「決済端末のなんかさ、決済端末のなんかね(前編)」〜今年は採れたて決済端末が大豊作に〜【リテールテックJAPAN 2026レポート】

2026年3月3日から6日までの4日間、東京・有明の東京ビッグサイトで開催された「リテールテックJAPAN 2026」。皆さんは足を運ばれただろうか。業界セキュリティ基準である「PCI PTS」のバージョン6、そして次期バージョン7への移行なども睨んで、今年は決済端末の新顔も多数登場していた。今年もあれこれ考えながら各社のブースで見聞きしてきた最新情報を、前後編でお届けする。

中国・Newland NPT製端末を追加、ケーブルレスのモバイル型も〜東芝テック

 東芝テックのブースでは、中国の決済端末メーカーであるNewland Payment Technology(以下、「Newland NPT」)製の決済端末「N750P」(写真1)と「N750」(写真2)を展示した。Newland NPT製のAndroidベース端末に、TDペイメント、DGフィナンシャルテクノロジーがアプリケーションを搭載した。据置型の「N750P」とモバイル型の「N750」の2機種を今年4月から発売開始する予定だ。

写真1 のぞき見防止フィルターや、コード決済に対応するカメラを内蔵する(据置型のN750P)

写真2 モバイル型のN750はケーブルレスでの運用が可能

 東芝テックでは共同利用端末のCCTでも製品シリーズを展開しているが、今回発売する新端末は、加盟店がPOSに接続して利用する「POS接続型」として販売する。同社ではこれまでCastles製の「VEGA」をPOS接続型として提供してきた。ブース説明員によると「かつてはCCTの提供が主流だったが、近年は買い切りのPOS接続型の導入が増えている」そうで、新たにモバイル型を含むNewland NPT端末をラインアップに加えることで、供給する決済端末のバリエーションを強化する意図が込められているようだ。

「UT-P11」で金額固定の決済待ち受けモードも〜TMN

 トランザクション・メディア・ネットワークス(以下、「TMN」)は据置型マルチ決済端末の最新機種である「UT-X11」(写真3、4)をはじめ、モバイル型の「UT-P11」などをずらりと展示していた(写真5)。今年の1月から発売開始した「UT-X11」は、前機種の「UT-X10」に並べて比較すると、筐体の角が取れて丸くなった印象。機能はそのままで、サイズもひと回りコンパクトになった。決済端末のセキュリティ基準であるPCI-PTSバージョン6に対応し、PCI-P2PEにも準拠を予定している。精悍さを増した「黒モデル」のラインアップも、設置する店舗のレジ周辺の雰囲気にあわせて選べるようになった点で嬉しいバージョンアップといえるだろう。

写真3 「UT-X11」(左)と旧モデル「UT-X10」(右)を並べたところ

写真4 「UT-X11」のブラックモデル。このシリーズは「日本製」の決済端末であることもアピールしていた

写真5 PINパッドの上に端末本体が載るユニーク筐体が特徴の「UT-X20」のほか、海外製のCastles、Newland NPTの決済端末なども並んだ。写真のちょうど中央には、正方形で超小型の決済端末の姿も見える

 モバイル型の「UT-P11」は、前モデルの「UT-P10」から引き続いて三井住友カードのstera端末としても導入されているが、今回は担当者から、現場からのリクエストに応えて現在準備中だというUT-P11の意外な運用バリエーションを教えてもらった。論より証拠。説明より前に動画でご覧いただくのがよいだろう。

(動画)トランザクション・メディア・ネットワークス製決済端末「UT-P11」での金額固定決済連続待ち受けデモンストレーション@リテールテックJAPAN 2026

 決済手段と、決済金額を一定に固定した状態で決済を待ち受ける運用方法で、動画の例では交通系ICの電子マネーを「1円」の決済金額で待ち受け、決済が終わるとレシートの発行も省略して、すぐさま次の1円決済処理が起動する。言われてみれば確かに、施設の入場券や価格均一でのグッズ販売などの場面で「同じ金額で決済を受け入れるニーズ」は大いにありそうだと膝を打った。ともすればこのせいで、「キャッシュレスより現金のほうが早い」などという不本意な状況が生まれているのも事実なので、この発想には拍手を送りたくなった。
 さて、広大なTMNブースにあって奥側の壁面に大々的に掲げられていた同社の「パーソナル金融マーケティングプラットフォーム(PFM)構想」(写真6)については、昨年に引き続き、同社の大高 敦社長から直々にご説明いただくことができた。現状、流通小売業などでは国際ブランド付きの提携クレジットカードを導入する先が多いが、「そのお店でしか使われないのに、必要のない国際ブランドが付帯することで手数料が高止まりしている。これがキャッシュレス比率が上がっていくほど深刻になる。ハウス決済に切り替えることで、提携カードの10分の1の手数料率も目指せる」(大高社長)

