例えば「『前払い式』の支払い」と表現されるプリペイドカード。ひとたびカード残高として入金(チャージ)をしてしまうと、再び現金に戻そうとしても換金できないようになっている(乗車券などの除外品目や例外ケースを除く)。これはプリペイドカードが資金決済法の定める「前払式支払手段」に位置付けられ、法律で換金が認められていないためだ。
しかし最近では、いったんカード残高として入金された金銭価値を再び銀行の預金口座へ出金できるプリペイドカードが登場している。これらのプリペイドカードも同じ資金決済法が適用されるが、その位置づけは「前払式支払手段」ではなく、あらかじめ「資金移動サービス」として登録された事業者により発行されることで、法制度上、換金が可能な仕組みが実現されている。
と、ここまでは業界人にとっては当たり前の知識かもしれない。でも、「前払式支払手段」のプリペイドカードと、「資金移動」のプリペイドカードの価値が、お互いに交換可能な仕組みだった場合、換金の可/不可の境い目はどこに置かれるのか? と聞かれれば悶々としてしまう方もおられるのではないか。
場面変わって話題沸騰中の「仮想通貨」。今年4月からは資金決済法の規制対象に組み込まれ、重要な役割と責任を担う取引所の事業者登録が始まっている。ベンチャーやノンバンク事業者によるフィンテック革命の気運が高まる一方で、迎え撃つ金融機関、とりわけメガバンクからは自ブランドを冠した仮想通貨、「〇〇コイン」や「〇〇マネー」の実用化に向けた発表が相次ぐ。
では銀行が発行する仮想通貨は、資金決済法の規制対象なのか? そうではないのか?
何が起こるかわからないフィンテック時代だからこそ、次々と湧いてくるそんな素朴な疑問に、専門家の余裕と落ち着きをもって答えてくれるのが本書。じっくりと腰を据えて手に取りたい一書だ。
《発行概要》
書 名:FinTech法務ガイド
発 行:商事法務
編 著:片岡義広・森下国彦 編
河合 健・関端広輝・高松志直・田中貴一 編集担当
体 裁:A5判並製/408ページ
ISBN :978-4-7857-2516-7
定 価:4,104円(本体3,800円+税)
発売日:2017/03
内容:金融取引の第一線で日々様々な案件に取り組んでいる弁護士が、その知識と経験を持ちよりFinTechの多岐にわたる側面に関わる各分野の法令および関連する実務について解説。
◆出版社へのリンク(目次あり)
https://www.shojihomu.co.jp/publication?publicationId=3084577
[2017-05-26]