3社合併後の新会社名は「LINEヤフー」に、PayPayとのID連携は2024年度中に実施

ZホールディングスとLINE、ヤフーの3社などが今年10月に合併する。新たに誕生する会社の名前は「LINEヤフー」。Yahoo!とLINEのサービスを統合・一本化するために、合併と同時にID連携を開始する。このID連携の枠組みに、成長に陰りの見えない「PayPay」も2024年度中に加わる予定だ。

既存のブランド資産を生かすための新社名に

 Zホールディングスは4月28日に開催した2022年度通期および第4四半期決算説明会において、2023年度中の実施を発表していたZホールディングスとLINE、ヤフーの3社を中心とする会社合併の時期が2023年10月1日に決定したことを発表した(画面1)。合併後の新社名は「LINE ヤフー株式会社」で、英文名は「LY Corporation」。

画面1 LINEの四谷オフィスを紀尾井町に統合する方針だという (出典:「2022年度通期および第4四半期決算説明会」資料より)

 存続会社はZホールディングスで、同社、LINE、ヤフー、Z Entertainment、Zデータの5社が合併の当事会社となる。新会社である「LINEヤフー」の社長には現・Zホールディングス 代表取締役社長 CEO Marketing & Sales CPOの出澤 剛氏(画面2)が就任する予定。
 新社名の決定理由について、出澤氏は「既存のブランド資産を活用しようというのが基本的な理由だ。他にもさまざまな案を出したが、2社のこれまでの営みや歴史の結果としてのブランド資産は大きいと判断し、あえて2社の名前を残した」と説明する。合併後も、Yahoo!やLINEの名称を冠した個々のサービス名が直ちに変わるわけではないため、ユーザーの混乱を招かないことも理由とした。オフィスは現在、Zホールディングスとヤフーのある紀尾井町に順次、集約していく。

画面2 「LINEヤフー」社長に就任予定の出澤 剛氏

ID連携も10月開始、PayPay統合は2024年度中に

 合併を契機に、遅れていたヤフーとLINEのID連携も進める。Yahoo! JAPANとLINEのID連携を2023年10月に開始した後、2024年度中にPayPayとのID連携も開始する予定。PayPayとの連携が遅れる理由は、「単純に工数の問題に加えて、PayPayは金融・決済の事業者であるため、より慎重に準備を進めたい」(出澤氏)
 合併とID連携により、ヤフーとLINEで分かれていたサービスを共通して利用できるようにする(画面3)。具体的には、翌11月から「ヤフープレミアム会員」をリニューアルする形で「LYPプレミアム会員」をスタートする(画面4)。既存の会員はID連携を行うだけで、LINEのスタンプ機能が使い放題になるほか、写真しか保存できなかったLINEのアルバム機能に動画が追加されるなどのメリットがある。「本質的には、ヤフーとLINEにまたがって使われているサービスを一本化して使ってもらいたい。例えば、ショッピング配送先の住所が連携できたり、ヤフーで利用しているカレンダー機能をLINEのメッセンジャーに連携したりといった仕組みを作っていきたい」(出澤氏)

画面3 統合後の会員数は1億5,000万人(重複あり)を超える(出典:「2022年度通期および第4四半期決算説明会」資料より)

画面4 LYPプレミアム会員は、スマホ1台で複数アカウントの利用も可能になる (出典:「2022年度通期および第4四半期決算説明会」資料より)

 ただし、ID連携は「必ずユーザーの同意を得た形で行い、(IDを)強制的に統合することはない」(Zホールディングス・代表取締役GCPOの慎 ジュンホ氏)という。
 PayPay(画面5、6)とのID連携で実現できることのイメージとしては、LINEを使う中でPayPay送金が利用できたり、3月末にプロジェクト中止が発表されたLINE Bankのコンセプトを引き継ぎ、PayPay銀行と連携するなど、LINEサービスの中においてPayPayの取扱を増やしていくことが挙げられた。
 また、スマホ決済サービスである「LINE Pay」との関係については「PayPayとLINE Payは役割分担ができている」(出澤氏)として、すでに統合が完了しているユーザースキャン方式(MPM)に続いて、ストアスキャン方式(CPM)のコード連携についても今後、準備していくと説明した。

画面5 PayPayの連結取扱高(子会社のPayPayカードを含む)は2022年度に10超円を超えた (出典:「2022年度通期および第4四半期決算説明会」資料より)

画面6 PayPayの赤字幅は2021年度対比では300億円規模で縮小 (出典:「2022年度通期および第4四半期決算説明会」資料より)

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。