【LINEカンファレンス(1)】「LINEは本気で日本の決済を変える!」 、非接触IC対応、ポイント3%上乗せ、決済手数料3年間ゼロ円を打ち出したLINE Payの本気度

LINEは6月28日に、千葉県浦安市の舞浜アンフィシアターにて開催した事業戦略説明会「LINE CONFERENCE 2018」の中で、決済・送金サービスであるLINE Payの新しい戦略を発表した。非接触ICサービスであるQUICPayへの対応など、その内容についてはすでにさまざまなメディアで報じられているが、ここでは当日発表を行ったLINE Pay 取締役COOの長福 久弘 氏(写真1)によるプレゼンテーションをほぼ原文のまま紹介する。

■「クレジットカードが50年の歴史をもっても、18%のシェアしか取れていない」

写真1 LINE Pay 取締役COOの長福 久弘 氏

 LINE Payが目指す世界は、「キャッシュレス、ウォレットレス」の実現です。現金、財布がない世界、そんな時代を、この日本という国で実現できるのでしょうか。今まで困難とされてきたこの問題に、われわれなりの解決策を、今日この場で発表したいと思います。

 日本のキャッシュレスの比率が世界と比べて圧倒的に低いことは、よく知られるようになりました。この図(写真2)を見て、本日お集まりの、業界のトップを走る皆様でさえ、「日本て遅れてるよね。現金が強いからね」。と、そんな他人事のように考えていたのではないかと思います。しかし、今日この瞬間から、ぜひ、危機感を持っていただきたい。

写真2 キャッシュレス決済比率の各国比較

 今までたくさんのプレーヤーがこのキャッシュレス化にチャレンジしてきました。しかし、現在、このキャッシュレスの主なプレーヤーであるクレジットカードでさえ、50年の歴史をもっても約18%のシェアしか取れていないのが現状です。その後、FeliCa、2000年代にはSuica、おサイフケータイと革新的なキャッシュレスソリューションがリリースされました(写真3)。Suicaもキャッシュレスの重要なプレーヤーです。今ではさまざまな場所で(Suicaによる)決済ができるようになりました。しかし、そのSuicaでさえ、日本全体の流通額のわずか2%に過ぎないのです。

写真3 日本における電子決済の歴史

 確かに日本という国では、現金は非常に便利です。日本での2017年末の紙幣流通量は約106兆円とされ、今でも前年比で4%の増加をしています(写真4)。日本の現金を支えるインフラは本当に素晴らしいと思います。特に、現金を支えるATMの普及は他の国にはない環境です。都内などでは、コンビニでは24時間、現金を引き出すことができます。こんなに現金に優しい国、現金に恵まれた国は他にはないのです。

写真4 紙幣流通量の推移

■LINE Payの月間流通額は世界4カ国合計で1,300億円規模に
 一方、こちら(写真5)はキャッシュレス先進国である中国都市部でモバイル決済をしたことのある人の割合です。なんと98.3%という驚愕の数字となっております。先程のスライドで中国のキャッシュレス比率は60%との数字がありましたが、中国の人口は約12億となりますので、あらためてその凄さがわかると思います。またこの数字が示す通り、中国では街のいたるところでWeChat Payやアリペイで支払いすることが可能です(写真6)

写真5 中国のモバイル決済利用率

写真6 中国国内のQRコード決済環境

 本当に正確にキャッシュレスが根付いており、大きい店から小さい店までさまざまな業態で、こちら「プリンテッド(Printed)」と呼ばれるQRコードが貼られ、モバイル決済が可能となっております。そして日本にも、数年後にこんな世界がやってくるのです。LINE Payは日本の決済を変え、決済のリーディングカンパニーとなるべく、2014年にサービスをスタートしました。

 われわれLINEでは、決済、そしてユーザーからの送金、その2つの軸でサービスを提供してきました(写真7)。ピア・ツー・ピアと呼ばれる「個人送金」は、LINE Payの中でも今、非常に利用が伸びており、さまざまなポジティブな声を頂いております。そして今年から開始した「請求書支払い」、こちらも日を追うごとにどんどんユーザーが増えております。このような、さまざまな送金サービスを知ってもらい体験してもらうことで、新しいお金の流れを作っていくことをLINEでは目指しています。