写真6 「パーソナル金融マーケティングプラットフォーム(PFM)構想」は、カメラのフレームに納まらないほどのスケールの大きさ

 ここで削減した決済手数料は、そのまま小売業の利益に充てられると大高社長は指摘する。しかも構想はここで終わらず、生活者の利便性向上や、流通小売業に商品を供給するメーカーのマーケティングにもつなげる。ハウス決済によって得られるID情報やPOSデータを同社が解析することで「IDの付いたPOS情報」(大高社長)に変換し、情報ハブを通じて生活者に還元するほか、商品のメーカーにも還元することでより高度な販売促進につなげてもらうのが狙いだ。「メーカーは年間15兆円規模の流通対策費を拠出しているが、消費行動の実態は非常に掴みにくい。すでに当社を経由する購買データは500万人規模に上っており、『Xinfony DataHub』を通じてメーカーの販促を支援していく」と大高社長。PFM構想は、2027年度中のサービスインを目指している。

タッチ決済したカード情報からサブスク契約に誘導〜Stripe

 Stripeといえばオンライン決済の印象が強いプロバイダーだが、リテールテックJAPANへの出展では2025年に発表した対面決済端末、「Stripe Terminal」を紹介していた。例えばクレジットカードでタッチ決済する場合に、決済処理の完了と同時に、かざしたカードの情報でオンラインのサブスク契約画面に誘導する仕組みが使えるという(写真7)
 オンラインとオフラインを統合した「ユニファイドコマース」を提唱している同社だが、その世界観が伝わりやすい展示内容に感じた。

写真7 Stripe Terminalを介した決済→サブスク登録のデモンストレーション

アミューズメント機器のキャッシュレス対応を支援〜ルミーズ、和晃

 ルミーズのブースでは、自動精算機や自動販売機向けの組込型マルチ決済端末「salo-02」と、カプセル販売機へのキャッシュレス決済導入サービスを紹介していた。カプセル販売機は、筐体上部に掲出された「NFCタグ」と「QRコード」を利用者がスマートフォンで読み取ることで決済画面へと遷移し、そのままApple PayかPayPayのオンライン決済を使って支払いが完了する仕組み(写真8)。決済結果がルミーズのセンターサーバーへ伝わると、カプセル販売機に購入権利情報が折り返し電送され、ガチャガチャが回せるようになる。

写真8 NFCタグかQRコードを読み取り、誘導されたURLからスマホ内部で決済する

 salo-02の簡易版のほうも、アミューズメントのクレーンゲームに搭載された事例をリテールテックJAPANの会場で見つけることができた。ルミーズと同じく長野県に拠を構える和晃のブースで稼働していた。こちらは1台で「カード決済」、「電子マネー決済」、「コード決済」に対応しており、カード決済は当然のようにタッチ決済が利用できた(写真9)

写真9 街中でよく見かけるクレーンゲームもキャッシュレスで

 ちなみにこちらの和晃では、QRコード決済を公共交通機関の運賃収受に利用できる「TicketQR」事業(写真10)のほか、同じくルミーズとも協業してタッチ決済乗車に対応するバスの乗降システムを全国に提供中なのだそうだ(写真11)。これはいいものを見せてもらった。

写真10 和晃の「TicketQR」スマホだけでなく紙のQRコードにも対応

写真11 後ろの地図に見えるアイコンは、実際に稼働中のバス情報をリアルタイムに表示していた

日本製の「AQUOS」端末にスタンドアロン型を追加〜シャープ

 シャープのブースでは、2年前の「リテールテックJAPAN 2024」で初披露された、AQUOS技術×日本国内製が売りの決済端末が、装いも新たに展開のバリエーションを広げる発表があった。前機種の「UA-P10NA」(という型番であることを今回初めて知った)は、決済端末の本体(いわゆる親機)に小型の端末が接続されて稼働する方式だったが(写真12)、新たに本体部分の機能を小型の筐体内に取り込み単体で動作するようにした。これを「PINPAD型新端末」(UA-P20NA)と呼ぶ(写真13)

