イオンとビザ・ワールドワイド・ジャパン(以下、Visa)は4月16日、都内で共同記者発表会(写真①)を開催し、2019年3月から2020年3月までの1年間で、イオングループ各店の約10万台のレジにVisaの「タッチ決済」を順次導入すると発表した。すでに足元のキャッシュレス決済比率が7割を超えているイオンリテールの店舗だが、接触IC・非接触IC両対応のEMV決済をイオングループとして率先して導入し、2020年には政府目標(※)も霞んで見える「キャッシュレス80%」を目指すという。
※日本政府のキャッシュレス決済比率目標は2027年に40%、さらに経済産業省が2025年に40%の2年前倒しを発表した。
■イオンVisaカードに順次Visaの「タッチ決済」搭載
4月16日付け発表の内容は以下より確認できる。
イオングループ、Visaのタッチ決済を導入~2020年に向け、イオングループ約10万台のレジに導入、日本のキャッシュレス化を推進~
http://www.aeon.info/news/2018_1/pdf/180416R_2.pdf
発表の要点は以下の通り。
- イオンは2019年3月〜2020年3月までの1年間で、イオングループ各店の約10万台のレジをVisaの「タッチ決済」に順次対応させる(読み取り端末は導入済みだが、改修を行っていく)。
- 「タッチ決済」とは、国際標準規格(ISO/IEC 14443 TyepA/B)に準拠したVisaの非接触IC決済で、Visaが「Visa payWave」から名称変更したもの。
- 本年(2018年)9月以降、新規に発行するVisaマーク付きのイオンカードには「タッチ決済」用ICを搭載する(一部、交通系提携カードを除く)。
- 既存のVisaマーク付きイオンカード(発表日時点で約2,800万枚)は、有効期限更新時に順次「タッチ決済」用IC搭載型に切り替えていく。
- 2019年の春以降は、希望者に対して既存のVisaマーク付きイオンカードの切り替えにも対応する。
- 「タッチ決済」で決済金額が3万円以上の場合、PIN(暗証番号)を入力する必要がある。
- プラスチックカードだけでなく、「タッチ決済」に対応するスマートフォン(スマホ)でも同様に利用が可能。
- Visa以外の国際決済ブランドが提供する非接触IC決済についても、決済端末としては対応可能なものなので、契約に関して協議していく。
- 「タッチ決済」などに対応するスマホアプリについてもイオンとして開発を進めており、今年度中には提供できるようにしたい。
写真④ Visaブランドのイオンカードに「タッチ決済」機能を搭載する(WAONも併載)
■「接触ICと非接触ICの同時導入にメリットがある」
ここからは記者発表会で気になったコメントを抜粋して紹介していこう。
「ではどこにキャッシュレス決済の余地があるのか。日本では単価5,000円以下の取引では実に91%が現金で処理されている。この市場が約100兆円と言われており、ここをタッチ決済で狙っていく」(ビザ・ワールドワイド・ジャパン 代表取締役社長 安渕 聖司 氏)
日本政府が掲げるキャッシュレス決済比率の目標、「2017年20%→2027年40%」を後押ししたいVisaだが、具体的に20%の伸びしろをどこに置くかについてこう語った。(写真⑤)
「EMV対応(接触ICカード)への対応とセットで考えており、非接触IC単体では投資額を出していない。お客さまにタッチ決済を使ってもらえれば十分に回収可能だ」(イオン 執行役 総合金融事業担当 鈴木 正規 氏)
タッチ決済対応にかかる投資金額に関する記者からの質問への回答。ICカード化対応ではこれまで接触ICだけを対象とする風潮が強かったが、「接触ICと非接触ICを同時導入してこそメリットが大きい」(写真⑦)との見解を流通業界大手が表明したことは極めて画期的。
「対応する10万台はイオングループのレジのほぼ全部だ。イオンリテール(の店舗)ではすでに全体の70%がキャッシュレスになっており、4割がイオンカードで、3割がWAONによるもの。そのため、イオン『グループ』としては2020年までにキャッシュレス決済率80%を目指すが、イオンリテールとしては当然、その上にいく」(イオン 執行役 GMS事業担当 岡崎 双一 氏)
すでに70%のキャッシュレスを実現しているというイオンリテール店舗の数字は驚異的。Visaのタッチ決済導入は、WAONを脅かすということでもなく、イオンカードの利用分の一部を置き換えていき、加えて現金ユーザーの取り込みを狙っていく位置付けを担うと思われる。