写真7 LINE Payの2つの機能

 こちら(写真8)はLINE Payのグローバルの実績になります。LINE Payはグローバルのサービスになっておりますので、LINEが特にアクティブに使われている、日本、台湾、タイ、インドネシアで事業を行っております。グローバルの月間流通額は、先月(2018年5月)時点で約1,300億円(日本円換算)と着実に成長しております。

写真8 グローバルでのLINE Pay月間流通額

 また、こちら(写真9)は日本国内の成長数字になっておりますけれども、昨年対比で送金件数は約2.8倍、決済金額は2.5倍、そしてQR・バーコードの決済に関しましては積極的なプロモーションが功奏し、11倍にまで増えております。この数字は、国内で最も勢いのある決済サービスだと思っております。しかし、これだけの成長ではわれわれは全く満足しません。

写真9 日本国内のLINE Pay実績(前年対比、2018年4月時点)

 私たちが目指しているのは「キャッシュレス、ウォレットレス」世界の実現です。そのために、今の成長ペースでは、この実現は遠い未来になってしまいます。そこで、われわれは決意をしました。私たちは「キャッシュレス、ウォレットレス」実現のために、日本の決済市場を革新的に変えていきたいと思います。

■マクドナルド、松屋、ミニストップなどがLINE Pay導入決定
 われわれの決意、そのキーワードは「ペイメント・レボリューション」、決済革命です(写真10)。決済革命を起こすには、マーチャントとユーザーの双方に革命を起こす必要があります。今日、ここで発表することで、マーチャント、ユーザー双方の課題を解決していきます。

写真10 決済革命はマーチャントとユーザーから

 まずこの革命には、使えるお店が多いこと。これは必須条件です。こちらにある企業(写真11)は、すでにLINE Payでのコード決済を含めたモバイル決済を導入していただいている企業の一覧です。今年に入り、インバウンドの需要であったり、モバイル決済の需要や認知が非常に上がってきたことで、LINE Payの加盟店はこれだけ増えています。

写真11 LINE Payの導入店舗

 また今後、新たにLINE PayのQRコード決済を導入いただく企業を紹介させていただきます。ここに掲載している企業がすでにLINEでの導入を決定している企業です(写真12)。マクドナルドはまずオンライン決済から、そして松屋はLINEPay初の券売機を使ったQRコード決済の導入に対応する予定です。これらについては順次、サービス導入開始を予定しております。また、この他にも現在導入検討中のお客様が多数おりますので、今後の導入リリースをぜひ楽しみにしていただければと思います。

写真12 今後のLINE Pay導入予定店舗

■QUICPayとの提携により目標の100万箇所達成が視野に
 さて、LINE Payのモバイル決済対応箇所「100万箇所」、これはわれわれの目標です(写真13)。(この数字に対しては)関係者を含め、非常に多くの方から「非常に大きな夢を描きましたね」と言われました。誰もがいつでもどこでもLINE Payを使えるために、この100万という数字は絶対に必要なものだと思っています。今までこの100万という数字に対して具体的な戦略については発表してきませんでしたが、今日この場で100万箇所をどのように作っていくかについてお話しさせていただきます。それではまず、重要なパートナーをご紹介させていただきます。

写真13 2018年中に対応店舗を100万箇所とする目標

 対応箇所100万を達成する上で、今回パートナーシップを組むのは、JCBが提供する「QUICPay(クイックペイ)」です(写真14)。QUICPayとLINE Payが連携することにより、Android対応の端末*1を使っているユーザーは、QUICPayに対応する全国72万箇所でLINE Payが使えるようになります。非接触での対応となりますので、LINE Payで、スマホをかざすだけで決済ができるようになります。

*編集注1:iPhone(Apple Pay)対応については、ユーザーの声を聞きながら引き続き検討中とのこと。

写真14 72万箇所の加盟店を有するQUICPayと提携

 またこのパートナーシップにより、今まで提供してきたLINEPayカード決済、そしてQR・バーコードを使ったコード決済、さらにこれに加えて秋からは非接触の決済方法にも対応することになります(写真15)。この非接触対応により、ユーザーの皆さんにとってはLINE Payでの支払い方法の幅が飛躍的に広がり、その利便性も格段に向上すると思います。

