法人向けプリカ+モバイルSuicaで従業員の経費精算業務をゼロに。NTTコムがアフターコロナで目指す「B2Eのデジタル化」

NTTコミュニケーションズは9月30日、オンラインで記者説明会を開催し、従業員が法人用プリペイドカードとモバイルSuicaを組み合わせて利用することで経費精算や交通費精算を自動化できるサービス「SmartGo Staple」を同日より開始すると発表した。業務用に登録したモバイルSuicaから移動履歴と運賃の情報を自動で取り込むため、事後の精算事務が大幅に簡略化される。

モバイルSuicaと完全連動、交通費は申請すら不要に

「B2Cではキャッシュレスの普及などデジタルで便利な世界が広がりつつあるのに、B2E(企業対従業員)、つまり人間が会社に入った途端、アナログに逆行した不便に直面している。付加価値の高い従業員向けサービスを展開することで、B2Eトランザクションのデジタル化と働き方改革を促進していきたい」(NTTコミュニケーションズ・プラットフォームサービス本部 アプリケーションサービス部 第二サービスクリエーション部門 部門長の中野 誠氏/写真1

写真1 NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 アプリケーションサービス部 第二サービスクリエーション部門 部門長の中野 誠氏

 これを具体化する「Smart Workstyle」の提供メニューとして、NTTコミュニケーションズが9月30日に発表したのは「SmartGo Staple(スマートゴー・ステイプル)」。導入企業の従業員は、発行された法人用プリペイドカード(Visaプリペイド)を用いて日常の経費支出を行い、支払い後には連動するスマートフォン向け経費精算アプリ(iPhone、Androidに両対応)の機能を使って領収書を撮影、アップロードするだけで経費精算が完了する(写真2)

写真2 サービスの概要(交通費以外の経費)。クラウドキャストが開発・提供する経費精算サービス「Staple(ステイプル)」および法人プリペイドカード「Staple(ステイプル)カード」と連携して開発された。2020年10月1日から施行される改正電子帳簿保存法により、キャッシュレス決済では紙の領収書添付が不要になることも追い風になるという

 さらに交通費の精算では、JR東日本との契約により「モバイルSuica」の移動履歴と運賃の情報を自動で取り込む機能を搭載(従業員の同意の上、業務用のモバイルSuicaをあらかじめ登録しておくことが必要)。システム上のAIが交通費以外の支払いなどを自動で検知・判別するため、従業員は経費精算のための特別な作業が一切なくなるという(写真3)。モバイルSuicaの残高は、先述の法人用プリペイドカードを使ってチャージする。

写真3 サービスの概要(交通費)

 従来、法人の経費精算事務を軽減するサービスでは、法人用のクレジットカードを利用するものが多かったが、これでは「全従業員に渡すことができない。アフターコロナの時代には全従業員にカードを持っていただく必要がある」(NTTコミュニケーションズ・プラットフォームサービス本部 アプリケーションサービス部 スマートワークスタイル推進室 室長の川田 英司氏/写真4)との課題意識があったという。そこで同社では、与信が不要な法人用プリペイドカードを採用することで、正社員などの雇用形態に関わらず従業員への配布をしやすくした。管理者が必要な分だけ各カードに金額をリアルタイムでチャージできるため、使い過ぎや不正利用の防止が期待できるほか、カードの紛失時には管理者がカードを即時ロックできる特長も持つ。

写真4 NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 アプリケーションサービス部 スマートワークスタイル推進室 室長の川田 英司氏

「交通費の支給では、出勤日数が減ることで従来のような通勤定期代から実費払いへと移行する企業が増えている。従業員が発注した備品も、会社ではなく従業員の自宅に届くケースが多くなる。(SmartGo Stapleを使えば)従業員の立替は要らなくなるし、経費精算業務もなくなる。精算の内容を受け取ってチェックし、振込などを行う経理・財務部門の業務も減る。これまでコア業務を奪っていた経費精算の業務をなくすことができる」(川田氏)
 法人用プリペイドカードとスマホ向け経費精算アプリ、そしてモバイルSuicaの組み合わせで提供されるSmartGo Stapleの月額利用料金は、1IDあたり1,000円(税抜)。カード発行・発送には別途手数料がかかる。NTTコミュニケーションズでは、他のサービスと合わせた「Smart Workstyle」全体の事業規模として、5年後に100億円以上の売上を見込んでいる。

手をかざして入退場できるスマホ社員証も提供

 同日に紹介された「Smart Workstyle」のもう1つのサービスが、デジタル社員証の「Smart Me(スマートミー)」。従来、カード形状で運用されることが多かった社員証をスマホアプリ化(iPhone、Androidに両対応)することで、発行コストや紛失リスクなどカード携行時に生じていた不便の解消と、来訪者カードとしての利用や複数施設への入退館などの付加機能追加を狙う(写真5)

写真5 Smart Meの現在の機能

 面白いのはゲート通過時の利用方法。スマホのBLE(Bluetooth Low Energy)通信を利用しつつ、スマホ、もしくは利用者が手をかざすだけでゲートが通過できる。現在のSmart Meではゲート側に三菱電機製のリーダを採用しているが、この仕組みではゲートに手をかざすことで赤外線が遮られ、それをトリガーにしてスマホとの間でのBLE通信が起動するようになっているという。
 同社では今後、この手をかざす方式に限らず、顔認証などさまさまな認証技術と組み合わせて利用できるようにしていきたい意向。また、BLEによる社員の位置情報確認機能や、オンライン名刺(vCard形式)の出力機能についても今後、追加していく予定としている(写真6)
 Smart Meの月額利用料金は初期費用が1IDあたり1,000円(税抜)で、月額利用料は60円(税抜)。リーダー本体の費用は含まれていない。

写真6 Smart Meの今後のロードマップ

 

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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