この7月末、スマートフォンなどのモバイル端末からNFC(TypeA/B)対応の非接触IC決済「Visa payWave」(現在は「Visaのタッチ決済」に改称)が利用できるサービス、「モバイルVisa payWave」が日本国内では相次いで終了することが明らかになった。モバイルNFCは死んだのか? QRコード決済に負けたのか? そんなセンセーショナルな想像をする前に、このニュースの意味をおさらいしておく必要がありそうだ。
■対応カード会社3社すべてがサービスを終了へ
三井住友カードは7月31日、対応するAndroidスマートフォン向けに提供してきた「三井住友カードVisa payWave」(アプリ)のサービスを2018年12月19日で終了すると告知した。本年6月20日付けで新規申込の受付を停止していたが、12月19日以降は店舗での決済を含めてすべてのサービスが利用できなくなる。
同じく、Visa payWaveに対応する「JACCSモバイル決済サービス」を提供してきたジャックスも、同サービスの提供を本年10月31日をもって終了するとアナウンス。こちらもすでに、新規の申込受付を終了している。
スマートフォンなどのモバイル端末から、NFC(TypeA/B)に対応する非接触IC決済「Visa payWave」に対応できるサービスは、日本ではオリエントコーポレーション(オリコ、2013年12月開始)、三井住友カード(2015年2月開始)、ジャックス(2016年4月開始)の3社から提供されていたが、2017年9月でオリコがサービスを終了。今回、残る2社のサービス終了発表により、モバイルVisa payWaveは日本国内で完全に幕を下ろすことになる。
■どうなるVisaのスマホ対応、次の一手は?
ビザ・ワールドワイド・ジャパンの「モバイルVisa payWave」紹介ページを見ると、モバイルVisa payWaveの仕組みとして、そのモバイル決済情報は、
- モバイル端末の埋め込みセキュアエレメント(eSE)に保存される。
- ホストカードエミュレーション(HCE)テクノロジーを使用したクラウド上に保存される。
- SIMカード内のセキュアエレメントに保存される。
- 代替方法として、モバイル端末の背面に金融機関発行のセキュアICチップを埋め込んだステッカーを貼ることで、非接触型決済を利用することも可能。
と4つの実装形態が示されている。
今回、各社が終了するモバイルVisa payWaveは、上記「3」の「SIMカード内のセキュアエレメントに保存される」パターンに当たる。
2018年8月1日現在、日本国内におけるモバイル決済の状況として、「1」の埋め込みセキュアエレメント(eSE)については、フェリカネットワークス社が運営する「おサイフケータイ」、および、Google社が運営する「Google Pay」、そしてApple社が運営する「Apple Pay」の3つがあるが、「Visa」ブランドはそのいずれのサービスにも対応していない※。
この状況に加えて今回、「3」の「SIMカード内のセキュアエレメントに保存される」パターンが終了することにより、今後考えられる選択肢は「2」と「4」の方法に絞られてきたと見えなくもない。
最近、スマートフォン決済をめぐる巷の関心は、NFCからQRコード決済へと完全に移り変わった感があるが、今回の「モバイルVisa payWave」サービス終了のニュースが「NFCがQRコード決済に負けたから」などと安易な意味付けをしていると、真相を見誤ってしまうので注意したい。
世の中を見渡してみれば日本のモバイルNFC環境は、パイオニアのおサイフケータイに加えて、FeliCaにも対応したApple PayやGoogle Payが、衣替えした「新しいスマホ決済サービス」としてユーザーに受け入れられつつある。他方で、手持ちのiPhoneやAndroidなスマホをかざして、「Visa」で支払いたいと思っている消費者はこの日本でも少なくないだろう。
2018年度下期は、Visaブランドとスマホの関係に要注目だ。
※日本国内の対応として。Visaブランドを搭載したカードによる「iD」「QUICPay」など別ブランドでの決済利用を除く。