マネーフォワードが家計簿アプリ事業を新設する合弁会社へ移管、パートナーは「Olive」の三井住友カード

マネーフォワードと三井住友カード(SMCC)は7月17日、個人向け事業における合弁会社の設立を含む資本業務提携に関する基本合意書を締結したと発表した。両社は同日の夕方に都内で緊急記者会見を開き、提携の内容や提供を予定するサービスイメージについて説明した。

出資比率はマネーフォワード51%、SMCC 49%

 マネーフォワードと三井住友カード(SMCC)は7月18日、個人向け事業における合弁会社の設立を含む資本業務提携に関する基本合意書を締結したと発表した(最終契約の締結と公表は2024年9月末を予定)。マネーフォワードは家計簿アプリ「Money Forward ME(マネーフォワードME)」を含む個人向け事業を分社化し、新会社に統合する。個人事業主や法人向け事業についても今後、両社で協業を検討していく。
 新会社の名称などは未定で、2024年12月の事業開始を予定する。新会社の代表取締役社長にはマネーフォワード代表取締役社長CEOの辻 庸介氏、代表取締役会長に三井住友カード・代表取締役社長 兼 最高執行役員の大西 幸彦氏が就く(写真1)

写真1 写真左から、マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻 庸介氏、三井住友カード代表取締役社長 兼 最高執行役員の大西 幸彦氏

 新会社に移行する対象事業売上の規模は2023年11月期で35億2,300万円。マネーフォワードが2024年11月までに子会社を設立して個人向け事業を承継する。当該子会社の株式価値評価額を338億円とし、三井住友カードへ株式の一部を譲渡(140億円)、さらに同年12月に三井住友カードに対する発行総額50億円の第三者割当増資を行う(画面1)。取引完了の後、合弁会社における両社の出資比率は、マネーフォワードが51%、三井住友カードが49%となる予定。

画面1 合弁会社設立のスキーム(出典:マネーフォワード「Homeドメインにおける三井住友カード株式会社(SMBCグループ)との合弁会社設立に関する基本合意書の締結について」2024年7月17日)

 マネーフォワードが提供する家計簿アプリの「マネーフォワードME」は、銀行、クレジットカード、証券、ポイントなど2,460以上(2024年6月末時点)の金融関連サービスと連携が可能。2024年5月末時点の利用者数は1,610万人で、口座連携金融資産額は25兆円を超える。
 一方の、三井住友カードが2023年3月から三井住友銀行などと共同で提供する個人向け総合金融サービス「Olive(オリーブ)」は、2024年7月時点で300万人以上がアカウントを開設している。
 記者会見の席上、マネーフォワードの辻氏は「10年やってきたが、本当に収益化が難しいと正直思っている」と個人向け金融事業の収益化の難しさを表現した。一方で、「金利がない世界から金利のある世界になり、資産運用を皆さんがやるようになってきて、まさに個人のお金が動き出す、マクロ環境が変わった。今までやりたかったことを提供していくと、ユーザーメリットが大きい環境に変わってきたなと感じており、個人的にもワクワクしている。三井住友カードさんと一緒に面白いサービスができるんじゃないかと思う」として、合弁会社で取り組む事業の可能性を強調した。
 三井住友カードの大西氏は「(合弁会社への出資を含む提携は)われわれのデジタルサービスの根幹に関わる部分のレベルアップなので、本気で一緒に開発していきたい。他方で、われわれはすべて自分で(開発して提供する)、ということではなく、素晴らしいサービスをつないでいこうとの発想を持っていろいろな方とパートナーシップを組んで進めていくスタンス」と述べ、提携の背景と合弁会社への期待をにじませた。
 また、合弁会社では「Olive」との連携に限らず、「マネーフォワードME」そのものの事業も手掛けることになるが、「マネーフォワードMEの事業も一体感をもって提供していきたいと考えているが、(今回の提携によって)必ずプラスが出てくる。そこでお互いにプラスが行ったり来たりするようになっていくだろう」(大西氏)として、事業間の相乗効果についても期待感を示した。

「ドラッグ&ドロップ」での口座残高移動も検討

 新会社では今回の提携を通じて、「マネーフォワードME」と「Olive」の機能の統合を進め、「お客さま起点の『オープンなお金のプラットフォーム』」の創出を目指していくという(画面2)
 具体的には、以下の4つのサービスイメージが公表されている。

画面2 連携するサービスのロゴ(出典:両社の報道発表資料より)

①シームレスな資金移動
 「マネーフォワードME」と「Olive」の機能を掛け合わせ、シームレスな資金移動体験を提供する。口座管理画面において、利用者が複数の金融機関に保有する口座残高を一覧で確認できることに加え、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作で、金融機関をまたいだ資金移動までが実現できる機能を検討していく(画面3)

画面3(出典:両社の報道発表資料より)

②リアルタイムでの家計管理
 三井住友カードが提供するクレジットカードの即時利用通知サービスと、「Money Forward ME」が持つ資産状況を見える化できる機能を掛け合わせ、クレジットカードの利用情報をすばやく家計簿に反映できる機能を検討する(画面4)

画面4(出典:両社の報道発表資料より)

③自分だけのローン
 三井住友カードのクレジットカードや「Olive」の利用状況と、「マネーフォワードME」が持つ家計管理データの分析により、利用者が借入れ可能な金額を事前に提案する機能を検討する(画面5)

画面5(出典:両社の報道発表資料より)

④ポイントがたまる家計簿
 「マネーフォワードME」の利用状況に応じて、「Vポイント」が付与される機能を検討する(画面6)

画面6(出典:両社の報道発表資料より)

 

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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