管理職を全廃しました
社員全員が自走する「ティール型組織」
著者:柴田 紳
判型/造本:46並
頁数:264
定価:1980円(本体1800円+税10%)
発行年月:2025年11月
発行:ダイヤモンド社
ISBN:9784478122051
そんなうまい話があるのだろうか? その答えは本書の中に
日本発祥で、世界に広がるBNPL(Buy Now, Pay Later)事業者の草分け的存在でもあるネットプロテクションズの社長を務める柴田 紳氏による著作である。ただし、日本では「後払い」とも表現されるBNPLビジネスのことをひとつ勉強してみるか、と本書を手に取ることはお勧めしない。(そういう方には、例えば「BNPL後払い決済の最前線:急成長する市場と日本・世界の先進事例50 – 著・安留 義孝」などが参考になる)
代わりに本書で語られているのは、2000年創業(柴田氏は2001年11月から経営に参画)のネットプロテクションズが2012年頃から2020年頃までという長い検討期間を経てたどり着いた新しい組織のあり方である。その最大の特徴は「管理職を全廃」してしまったこと。「管理職を全廃」して本当に営利企業が回るのか。それでちゃんと事業は成長するのか。「そんなうまい話はないだろう」。半信半疑の読者は少なくないのではないか。
本書には、リーダーがおらず、働く人たちの全員が自ら意思決定しながら行動していく組織モデルとして、マッキンゼー出身のフレデリック・ラルー氏が提唱した「ティール組織」の存在が紹介されている。しかし、柴田氏は最初からこの概念を知っていて同社の組織のあり方を変貌させたわけでなく、2002年3月に「たった4〜5カ月で立ち上げた」(本書より)NP後払いの事業が安定して運営され、今後も成長し続けていくために、組織上の課題解決を模索した末に行き着いたのが「管理職を全廃」するという決断だったという。そのため柴田氏は、ネットプロテクションズの組織モデルを「ティール組織」とは呼ばず、「ティール【型】組織」と呼ぶ。
「管理職を全廃」した後の実際の組織運営についても多くの紙幅を割いて解説されている。とりわけ「Natura」と命名された人事評価制度と、「カタリスト」と呼ばれるポジションの設置が異彩を放つが、管理職なしに組織が回るための仕組みとして構築されたもの(マネージャー職もないが、部署は存在する)。カタリストは情報や人材、予算の割り振りなどを采配するが、権限はチーム全員に委譲するので、チーム全体のサポーター役のような役割を担うという。
また、職務や給与(年収)と連動した6段階の「バンド制」もユニークな制度だろう。文字通り、幅(バンド)を持たせたグレードのうち、いま誰がどのバンドにいるかも社員に公開されているそうで、これにシニア、同僚、後輩から満遍なく評価を受ける「360度評価」が組み合わさることで透明性と信頼性を高めている。
素晴らしいのはこれだけ社員に自由度を持たせた職場環境を実現しながら、BNPL事業の成長を維持できているところだろう。「ティール型組織だからこそ高い成長が可能になっている」(本書より)
その組織運営の実態や、「ティール型組織」に至るまでの柴田氏の苦労話の数々を知りたい方にも本書をお勧めする。また本書の後半には、「ティール型組織」に対するQ&A形式の読みやすい解説や、実際に同社で働く「社員」たちのインタビューもあり、社員の側から見たユニークな組織での日常を実感できるようにもなっている。
柴田氏は本書の巻末に、現在の組織が「案外『昭和』的かも?」との感想を漏らしているが、いやいや「私があれこれ指示を出さなくても、各事業、各部署が自律的に、つまり勝手に動いていき(中略)その上、レベルは年々高くなっています。」(本書より)なんて高度な事業運営は、まさに『令和』的組織のど真ん中にあるとしか思えないのである。
