メルカリは3月4日、同日から新たにMVNO(仮想移動体通信事業者)方式による携帯電話サービス、「メルカリモバイル」を提供開始すると発表した(画面1)。最大の特長は、自身が保有する「ギガ」(データ通信量)をメルカリのユーザー間で割安に売買できること。初期投資が小さいMVNOを選ぶことにより、メルカリとの相乗効果を狙いつつ、事業単体として早期黒字化を目指す。

画面1 MVNOの事業名は「メルカリモバイル」
ドコモ回線のMVNO、eSIMから始め物理SIMも
通信回線はNTTドコモの回線を利用し、音声、SMS、データ通信を提供する。
提供する料金プランは、データ通信量の月利用上限が「2GB」までの990円(税込み)プランと、データ通信量の月利用上限「20GB」までの2,390円(税込み)プランの2種類。国内通話料は22円/30秒。MNPにも対応し、契約開始時の登録手数料は契約開始時3,300円。
今後は、au回線への対応や、料金プランに「通話定額」の追加を予定する。毎月の利用料金は、当初はメルペイスマート払い(後払い)、および、メルカードでの支払いにのみ対応し、今後は順次、他の支払方法についても追加していくという。
サービスの申し込みは「メルカリアプリ」から行う。店頭などでの申し込みはできない。当初はeSIMから対応し、eSIMが利用可能なiPhone、Android、タブレットの各端末で利用できるが、3月4日の提供開始時点ではiOS版アプリの対応が先行するため、iPhoneが対象になる。SIMについては、端末内蔵式のeSIMだけでなく、今後は物理SIM(SIMカード)も提供していく予定。
目を付けたのは「余ったギガ」
「メルカリモバイル」の最大の特長は、利用者がデータ通信量の使い残した部分などを、メルカリのユーザー間で売り買いし合えること。
「われわれが現在のスマホユーザーの利用傾向を調査したところ、ギガに関して、契約内容と利用実態(料金プラン)とにギャップがあることがわかった(画面2)。しかも、締め日にギガを余らせてしまった方の75%が、使い残して(消滅させて)しまっている。そこで今回、『日本初のギガの売り買い』を開発した。いつものメルカリアプリから利用できることが最大の特長だ」(メルカリ・執行役員CEO Fintech 兼 新規事業責任者で、メルペイ・代表取締役CEOも兼務する永沢 岳志氏/写真)

画面2 スマホユーザーにおけるギガの利用傾向

写真 メルカリ 執行役員CEO Fintech 兼 新規事業責任者、メルペイ 代表取締役CEOの永沢 岳志氏
ギガの売買は、メルカリの出品と購入の要領で、メルカリアプリ内で簡単に操作できる。出品は1GB単位で行うことができ、出品者が価格を設定できる。ただし、取引は1GB単位で、出品は1回取引あたり最低200円から、1GBあたりの最高金額は500円と条件があるため、実際は1GB当たり200円~500円の幅で金額を指定して出品できる(画面3~5)。
購入者も同様に、データ通信量が足りなくなった際に、メルカリアプリ内からの操作だけで、簡単に追加のギガが購入できる。メルカリ公式からは1GBあたり550円で購入できるので、購入者からすれば公式から買うするよりも少しお得に買える計算となる。
販売手数料は10%で、ギガを売った金額はメルカリの売上金に即時入金される。メルカリの売上金は、そのままメルカリでの買い物や、メルペイの支払いに利用することもできる。

画面3 利用時のスマホアプリ画面①

画面4 利用時のスマホアプリ画面②

画面5 利用時のスマホアプリ画面③
『売上金』というキャッシュインの強みを生かす
メルカリによる、通信事業という異業種への参入では、MVNO方式(MVNE*による)が選択された。会見で、「基地局参入のようなことはしない」と明言した永沢氏。「大規模な初期投資なく始められることがMVNOのメリット。そこに、メルカリ独自である『ギガ売り買い』という価値を付けて売ることが価値だと考えている」と明確に参入ポリシーを語る。
990円、2,390円の2種類と、業界最安値でもない価格帯で始める料金プランについても、「一番安いものを提供する戦略ではない。メルカリ、メルペイと(お客様)のつながりで選んでもらう」とする。そして、そのことを最大の強みとして、MVNO事業単体で早期の黒字化を達成化していきたい意向だ。
「(世間で言われる『経済圏』の言葉について)われわれはエコシステムと呼ぶが、『売上金』というキャッシュインが生まれることがメルカリの一番の強み。メルカリハロを通じて入ってくる入金もある。それに対して、(お金が)出ていくメルペイやメルカードを用意してあることが戦略だ。メルカリモバイルも、『購入したうちの5GBを1,000円で誰かに売れば、(自身の通信料は)1,000円安くなる』ような感覚で選んでもらえるのではないか」(永沢氏)
*MVNE:仮想移動体通信サービス提供者。MVNOの事業構築を支援する。

画面6 メルカリの各種サービスの利用状況

画面7 メルカリのエコシステム