みずほ銀行は8月29日、 iOS向けに提供している「みずほWallet」アプリをバージョンアップし、同日よりApple Payに対応する「Smart Debit」の提供を始めた。「QUICPay/+」と国内外の「JCBコンタクトレス」加盟店、ならびにApple Payに対応するインターネット加盟店でJCBデビット決済が利用できる。日本版Apple Payでのデビット決済の提供は初めて。年内は利用金額の20%をキャッシュバックするキャンペーンなどを打ち出し、スマホ決済の利用を促進する。
対応加盟店では「JCBコンタクトレス」にも対応
同日にバージョンアップしたアプリの名称は「みずほWallet for iOS」。昨年8月にリリースされ、みずほ銀行の普通預金口座に直結するJCBデビットとして利用が可能なAndroid版(「みずほWallet for Android」)に対して、青いカラーリングが特徴の「Mizuho Suica」のみに対応してきたが、この更新により、同じアプリでJCBデビット(同行では「Smart Debit」と呼ぶ)も利用できるようになった(写真1)。
アプリをアップデートすると、新たに「デビット払い」ができるようになった告知が表示されるので、「Smart Debitを発行する」を選んで登録を進めていく。必要項目の入力と各種規約への同意を経るとApple Payへの登録が完了する。登録後は、全国92万台以上(2019年6月末時点)の対応端末を通じて非接触IC決済「QUICPay/+(クイックペイ/クイックペイプラス)」での支払いと、Apple Payに対応するインターネット加盟店での支払いが可能になる。Apple Payに搭載済みのSuicaへのチャージも可能。また、国内外の「JCBコンタクトレス」加盟店での支払いにも利用できる。
日本国内に居住しており、みずほ銀行の普通預金口座を保有する15歳以上(中学生を除く)の個人が利用でき、年会費や利用料はかからない。Smart Debitの利用限度額は基本的に登録した預金口座の範囲内だが、アプリから任意に設定を変えることもできる(設定項目は、1回当たり、1日当たり、1カ月当たりの3種類)。
なお、みずほWallet for iOSの開発に当たっては、クレジットカード会社のジェーシービー(JCB)と、大日本印刷が協力した(写真2)。JCBが提供する、QUICPay/+加盟店での支払いが可能な「モバイルデビットサービス」は、同8月29日付けでApple Payへの対応を開始(写真3)。その第1号がみずほWallet for iOSとなる。また大日本印刷は「DNPモバイルWalletサービス」の機能を拡張し、みずほWalletにバーチャルデビットカードの即時発行機能を提供する。
20%キャッシュバックを実施、Suicaチャージは対象外
みずほ銀行は発表当日の8月29日から本年12月15日までの期間、利用金額の20%をキャッシュバックするキャンペーンを実施する。対象となる利用金額の上限は税込み5万円で、最大1万円のキャッシュバックが受けられる(入金は2020年3月下旬を予定)。iOS版、Android版を問わず、「Smart Debit」によるQUICPay/+加盟店での利用のみが対象で、JCBコンタクトレス加盟店での利用や、Suicaへのチャージ、Apple Pay対応EC加盟店での利用は対象外なので注意したい。
また、iOS版のみずほWalletでは同じ8月29日から本年10月31日まで、「Mizuho Suica」を新規発行してチャージした利用者に対し、チャージ金額の20%(金額上限5,000円、最大還元額1,000円)をキャッシュバックする。
J-Coin Payへのショートカットを用意、クレジット決済も検討
「現在、月間100万件を超える取引がみずほWalletで行われており、トランザクション数としてはかなり増えてきている」(みずほ銀行 リテールデジタル開発部デジタルチャネルチームの若宮太郎次長/写真4)
スマートフォンを用いた電子決済サービス(スマホ決済)では、同日発表になった非接触IC決済以外にも、コード決済対応の「J-Coin Pay」を提供するみずほ銀行(写真5)。スマホ決済で複数のアプリを用意していることについて、記者発表会に登壇した若宮氏は、「ベースにあるのは銀行口座を便利に使ってもらうこと。お客様の多様なニーズに応えられるように、幅広いラインアップを提供している」と説明。「みずほWalletのユーザーが『送金をしたい』と思ったときには、J-Coin Payを使ってもらえるように」と、今回のアプリアップデートからメニュー内にJ-Coin Payアプリへのショートカット(写真6)を配置した狙いを話した。
その上で若宮氏は、日本のキャッシュレスの趨勢について「キャッシュレスの中心はクレジットカードへのニーズが圧倒的に強く、数字にも表れている」と見る。しかし、「どうしてもクレジットは使いたくない、というユーザーニーズもあり、それに対してデビットやSuicaを提供してきた」という。詳細は避けたが、「オリエントコーポレーションとも(クレジット決済との連携について)検討は行っている。オリコカードはすでにApple Payに登録して使えるようになっているので、これをみずほWalletとして、1つのお財布の機能として提供するかを検討している」(若宮氏)ことを明かした。