写真15 カード、QR・バーコードに加えてNFC(非接触IC)に対応

■中小事業者向けに無料の店舗アプリ提供、決済手数料も3年間無料に
 しかし、これではまだ「革命が起きた」とは言えません。
 日本国内にある企業の90%以上がSMB、スモール&ミディアムビジネス。つまり、中小規模の事業者であると言われています。このSMBと言われているショップがキャッシュレス化をしない限り、本当のキャッシュレス化は実現しないと、われわれは考えております。リ・デザイン、SMBペイメント。われわれはSMBのペイメントを「リ・デザイン(Redesign)*2」していきます。

*編集注2:「LINE CONFERENCE 2018」を貫く全体テーマが「Redesign」であり、これを踏襲している。

「リ・デザイン・インフラストラクチャー」。これは、先ほど中国マーケットの資料であったように、社会の構造それ自体をリ・デザインしていきたい。この「構造」を変える作業が、革命を起こす上では不可欠であるとわれわれは強く思っております。
 今までSMBと言われている小さなショップでキャッシュレス化が進まなかった大きな要因は2つあると考えています。1つは、決済を導入する際の初期投資費用。もう1つが決済手数料です。この2つが大きなネックになってきました。ですので、われわれはこの2つの課題に対して革命を起こしたいと思います(写真16)

写真16 SMB決済の課題

 まず、店舗の初期投資費用をゼロにして、決済を手軽に導入し始められるようにしていきます(写真17)。そしてもう1つの大きな課題である決済手数料、この部分に対しても強力に革命を起こしたいと思います。われわれはSMB向けの決済手数料を3年間無料*3、つまり「0%」にしていきます(写真18)

*編集注3:無料適用を開始する8月1日までに、3年後の決済手数料率などを含めた詳細を発表予定とのこと。

 具体的な提供方法について説明していきます。われわれLINE Payはスマートフォン決済アプリとして「LINE Pay店舗用アプリ」をリリースします。この店舗用アプリは、オーナー様のスマートフォンにダウンロードし、申請をするだけでLINE Payのコード決済が可能になります。

写真17 初期導入費用をゼロ円に

写真18 決済手数料を3年間、ゼロパーセントに

■メッセージ機能により「買い物客」に販促メッセージが送れる
 また、このアプリには決済機能に加えてメッセージ機能も実装されており、決済をしたユーザーのLINEアカウントに対してショップから販促メッセージを送ることが可能になります(写真19)。このアプリはまさに、「決済コミュニケーションアプリ」となっております。この決済コミュニケーションの機能はLINE Payの最大の強みと考えており、LINE Payを中心としてショップとユーザーの間に「決済エコシステム」を作っていきたいと思います。

写真19 加盟店用スマホアプリ

 決済をする、そして友達として、売り手とユーザーがつながる。そして売り手からユーザーに対して販促メッセージなどを送っていただき、そのメッセージを見たユーザーがさらにショップへ行って買い物してもらう(写真20)。そんなサイクルを、われわれは作り出したいと思っています。

写真20 メッセージ機能を活用した「決済エコシステム」の提供を目指す

 この店舗用アプリはフリーダウンロードですので、初期費用は無料です。そして、このアプリ経由の決済のみ、決済手数料を3年間「0%」とさせていただきます。決済手数料の無料に関しては再来月の8月1日より適用を予定しています(写真21)。ただ、このアプリは本日よりダウンロード開始となっておりますので、ぜひダウンロードしていただければと思います。

写真21 決済手数料の3年間無料は、今年8月1日から2021年7月31日まで適用

 これで今日から誰でも現在持っているスマートフォンだけで、LINE PayのQRコード決済が始められるようになりました。この店舗アプリのリリースにより、店舗のLINEPay導入デバイスの選択は非常に広がりました。今までもそうだったんですが、大手企業様向けのLINE Pay導入では、POSの改修というものが必要でした。POSの改修コストが非常にネックになるので、中規模の企業に関しては、スライド(写真22)の真ん中にあります専用端末を導入するだけで、簡単にLINE Pay決済を導入するような形とし、課題を解決してきました。そして先ほどご紹介しました、店舗用アプリのリリースが、国内の90%以上を占めるSMBの皆様に、手軽に、簡単にお使いいただけるソリューションとなります。

