ディーカレットは8月28日、事務局を務めるデジタル通貨勉強会の中間報告会を報道関係者に向けてオンライン開催した。8月31日に一般公開する「中間報告書」の内容から、同勉強会の目指すデジタル通貨の実現モデルが、「共通領域」と「付加領域」を設けた二層構造となることが明らかになった。
「共通」と「付加」の二層構造化を志向
3メガバンクをはじめ、セブン銀行、NTTデータ、KDDI、インターネットイニシアティブ(IIJ)、東日本旅客鉄道(JR東日本)などが参画して行われてきたデジタル通貨勉強会。金融庁や財務省、日本銀行、総務省、経済産業省がオブザーバーとしてこぞって名前を連ね、またその座長を元・日本銀行 決済機構局長の山岡 浩巳氏(現・フューチャー取締役/写真①)が務めることも手伝って話題を集めている。
勉強会が掲げる目的は、「官民/技術動向を踏まえたデジタル通貨のあるべき姿の検討と、その実現に向けた推進環境の整備」にある。デジタル通貨で世界をリードすることも意識して検討を行うという。勉強会は今年6月に初開催された後、全9回が予定されており、8月末までに5回が開催された。
勉強会が発足した6月には、日本経済新聞が「デジタル通貨と『スイカ』連携、3メガ銀・JR東など検討」などと断定的に報じたが、事務局を務めるディーカレットは「特定の事業者と金融機関の連携が一部報じられておりますが、特定事業者同士の接続を協議する場ではありません」との公式コメントを発表している。
「本勉強会の検討は『民間ベース』であることが特徴だ。デジタル通貨で何ができるのか、そして何が変わるのか、それが明らかにならなければ広がらない」(ディーカレット・代表取締役社長の時田 一広氏/写真②)
同勉強会ではデジタル通貨の発行モデルを大きく7パターンに分類した(図表1)。このうち、中央銀行が発光するデジタル通貨(CBDC)についてではなく、いわゆる普通銀行が発行することを想定した「民間発行デジタル通貨」に焦点を当て、引き続き検討を進めていく方針。暗号資産は検討スコープに含まない。また、その際の実現モデルとして、「共通領域」と「付加領域」を設けた二層構造になることも明らかにした(図表2、3)。
キャッシュレス決済間の「交換」も視野に
「デジタル通貨で決済インフラの課題を解決したいが、その際にはコスト削減だけでなく、新しいベネフィットを創出したいと考えている。例えば、商品の納品と同時に仕入れ代金を自動的に支払えるようになることで、都度の請求や精算といった事務が要らなくなる。スマートコントラクトを通じて解決できる」(事務局を務めるディーカレット・CTOの白石 陽介氏)
二層構造の一層目(共通領域)には「◯◯◯円」のようにデジタル通貨として共通に持つべき情報を持たせ、二層目(付加領域)には特定の流通圏の事業者間で利用できる固有の情報を定義できるようにする(図表4)。一層目、二層目ともにブロックチェーン・DLT(分散型台帳技術)を採用して構築することを想定しており、「デジタル通貨同士の『交換』によって相互運用性を高められる」(白石氏)という。図表5に示されているように、「××Pay」や「◯◯Coin」といった個々のキャッシュレス決済サービス同士を、価値の交換機能を通じてつなぎ合わせる展開イメージも持っているようだ。
今後は技術面からフィージビリティの検討と、実装に向けた実証実験(PoC)の実施を予定しており、PoCについては勉強会の現メンバー以外の企業にも広く参加を呼びかける方針だ。
「IoTの進展により、クラウドで価値やデータが移転していく。その際、その対価についてもリンクして移転しなければいけない。デジタル通貨はそのための重要インフラであり、重要なエコシステムの一環だ」(同勉強会座長の山岡 浩巳氏)
勉強会ではこれまでの議事録・資料等も公開しており、「デジタル通貨勉強会 中間報告書」も8月31日以降に公表される予定。山岡氏は「(デジタル通貨を)中央銀行が発行するのが良いかの判断は、われわれは行わない。他方で、他が決まらないとすくんでしまって動けない状況は避けたい。先々にどんなインフラが出て来たとしても有益な材料を与えると思うので、今後も透明性をもって勉強会に取り組んでいきたい」と話している。
■デジタル通貨勉強会|ディーカレット
https://www.decurret.com/company/studygroup-2020/