内容だ。
この日までに同社は、シリーズCラウンドとして新たに66.6億円を調達した。これまでの投資ラウンド累計では88億円となる。新たな調達先(66.6億円の投資元)は、SBIインベストメント、トヨタファイナンス、信金中央金庫、銀聯国際、クレディセゾン、日本ユニシス、ジェーシービー、大垣共立銀行、三井住友カード、DG Lab1号投資事業有限責任組合(DG Daiwa Venturesが運営する投資ファンド)の10社(写真18)。
これらの資金は、開発・ビジネス人材の強化と事業領域の拡大に充てられるが、あわせて拠点を現在の東京・大阪体制から、福岡、仙台、名古屋へ拡大、海外にもアメリカと香港に拠点を構えていくという。