ヤフーのYからZへ。頭文字であるアルファベットの配列を1つ進めて、この10月に誕生した「Zホールディングス」と、その100%子会社である金融中間持株会社「Zフィナンシャル」。金融事業の強化を掲げるZホールディングスが、SBIホールディングスとの業務提携を発表した。IT企業、通信業など、異業種からの参入で競争が激化する金融市場で、両社ともに「親戚筋」と認め合う協調の間柄は、果たしてどこまで進むだろうか。
10月からZフィナンシャルが営業開始、傘下にジャパンネット銀行
SBIホールディングスとZホールディングス(ヤフーを会社分割して10月1日に社名変更した持株会社)は10月10日、金融サービス事業の展開において、傘下のグループ会社の間で業務提携すると発表した。
記者会見でZホールディングス・代表取締役社長 CEOの川邊 健太郎氏(写真1)は、提携の狙いについて「金融は(同社がこれまで注力してきた)コマースと決済の上にあるものであり、不可分と思って取り組んできた。Z(ホールディングス)の下にあるさまざまなブランドのユーザーに対して、広く金融サービスを提供していけるはず(写真2)。その際に、SBIさんは最も有力なパートナーだと考えている」と金融事業強化への意欲を見せた。
なお、Zホールディングスでは10月1日より100%子会社の「Zフィナンシャル株式会社」が金融中間持株会社として営業を開始。同社の傘下には、ジャパンネット銀行のほか、投資助言業のMagne-Max Capital Management、データ分析事業などを手掛けるブレインセルがぶら下がる(写真3)。
ヤフーファイナンスとSBI証券のシングルサインオン目指す
同日に発表された具体的な提携内容は、証券、FX、銀行の3つの事業について。証券では、482万件の口座数(2019年9月末時点)と委託個人売買代金のシェアでは35.3%(2020年3月期第1四半期)を持つSBI証券(写真4)のサービスと、1,500万の月間ユーザー数を誇るヤフーファイナンスを連携させる。ヤフーファイナンスはこれまで情報提供が中心だったが、今後はSBIとの間で証券口座の開設や売買取引、ポートフォリオなどを一元管理できる環境を整え、「Yahoo! Japan ID」によるシングルサインオンの実現を目指すという(写真5、6)。
FXではSBIリクイディティ・マーケットが、ヤフーが展開するYJFX!(ワイジェイFX)のカバー取引先に加わり、フロー管理の最適化を図る。これにより、現在よりもさらに安定的な取引価格の提供が可能になる見込みだという。
銀行では、SBIホールディングス持分法適用会社の住信SBIネット銀行と、Zホールディングス子会社のジャパンネット銀行が協業する。まずは、住信SBIの取り扱う住宅ローン商品「フラット35」をジャパンネット銀行経由で販売できるようにする。
銀行やFX関連の事業ではZホールディングス傘下で展開する事業とSBIホールディングスの事業とで重なる部分もありそうだが、川邊氏は「中核はヤフーファイナンスというメディアであり、金融サービスに関してもできるだけ多くの選択肢をユーザーに提供していきたい。自前で提供するサービスと同様に、他社のサービスも紹介していければ」と相乗効果を強調した。
ソフトバンク、PayPayとの連携可能性も
今回の提携は、「今年4月頃にSBIさんのほうから。いよいよヤフー(当時)もZホールディングスになって金融に力を入れていくのであれば(一緒にやりましょう)とのお話があり、お受けした」(川邊氏)。SBIホールディングス・代表取締役副社長で、SBI証券・代表取締役社長を務める髙村 正人氏(写真7)は「ここもと、金融以外のオンライン企業が金融に参入してきている。ヤフーさんとはその昔、親戚筋であったこともあり、話もしやすい。ということで、非常に自然に話しかけた」と述懐する。
SBIとヤフーが金融で提携、と言えば、避けて通れないのがPayPayとの連携に関する見通しだろう。会見でも、ヤフー(当時)が第二の創業として掲げるPayPayとの相乗効果は今後あり得るのかといった質問が記者から飛んだが、川邊氏は明言を避けた。一方、髙村氏は「本日発表した(提携)事業の外にも、両社は幅広い事業を抱えている(写真8)。決済もある。(今年6月に現・Zホールディングスを連結子会社化した)ソフトバンクさんと当社も元々は親戚筋で近しい。現時点で決まったことは何もないが、提携につながっていく可能性はある」と述べていた。