この記事の主張(要約):
日本国内でもVisa、Mastercard、JCBなど国際決済ブランドロゴの付いたデビットカードやプリペイドカードが急増中であるにも関わらず、それらを支払いに使おうとする際、現場の混乱を未然に防ごうと、店員には「クレジットカード・1回払いで」などと申告することがカード発行会社によって推奨される風潮がある。
この記事は、健全なキャッシュレス環境の実現を目的として、事実と異なるこの申告方法を取りやめ、消費者は店員に対して「カード払いで」、もしくは「○○(国際決済ブランドの名称)で」と申告する方式への移行を提言するものである。
■だって、「クレジットカード」ではないのだから
2018年にもなって、まだ「『Visaカード=クレジットカード』ではありませんよ。」などとお話しするとキョトンとされる方の多いこと。確かに、カード払いといえばクレジットカードしかなかった時代が日本では長く続いてきたことは理解できる。しかし、だからといってクレジットカードでないものを指して「お店ではクレジットカードと言いましょう」と誤った常識を今から流布する必要はないのではないか。
折しも世の中は、「キャッシュレス」にまさしく真剣に取り組もうとしているところ。大人も子どもも本当のことを理解した上で、カードを正しく使い分けるスキルが必要とされているはずだ。そもそも、人間、嘘は良くないと習ったのではなかったか。
お店側に事情があるのもわかる。現在ほど現金以外の決済手段が多様化した時代はかつてなかっただろう。カードだけでなくスマートフォンを差し出されたり、そのそれぞれで押すべきレジのボタンが違ったり。同じカード1枚を取ってみても、差し込んだり、こすったり、かざしたり、暗証番号を入力してもらったり、サイン(署名)を求めたり、何もしてもらわなかったり(!)と、現場が追いついていかない事情もあるのだろう。
そんな時に「クレジット」と書かれたボタンがレジ画面にあれば、店員の迷いは軽減できるのかもしれない。事実、磁気ストライプ、接触IC、非接触ICの3つの形態に対応している店舗のPOSレジ画面には「クレジット」のボタンが存在し、これを一度押すだけで、先に挙げた3方式のカード処理が同時にONとなる仕組みになっている(写真)。
■言い分はわかった。ならば代案を出せ
それでも、性格の異なるデビットカードやプリペイドカードを「クレジットカードで」と偽って申告することの理由にはならないのではないか。店員の操作手順の問題を解消すべきは本来、運用ではなくて、技術であるはず。ボタンを「クレジット」に集約したことは、アプローチとしては間違っていないし、そうあるべきだ。しかし、ここに記載すべき単語は「クレジット」ではない。そういう意味では、非常に惜しいところまで来ているともいえる。
と、言いっぱなしは良くないので、筆者も解消案を考えてみました(真剣)。国際決済ブランドが搭載されているクレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、さらにはスマートフォン上のアプリケーションで支払いたい場合、以下のように告げることにしてはどうだろうか。
●過渡期の解決方法:(汎用的な動詞で申告)
『カード払いで』
とりあえず「クレジットカード」から「クレジット」を削除して、やや曖昧な表現ではあるが嘘ではない「カード払い」と変更してみた。この場合、レジのボタンには「カード払い」と記載すればバッチリだろう。
●本来、目指すべき解決方法:(決済ブランド名で申告)
『Visaで』
『Mastercardで』
『JCBで』
『Amexで』
『Diners Clubで』
『ユニオンペイ(銀聯)で』
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そして、これこそが本来、目指すべき理想的な申告方法だろう。しかし、いきなりこの言い方に消費者を啓蒙、誘導するのはなかなかハードルが高いと思われる。そのため、過渡期対応である「カード払いで」の申告期間を経て、消費者の認知が浸透した段階でゆるやかにこちらへ移行していくのが良いだろう。この場合、レジの1つのボタン上に各決済ブランドのロゴマークや名称を記載しておけば良い。
■ちなみに電子マネーではもう出来ている。
ちなみに電子マネーや国内向けデビットカード、プリペイドカードなどの場合は、以下のように申告するのが常識になってきている。たまに「電子マネーで」などと申告する強者がいても、「はい。どちらの電子マネーですか?」と店員さんの応酬に遭うので、問題にはならない。カード決済がこれから目指すべきは、むしろ電子マネーなどで実現しているこちらの世界観なのではないだろうか。
『Suica(交通系)で』
『iDで』
『QUICPayで』
『nanacoで』
『WAONで』
『J-Debitで』
『JCBプレモで』
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上記で挙げた筆者の代案だが、もちろん店舗の既設端末によっては「デビット決済」ボタンがすなわち「J-Debit」の処理に入るボタンになっていたり、デビットカードの処理をするためには「クレジット決済」ボタンを押さねばならない端末など、整合の取れない状況も残っているだろう。しかし、これらは徐々に解消されていくべきだし、繰り返すが、それは決して現場の「運用」ではなく、端末の「技術」によって解決されるべき問題だ。POSレジ周りのシステム事業者や決済端末メーカーには、ぜひとも健全なキャッシュレス環境が日本に広がっていけるように、ここでもうひと踏ん張りしていただきたいと切に願う。
※本記事に記載したブランドは一例です。すべてを網羅するものではありません。