「チケットレストラン」が提唱する『第3の賃上げアクション』2025年版が開始、アライアンス拡大で企業の福利厚生を後押し

企業が自社の従業員に対して、食事の福利厚生用途に提供可能な「チケットレストラン」を展開するエデンレッドジャパンと、クラウド会計をはじめ「freee」の名称を冠した各種の統合型経営プラットフォームを開発・提供するフリー、家事代行サービスを提供するベアーズの3社は1月29日、2024年2月に発表した「第3の賃上げアクション」にて2025年版のプロジェクトを開始したと発表した(写真1)。企業に福利厚生の活用を促すことで、従業員の手取り額(可処分所得)アップと、企業の税負担軽減のいいとこ取りを提案する。

写真1 写真左から、<導入企業>ダイナミックマッププラットフォーム 人事部長 兼 広報課長 樋口 慶氏、<導入企業>TECO Design 代表取締役 杉野 愼氏、フリー エンパワーメントプロダクト事業部 福利厚生チーム 事業責任者 相澤 茂氏、エデンレッドジャパン 代表取締役社長 天野 総太郎氏、ベアーズ 社長室 Well-being推進チーム 赤荻 未加氏、<導入企業>レバレジーズ 総務部 佐々木 杏優氏

福利厚生費の「食事補助」活用により、手取りアップを実感

 「第3の賃上げアクション」とは、企業から従業員に対する「定期昇給」を第1の賃上げ、「ベースアップ(全従業員一律での給与引き上げ)」を第2の賃上げと定義した上で、福利厚生によって賃上げと同等、もしくはそれ以上の効果を得ようとする施策群のことを指す(画面1)

画面1

 同アクションの発起人であるエデンレッドジャパンは、大手コンビニエンスストアや全国チェーンのレストランをはじめとして「チケットレストラン」の加盟店を日本全国で25万店以上、展開している(画面2)。企業がこの仕組みを導入すると、「iDプリペイド」の非接触ICカードが発行され、従業員はこれを使ってあらかじめチャージされた残高の範囲でランチ代の支払いなどに使用することができる(画面3)

画面2

画面3

 肝心な点は、仕組みが単純な前払い式のプリペイドカードではなく、企業から従業員への福利厚生に応用することで企業側にも従業員側にもメリットが生じること。
 企業が計上する福利厚生費(社会保険など法定のものを除く)には、企業の経費負担にできるか否かを巡って細かなルールが定められている。「食事補助」もその1つで、従業員が同額以上の金額を負担すれば、企業はひと月に最大3,500円までの支給を全額経費にできる。
 これを利用すると、例えば「チケットレストラン」に1カ月当たり7,000円をチャージし、企業と従業員で3,500円ずつ負担を折半する。そうすることで、従業員は食事や飲食物を「半額」の感覚で利用でき、また企業からの食事補助分も所得とならないため、賃金で支給される場合に比べて手取りが減らないメリットが享受できる(画面4)

画面4

 なお、食事補助の非課税枠は現行3,500円までと定められているが、エデンレッドジャパンでは昨年、6,000円への引き上げを求めて自民党へ要望を提出するなどの活動も行っている。
「(食事補助の非課税枠について)フランスでは20%、30%と拡大していっている中で、日本では3,500円にとどまっているのが現状。そこで昨年、賛同する534社とともに自民党へ要望を提出した」(エデンレッドジャパン・代表取締役社長の天野 総太郎氏/写真2

写真2 エデンレッドジャパン 代表取締役社長 天野 総太郎氏

 同社のビジネスモデルとしては、導入企業からのシステム利用料に加えて、「チケットレストラン」が利用された際に加盟店から手数料を徴収することで賄う構造となっている。
 チケットレストランの新規契約数は、昨年2月に発表した「第3の賃上げアクション」以降の伸びが著しく、2021年の同期に比べると約7.3倍まで伸長したという。今年、2025年の「第3の賃上げアクション」新規施策では先着100社の限定で、2025年3月末まで2カ月間、同社のシステム利用料を無料とするキャンペーンを同日から開始している。

freeeは割引クーポン配信開始、家事代行サービスを企業の福利厚生に

 同日に都内で開催された発表会には、エデンレッドジャパンに加えて、「第3の賃上げアクション2025」に参画するフリーと、ベアーズの担当者も登壇した。昨年2月のプロジェクト発足時に20社だった賛同企業は、2025年1月末時点で160社まで拡大した。
 フリーは提供する「freee福利厚生」の提供メニューを通じて、「第3の賃上げアクション」を支援する。具体的には、従業員の出費で大きな割合を占める住居費を削減できる「社宅借り上げサービス」が挙げられる。
 これは、従業員が居住する賃貸物件や将来居住予定の物件を会社名義に切り替えることで、住宅を従業員に現物支給する仕組みへと変えるもの。従業員は手取り額(可処分所得)が増える一方で、企業側は社会保険料負担額が減るため、両者に経済的なメリットがある制度だという。
 また、フリーは2024年10月から新たに「ベネフィットサービス」の提供を開始した。企業が導入すると、従業員は2カ月に一度、500円分の割引ギフトが受け取れるほか、全国7万店以上で使える割引クーポンが利用できるようになる(画面5)

画面5

「映画館やレストランなどで家計の出費を削減することにより、可処分所得が増やせる。また、freeeの人事労務サービスと連携すれば、従業員の性別や年齢、家族構成、居住地などに合わせてカスタマイズした支援が可能になる」(フリー・エンパワーメントプロダクト事業部 福利厚生チーム 事業責任者の相澤 茂氏/写真3
 また、1月29日からはfreee福利厚生を利用する企業がベネフィットサービスのサイトに自社のサービスを掲載できる仕組みも提供開を開始し、地域での認知拡大や集客に活用してもらうことに期待しているという。

写真3 フリー エンパワーメントプロダクト事業部 福利厚生チーム 事業責任者 相澤 茂氏

 ベアーズでは、提供する家事代行サービスを通じて、企業の福利厚生制度の拡充を支援したい考えで、これを「暮らしの福利厚生の導入」と呼んでいる(画面6)
 掃除、洗濯、買い物、料理といった、どの家庭でも日常的に必要になる家事全般を、約6万5,000人(2024年9月末時点)の登録スタッフを通じて提供する。日本の共働き世帯は2023年に1,200万世帯と言われ、1980年の600万世帯から倍増している。

画面6

「共働きが全体の7割を超える中で、夫も妻もフルタイムとなった時に、家事に関する時間の約8割を妻が担っている。女性従業員の家庭と仕事の両立がしにくい実態がある。また仕事をしながら家族の介護を担うビジネスケアラーも、2030年には300万人を突破すると予想されている。最大の問題は時間の確保で、睡眠時間が削られたり、疲労も蓄積しいていく。暮らしの福利厚生を充実させることで、従業員の幸福度合い(Well-being)も上がっていく」(ベアーズ・社長室 Well-being推進チームの赤荻 未加氏/写真4
 企業はベアーズと契約することで、従業員に対して補助金を出すことができるようになり(画面7)、企業イメージの向上にもつながる可能性がある。同社では2006年から企業の福利厚生制度に対応開始しており、導入企業数は850社以上を数えている。

写真4 ベアーズ 社長室 Well-being推進チーム 赤荻 未加氏

画面7

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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