JR東日本フードビジネスが「R・ベッカーズ」にセルフ注文決済端末初導入、モバイルオーダーと併用でさらなる効率化と省人化を狙う

ジェイアール東日本フードビジネス(JR東日本フードビジネス)とShowcase GIG(ショーケース・ギグ)は9月4日、東京・池袋のハンバーガーレストラン「R・ベッカーズ池袋東口店」で同日の営業開始時間から新たに導入したセルフ注文決済端末の「O:der Kiosk(オーダーキオスク)」を報道陣に公開した。事前注文決済サービスとしては今年1月に導入した「モバイルオーダー」に続いての導入となる。

注文と決済を1台で、交通系電子マネーとクレカに対応

 R・ベッカーズ池袋東口店を入店してすぐの場所に2台の新端末が設置された。セルフ端末は大きな画面が特徴的なタッチスクリーン式で、商品の選択と注文、そして支払いまでを1台の端末で完了できる(写真1〜写真4)

写真1 注文前の画面。店内に2台が設置されている

写真2 メニュー表示中の画面。「選択ボタン」というより、商品の画像をタッチする感覚がスマホに近い

写真3 トッピングの有無など注文メニューの階層化にも対応している

写真4 注文確認画面で内容を確認し、追加注文か、支払いへと進む

 セルフ端末での決済には、Suicaなどの交通系電子マネーと、クレジットカードが利用できる(写真5、6)。Visa、Mastercard、JCBに対応するクレジットカードでは、磁気ストライプの読み取りとタッチ決済(EMVコンタクトレス)の2方式に対応している。
 決済が完了すると発行されるレシートには注文番号が記載されており(写真7)、同時に店内のデジタルサイネージにも注文番号が表示される。注文情報はセルフ端末から直接、調理場に伝わっており、サイネージ画面には注文の進捗状況がリアルタイムで告知される(写真8)。調理が完了したことがサイネージ画面に表示されるのを待って受取カウンターまで足を運べば、作りたての商品を受け取ることができる(写真9)

写真5 対応する決済手段は交通系電子マネーと各種クレジットカード

写真6 Suicaなどの交通系電子マネーと各種クレジットカード、かざす場所は共通。なお、JR駅中という出店の立地もあってベッカーズではSuicaの利用率が高く、取引全体の2〜3割を占めるという

写真7 レシート上部に注文番号が印字されるので、この番号をデジタルサイネージ画面で探す

写真8 調理が完了するとステイタスが「Ready」に変化して表示カラーも変わる

写真9 お待たせしました。受取カウンターで出来たてほやほやのバーガーたちとご対面(※試しに注文したのはカプチーノでしたが、ここではR・ベッカーズの人気バーガーセットのお写真をお楽しみください)

 現金での支払いには現状、対応していない。現金で支払いたい場合にはセルフ端末でなく、有人の注文カウンターを利用する必要がある(写真10)。また、オーダーキオスクの対応言語は日本語のみだが、今年の秋から英語版を追加する予定だ。
 なお、JR東日本グループでは今年の1月からR・ベッカーズ池袋東口店を含む首都圏の駅中12店舗(うちベッカーズ系は3店舗)にて、ショーケース・ギグが提供する「モバイルオーダー」を導入済み(写真11)。店舗に設置されるオーダーキオスクとは異なり、お客は自身のスマホアプリを通じて事前注文と決済が利用できる。オーダーキオスクと同一のプラットフォームで動作していることから、モバイルオーダーからの注文も先述した店内のサイネージ画面に混在して表示されるのが特長だ(写真12)

写真10 有人レジも1台設置されており、通常店舗と同様の注文方法が利用できる

写真11 店内にはモバイルオーダーの利用を促すポスターも掲出

写真12 モバイルオーダーを使って事前注文したお客さんもオーダーキオスク利用者と同じ受取カウンターで商品を受け取る

「『手作りの美味しさ』に、より人手を注力したい」

 R・ベッカーズを運営するJR東日本フードビジネスは外食事業で60のブランドを有し、ファストフードチェーン、コーヒーショップ、ベーカリー、和洋中レストランなど250店舗を展開しているが、「ベッカーズは当社の中核ブランド」とJR東日本フードビジネス・代表取締役社長の山際 貞史氏(写真13)は説明する。