写真12 第2弾となる新決済端末も、シャープの「POSソリューション」の一翼を担う

写真13 新機種の「UA-P20NA」。QRコードリーダーの読み取り範囲(距離)が長いこともアピールしていた

 従来機種に比べて、親機の機能を移植したために大型化は避けられなかった模様だが、設置面積(フットプリント)はまったく変わらず(幅117ミリ×奥行き82ミリ)、高さがほんの少し上がった程度に納まっていることに気がつくと驚愕する(P10NAは49ミリ、P20NAは54ミリ)。カード決済をはじめ、電子マネー決済、コード決済など対応する決済サービスは従来位通りを継承。主にセルフレジ向けの導入が想定されているそうで、POSとの接続形態は「外回り」になる(写真14)。今年7月の商用リリースが予定されている。

写真14 セルフレジを想定したタブレット画面の脇にちょこんと収まるサイズ感

米ファイサーブ端末や、最短4日で使える超小型決済端末も〜三井住友カード

 クレジットカード会社では唯一、リテールテックJAPANの常連組となった三井住友カードは、今年もキーカラーであるグリーンと黒を基調としたブースでさまざまなバリエーションの決済端末や、それらを通じて提供する各種の情報サービスを展示していた。
 一番の目玉は、今年1月に業務提携を結んだ米・ファイサーブ(Fiserv, Inc.)と共同で展開する決済端末ソリューションの「Clover(クローバー)」だろう(写真15)。単純な決済処理専用ではなく、1台の端末と1つのIDで、在庫管理や顧客管理、財務や従業員管理までのさざまな店舗業務が処理できる機能をAndroidベースのアプリで追加していけるのが最大の特長になっている。

写真15 「Clover(クローバー)」は業種や導入先のニーズにあわせた端末バリエーションの豊富さも特長

 主に中小企業に向けた展開を目指しており、2026年秋のリリースに向けて目下、業務支援アプリの日本語化(写真16)をはじめサービス開始の準備を進めている。ブースの説明員によると、「日本ならではの機能」への対応が肝心でまさに議論中だという。わかりやすいところで言えば「分割払い」への対応も日本らしい機能追加だが、聞いて意外だったのは「食べ放題や飲み放題への対応が海外にはない」(説明員)こと。「Cloverでは飲食店をターゲットとしているので、食べ放題や飲み放題の対応は欠かせない」のだそうだ。見かけがいかにもスタイリッシュで、アメリカから海を渡ってきた端末ということもあり、筆者はちょっと距離感を感じていたが、なかなかどうして応援したくなる苦労話が聞けてよかった。

写真16 独自のアプリマーケットには英語版ながらすでに400以上の業務支援アプリが掲載されている

 そして、三井住友カードブースのもう1つの目玉が「stera terminal light(ステラ・ターミナル・ライト)」である。ブースの皆さんは「ライト」の愛称で呼んでいたが、とにかく端末筐体の小ささが際立っている(写真17)。片手で収まるのはもちろん、重量は190グラムしかない。それでいて、コード決済を読み込む時に必要なカメラは、ディスプレイ画面のある正面と、なんと端末上部にもう1台が! 計2台のカメラを搭載する。

写真17 stera terminal light(ステラ・ターミナル・ライト)」は片手に収まるミニミニサイズ。にも関わらず、単体でしっかりと決済端末の役割を果たす

 ハードウェアの魅力から目が離せなくなりがちな筆者だが、実は「ライト」の売りはそれらコンパクトで実用的な端末であること以上に、「従来のステラはお申し込みから設置までにかなりの時間を要していたが、ライトは最短4営業日で利用可能になる」(三井住友カードのブース説明員)ことだという。お店がキャッシュレスを必要とする時は、いつもいきなりやってくる。とすれば、現場にとっては救いになるスピード対応といえる。
 ちなみに「ライト」は、単体で決済端末として機能することも魅力の1つだ。このサイズのいわゆるmPOS端末のカテゴリでは、従来はタブレットと無線接続して使うものが主流だったが、この「ライト」は単体で決済処理が完結できる。
 ところでこの「ライト」。隅々までずっと眺めていたら、だんだんと初めて見た気がしなくなってきた。あれ? もしかしてこれって・・・。(後編に続く)

 

【記事バックナンバー】やっぱり決済端末が好き in 『リテールテックJAPAN』
(別にウインドウが開きます)

https://epayments.jp/welovepaymentterminals

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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