【バルセロナ発】メッセンジャー事業大手のLINEは、ソニーモバイル、LG電子などと協業し、今夏をめどにクラウドAIプラットフォーム事業へ参入すると発表した。バルセロナで2月27日〜3月2日まで開催されたモバイル通信業界の国際イベント「モバイルワールドコングレス 2017(MWC 2017)」の3日目、3月1日の基調講演に登壇した出澤 剛 代表取締役社長 CEO(写真①)が明らかにした。[2017-03-06]
ソニーと協業し、Xperiaデバイスへの機能搭載も
LINEが提供するクラウドAIプラットフォームは「Clova(クローヴァ)」(写真②)の名称で提供される。ClovaはCloud Virtual Assistantの略で、「ブレイン」(AIエンジン)と「インターフェース」(音声、耳、鼻、目などの知覚をセンシングに活用)の2つの技術要素により構成される(写真③)。ソニーモバイル、LG電子、タカラトミー、vinclu(LINEのグループ会社)などと協業し、当面は日本と韓国の2カ国にていくつかの形態で製品、サービスの提供を計画する(写真④)。
Clovaアプリ(Clova App)(写真⑤)はスマートフォンアプリとして提供される、いわゆるバーチャルアシスタントサービス。利用者がスマートフォンに質問したり、操作の指示を話しかけることで、LINEの各種サービスが利用できる。今年の4月から7月にかけて提供予定。
また、スマートスピーカーの「WAVE」(写真⑥)は今年の初夏から、スマートディスプレイの「FACE」(写真⑦)は今冬を目処にラインアップする。これらはスマートフォンを介さず、独立したデバイスとして音声入力(音声識別)や画像認識などにより利用者の操作を支援する。これらの製品やサービスにはいずれも「Clova inside」(Clova入ってる)の統一ブランドが付く。
ソニーモバイルとの提携では、LINEのClovaとソニーのAI技術とを連携させ、ソニーが「Xperia(エクスペリア)」ブランドで展開するスマートフォンなどのスマートデバイスへ採用する。
「『ポストスマートフォン』、それはAIです」
LINEはなぜAI事業に参入するのか。出澤氏は講演で次のように説明した。
「現在LINEは日本をはじめアジア4カ国で展開しているが、現在ではあらゆるサービスやコンテンツにつながるメッセンジャープラットフォームを提供してきた。そしてわれわれは今、『ポストスマートフォン』を見据えている。『ポストスマートフォン』、それはAIです。モバイルやインターネットが世の中を大きく変えたように、次はAIが世の中を変えていく。スマートフォンを介さないサービスが増え、新しくて大きなエコシステムが登場する。それを担うクラウドAIプラットフォームがClovaです」
しかし、AppleのSiri、AmazonのAlexa、GoogleのOK Googleなど、この領域は世界的なビッグプレーヤーがひしめている。そこへ今なぜLINEが提供するのか。勝算はあるのか。
出澤氏は、「韓国はGoogleが検索でトップを取れなかった数少ない国。高い検索技術を有し、LINEのグループ会社であるNAVERが検索サービスを提供してきた。この成功は、現地の状況や慣習を徹底的に取り入れていたローカル戦略によるもの。(今後AI事業で)ユーザーの生活に溶け込んでいくためには地域のローカル戦略がより重要になる。その意味でも、今回のClovaがLINEとLINEのグループ会社であるNAVER(ネイバー)との共同プロジェクト(写真⑧)であることが極めて重要」と力説し、これまで日本、韓国、台湾、タイ、インドネシアでLINEとNAVERが築き上げてきたドミナントな市場において「アジアをリードするクラウドAIプラットフォームを提供していきたい」と結んだ(写真⑨)。
LINE Payによる電子決済や、デジタルマーケティング分野への取り組みも目立つLINE。AI事業への参入は同社の提供する各種サービスの全体にかかる総合的な施策といえるが、AIと電子決済との連動では果たしてどのような切り口が登場してくるのか、楽しみになってきた。
[2017-03-06]