ジェーシービー(JCB)は10月1日、「#JCB みんなのキャッシュレス」と銘打った利用促進キャンペーンを全国の複数エリアで開始すると発表した。その第1弾として10月1日から8日までの1週間、東京・新橋の「ガード下横丁」で、ドリンクの半額割引や、キャッシュレスでの支払いでしか注文できない限定メニューの提供を始めた。なぜ、「横丁」でキャッシュレス推進なのか。その狙いを同社が明かした。
キャッシュレス限定メニューはJCBカード以外でもOK
新橋ガード下横丁(東京都港区新橋1-13-3/写真1)で実施する「JCBキャッシュレスハッピーアワー」は、JCBカード、QUICPay、JCBプレモカードのいずれかで代金を支払った場合に、生ビール、ハイボール各種、焼酎、ワインなどの対象ドリンクが全品半額になる。「ハッピーアワー」の名称だが、来店時間は問わない(同店は15時から営業)。
また、JCB以外でもキャッシュレス(対象となるのは写真2の決済方法)での会計を前提として、食べ放題や特別盛りなどの「キャッシュレス限定メニュー」が注文できる。メニューの一例を挙げると、ウニとイクラの限界キャッシュレス盛り寿司、キャッシュレスエンドレスホルモン、ローストビーフの限界キャッシュレス盛りなどがあり、「ストップ」と告げるまで店員がイクラやローストビーフを盛り続けてくれるといった嬉しいサービスも受けられる(写真3)。
なお、ガード下横丁内ではこれまでキャッシュレス手段としてクレジットカードのみを取り扱ってきたが、お客からの要望もあり、電子マネーなど他の決済手段にも対応した。その際の決済端末は、ジェーシービーも出資する決済代行会社のJMS(ジェイエムエス)の「おてがるPay」を採用した。
取材したガード下横丁内の店舗では、据え置き型のがっちりした端末でなく、簡易型のmPOS端末が採用されていた(接続先はCARDNET)。これは、広い店内で店員が端末を持ち運ぶ際に便利との理由から選択されたという。今後はJCBが提供するQRコードの統一規格「Smart Code(スマートコード)」にも対応し、メルペイなどのコード決済が利用できるようになる予定だ(端末は別途設置する)。
ジェーシービーでは新橋以外でも、下記の札幌、名古屋、広島をはじめとして、今後さまざまな都市で展開を予定しているそうだ。
<今後のキャンペーン予定>
■札幌(2019年10月24日〜2019年10月27日)
札幌 場外市場
■名古屋(2019年10月31日〜2019年11月3日)
金シャチ横丁
■広島(2019年11月12日〜2019年11月13日)
横川商店街
お店の7割以上が「金額に関係なくキャッシュレス決済を利用してほしい」
10月1日からの消費税増税と、その需要平準化対策として実施される「キャッシュレス・消費者還元事業」スタートを意識したタイミングでのキャンペーンとなるが、特徴的なのは対象とする業種として、庶民的な「横丁」や「市場」、「商店街」を選んだことだ。
キャンペーンの狙いは、キャッシュレスに対する利用者とお店の間にある認識のギャップを埋めることにあるという。ジェーシービーがそれぞれにアンケートを実施したところ、利用者は「少額だと利用を嫌がられる気がする」「使えるかどうかわからない」などの理由でキャッシュレスでの支払いを躊躇する一方で、店舗側(コンビニ、居酒屋、タクシーへのアンケート結果)では「現金よりもキャッシュレス決済のほうが楽」「金額に関係なくキャッシュレス決済を利用してほしい」との意見が70%を超えており、意識のずれが明確になっていた(写真4)。これを解消することがキャンペーン展開の狙いであり、あえて飾らない大衆的なお店でキャッシュレス決済の利用を促そうとすることの真意でもある。
ジェーシービー・取締役常務執行役員の岩井 克実氏(写真5)は、キャッシュレス推進協議会が今年の4月に公表した「キャッシュレス・ロードマップ」のデータを引用し(写真6)、「大変、示唆に富む分析」と評価した上でこう語った。
「まず図の左側、『キャッシュレス導入が従来行われてきた市場』で現金を使う人を減らすこと。そして、右側の『キャッシュレス導入の裾野が広がる市場』でキャッシュレス利用の裾野を広げることが重要だ。左の市場にはクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードが向いているが、右の市場を担うのはバーコードやQRコードによる決済手段かもしれない」(岩井氏)
キャッシュレス・消費者還元事業の効果もあって、決済端末の導入ハードルや加盟店手数料の低減が、これまでキャッシュレス決済を導入してこなかった店舗への導入を後押ししている。一方で、加盟店の裾野を広げることも確かに重要だが、すでに導入済みの店舗の中にもキャッシュレス普及を阻む理由が存在する。それを見据えたジェーシービーの今回のキャンペーン展開は、一本筋の通った取り組みと言えるかもしれない。