みずほ銀行は11月9日、ビザ・ワールドワイド・ジャパンと連携し、メガバンクでは初めて、中小企業・個人事業主を対象とする「みずほビジネスデビット」を2018年初旬から開始すると発表した。採用する国際ブランドはVisaで、非接触IC決済のpayWaveも搭載する。最大10枚のカードが発行でき、1枚ごとに利用限度額などをPCやモバイル端末から管理、変更できるサービスも提供する。
■1事業者につき10枚までの発行が可能
みずほ銀行が来年1月の発行を目指す「みずほビジネスデビット」は、中小企業と個人事業主向けに提供されるサービスで、個人向けには提供しない。採用する国際ブランドはVisa。みずほ銀行によると、日本国内でVisaデビットを事業者(ビジネス)向けに発行するのは、ジャパンネット銀行、住信SBIネット銀行、スルガ銀行(以上、Visaブランド)、楽天銀行(JCBブランド)の計4行(2017年11月8日現在)。ここに、メガバンクとして初めてみずほ銀行が市場参入する。
1事業者につき最大10枚までのVisaデビットカードが発行でき、1枚ごとにカード利用限度額などをPCやモバイル端末から管理、変更できるサービスも提供する。サービス使用料は無料で、カード発行手数料は1枚あたり1,000円程度で検討中。ただし、正式サービスインの時点ではキャンペーンとして1枚目のカード発行も無料とする。非接触IC決済に利用できるVisa payWave機能も搭載する。
東京・内幸町のみずほ銀行本店で開催された新サービス発表会には、みずほ銀行 常務執行役員の板橋 宏氏をはじめ、ビザ・ワールドワイド・ジャパン代表取締役社長の安渕聖司氏、米国Visaインク シニアバイスプレジデントのデビッド・サイモン氏らが出席した(写真)。カードデザインはみずほ銀行とVisa、共通のブランド色である濃紺のカードと、東京2020マークをあしらった特別デザインカードの2種類を発行する。国際オリンピック委員会(IOC)ワールドワイドスポンサーのVisaと、東京2020ゴールド銀行パートナーのみずほ銀行の協働により実現した。
■従業員のデビットカード利用条件を管理画面でコントロール
みずほ銀行 常務執行役員の板橋氏は、中小企業や個人事業主の日常業務においては、従業員による立て替え払いや手間の掛かる支払い業務が残っていることを指摘。「従業員が出張や接待を行う際、法人口座に直結しているビジネスデビットを使えば、領収書を経理担当に出すだけで精算事務が終わる」と導入メリットを説明した。
また、同カードが一般従業員まで幅広く利用できる反面、管理面でのリスクに配慮して、専用のWebサイト(PC、モバイル端末に対応)から管理機能を利用できるようにした。これにより、デビットカード1枚ずつの利用制限について、管理責任者がカード利用限度額などをリアルタイムに設定可能。これが他社の商品では提供されていない商品優位性であるとした。
ビザ・ワールドワイド・ジャパン 代表取締役社長の安渕氏は、日本政府の掲げている「10年以内にキャッシュレス比率を40%まで上げる」目標設定を引き合いに出し、「今回の商品はこれを加速するマイルストンだ。キャッシュレス化の推進には中小企業、個人事業主の取り込みが重要になる」と話した。また安渕氏によると、昨年実施した調査結果から、業務用の支払いにおいて金額ベースでは全体の約半分を『銀行振込』が占めるが、件数で見ると最も多くを占めていたのは『現金』で、実に全体の3分の1に上るという。海外と比べてビジネスカードの利用が進んでいない日本では、十分にビジネスチャンスがあるとの見方だ。
■将来はIoT決済への拡張もにらむ〜米VisaインクSVP
発表会にあわせて来日した米国Visaインク シニアバイスプレジデントのデビッド・サイモン氏は、米国におけるビジネス向けカードの普及事情として、「調査によれば67%の事業主がビジネスバンキング、パーソナルバンキングの両方で、同一の金融機関を利用しているとの結果がある。また85%の事業主が、『銀行口座を変更するとそれにあわせて個人口座も変更する』と回答している」実態を紹介。その上で、「銀行が先進的なデジタルサービスを提供することは、中小企業が銀行を変更する場合の重要な指標になっている」と続けた。
こうしたニーズに対応してVisaではデジタル機能の開発をさらに強化しているという。例えば、モバイルアプリによりPOSで発行された領収書やレシートをキャプチャし、会計ソフトにリンクさせる機能などを提供。さらに将来は、一例として、事業主が現在のプラスチックカードに当たる「トークン」データを発行しておき、従業員が割り振られたモバイル端末でカード決済に利用するようなことを検討しているという。
また、もう1つの将来例は、トラック運転手が給油を行う際の支払いについて、プラスチックカードを利用するのではなく、「ペイメントデバイスをトラックに埋め込んでおき、給油ポンプがつながると自動で通信を行い、支払い手続き完了する」もの。いわゆる“IoT決済”が法人向け分野にも有効な事例がありうることを示唆した。