写真13 ジェイアール東日本フードビジネス・代表取締役社長 山際 貞史氏

 「バンズからお店で手作りするこだわりの『別格シリーズ』をはじめ、商品はすべて注文を受けてから調理している。その美味しい料理を、より便利にお客様に提供したい」(山際社長)との思いから、同社はショーケース・ギグとともに、今年1月からスマートフォンを使って商品を事前注文できる「モバイルオーダー」を導入した。その結果、利用者はレジや受取カウンターに並ぶ必要がなくなり、決済までアプリ内で完了しているため、特定の時間に来店して商品を受け取るだけでよくなった。
 そうした事前オーダーの仕組みを店内のキオスク端末にまで広げたのが、今回のオーダーキオスクだ。「お客様が店内の端末から注文すると即座にデジタルサイネージへ情報が飛び、調理が始まる。お客様にはその間、店内でくつろいでお待ちいただける。導入後もお客様のご意見を頂戴してサービスを育てていき、その上で導入箇所を増やしていきたい。それによってベッカーズの良さである『手作りの美味しさ』に、より人手を注力できると考えている」(山際社長)
 なお、JR東日本フードビジネスとショーケース・ギグ、両社の出会いは、ジェイアール東日本スタートアップ(JR東日本スタートアップ)が企画した「JR東日本スタートアッププログラム2018年」にショーケース・ギグが応募し、企業として採択されたこと。その後、2018年10月にはJR東日本スタートアップとショーケース・ギグが資本業務提携を締結している。

新型セルフ端末は「大っきなスマホのようなもの」

 お客が自身のスマホを使って事前注文と決済までを済ませておき、店舗では商品の受け取りだけすればよいモバイルオーダーのようなサービスは「近年、ファストフードやカフェなどの業態を中心に世界中で導入が進んでいる。2013年くらいからはそれと併せてデジタルキオスク端末を導入する動きがアメリカ、中国、ヨーロッパへと広がり出した」と、ショーケース・ギグ・代表取締役社長の新田 剛史氏(写真14)は世界のトレンドを紹介。その背景には、「モバイルオーダーであればすべてをソフトウェア(スマホアプリ)に寄せられるが、お店に初めて来店したり、スマホを使い慣れない方、使わない方のための注文決済手段が他に必要になる」(新田社長)との事情がある。

写真14 Showcase GIG・代表取締役社長 新田 剛史氏

 そもそもこれらのサービスは店舗運営の効率化や省人化を目的に導入されることも多いが、店舗に有人のレジを残してしまえば人手が必要になってしまう。そこで、オーダーキオスクのような端末を併用する発想が出てくる。今回、R・ベッカーズ池袋東口店に導入されたオーダーキオスクは現金に非対応のため、店内に有人の注文カウンターが用意されているが、将来的には現金への対応も視野に入れている。「最終的に(注文と決済が)無人で出来ればスタッフが調理や接客に専念できる。そのためには現金対応が必須」(JR東日本フードビジネスの山際社長)とする。
 ところで、オーダーキオスクの外観や位置付けは、一見すると街中の飲食店などでよく見かける「券売機」と同じに見えなくもない。そうした従来の券売機との違いについて新田社長は、「(オーダーキオスクは)例えるなら大っきなスマホのようなもの。現在、埋め込んであるアプリも、これからどんどん進化させていく」と説明する。実際に端末を操作して注文するとわかるのだが、メニューの表示構成や選択ボタンのデザイン、動かし方などがスマホの操作と酷似していることに気が付く。「従来の券売機だと、タッチパネルになったとしてもどうしてもあの『物理ボタン』を再現しようとしてしまう。抽象的な言い方だが、オーダーキオスクはもっと奥行きのある発想で作られている」(新田社長)
 その点に関しては山際社長も、「(提供できるサービスが進化していく)可能性にかけている。実際に触っていただけるとスマホに近いと感じていただけるだろう。また今回の導入で、モバイルオーダーの利用者も増えていくだろう」と期待を寄せた。
 JR東日本フードビジネスでは今後、オーダーキオスクの現金対応や外国人対応を進めていく。その上で、「東京のオリンピック需要に合わせるために、来年度までには導入店舗を広げていきたい」(山際社長)意向だ。

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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