写真22 LINE Pay対応環境(決済端末)の店舗規模別ラインアップ

■SMB支援に向けクラウド会計のフリーと提携
 これらを以てわれわれは100万箇所、そしてそれ以上に使えるお店を増やしていきます。また先ほども申し上げているように、キャッシュレスの鍵はSMBのキャッシュレス導入と考えております。国内の90%以上を占めるSMBの皆様に、手軽に、簡単に、お使いいただけるソリューションとなっております。

 さらにLINEでは、キャッシュレスに付随したSMB企業の業務や生産性における課題解決に注力していきます。そのためにここで新たなSMB向けのサービスに関し、戦略的なパートナーをご紹介したい。LINE Payは会計クラウドシステムのフリー(freee)社と業務提携を行います(写真23)。SMBの課題解決のためにさまざまな提携を図っていく予定です。
 私たちはこれらの取り組みにより、これまで決済を導入すること、イコール、コストと思われていた部分を、店舗にとって絶対的に必要なアセット、資産に変えていきたいと思います。

写真23 クラウド会計のfreeeとの提携を発表

■QRコード決済利用で、3%のポイント上乗せ付与
 そして、われわれの決済革命はまだ終わりません。最初にお伝えしたように、決済革命を起こすにはマーチャントとユーザー双方のベネフィットが重要です。日本の「キャッシュレス、ウォレットレス」を実現するためには、お店側だけではなくユーザーの皆さんにもベネフィットがなければ進みません。

 そこで、まずはQR・バーコード決済市場を皆さんで盛り上げていただくために、今月から開始したLINE Payのインセンティブプログラム「マイカラー制度」をアップデートします。「マイカラー制度」はLINE Payの利用度合いに応じてインセンティブを付与する仕組みとなっており、LINE Payのアクティブ度合いによって変動します(写真24)。今回、多くの皆様からご意見を頂きまして、この中の仕組みを一部、アップデートすることを決定いたしました。

写真24 今年6月に開始したマイカラー制度によるポイント付与率(4区分)

 まず、皆様から一番ご要望の多かった10万円の(ポイント付与の対象となる)金額上限、これを完全撤廃いたします。さらに今後も、ユーザーの皆さんの声を聞きながらこのプログラムをより良いものにしていきたいと思います。

 そしてまさに革新的、かつ、積極的にユーザーの皆様へベネフィットを提供していきます。LINEでのモバイル決済をさらに推進していくために、ユーザーのQRコード決済の利用を後押ししていきます。全面的、かつ、強力に優遇していきます。
 8月からの1年間、QRコード決済に対して、マイカラーで提供しているポイント付与に、さらに3%を上乗せさせていただきます。これにより(マイカラーで)現在「グリーン(還元率2%)」をお持ちのユーザーは、QRコード決済の利用で最大5%のポイントを毎回受けることができるようになります。これまでよりポイント付与率がゼロだった「ホワイト」のユーザーも、QRコード決済の使用なら3%のポイントが付与されるようになります。この施策も再来月の8月から1年間、実施をいたします(写真25)

写真25 QR・バーコード決済の利用に限り、3%をポイント上乗せ

 LINE Payは今後、QRコード決済を積極的に推進していきます。LINEでは今年中に100万箇所で使えるように、非接触の決済にも対応します。そして初期費用無料、決済手数料を3年間0%とする、店舗用アプリをリリースしていきます。このアプリリリースによりSMBのキャッシュレスは積極的にプッシュされるものと思っております。
 さらにマイカラーの通常インセンティブに加えて、QRコード決済のみ3%のポイントを付与し、ユーザーをアクティブにしていきます。これによりマーチャントとユーザー、それぞれの課題は限りなくゼロに近づいたと思っております(写真26)

写真26 発表内容のまとめ

 以上が、LINEのペイメント・レボリューション、決済革命の全容になります(写真27)。皆様、「LINEは本気で決済を変える」という意気込み感じていただけましたでしょうか。
 LINEはキャッシュレス、ウォレットレスの実現を本気で目指します。いつでも、どこでも、誰とでも、LINEのみで決済・送金が可能な新しいお金の流れを作っていきます。
 これからのLINE Payにぜひ、ご期待ください。本日はご静聴、まことにありがとうございました。

写真27 LINE Payはペイメントレボリューションを目指す

 

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。