【端末写真あり】米・ファイサーブが決済端末で日本市場進出、提携する三井住友カードはTrunkとセットで中小企業への導入働きかけ

金融・決済事業のプロバイダー大手である米・ファイサーブが日本市場に進出する。三井住友カードと提携し、日本で初めて決済端末ソリューションの「Clover(クローバー)」を中小企業向けに展開。三井住友カードは法人口座を核とするB2B向けサービスの「Trunk(トランク)と組み合わせ、今後5年間で25万台の設置を目標に掲げる。

米・ファイサーブは12カ国で決済端末を展開

 三井住友カードは1月21日、米・Fiserv, Inc.(以下「ファイサーブ」)と日本の中小事業者市場における戦略的業務提携に基本合意したことを発表した。同日、三井住友カードとファイサーブに、ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)を交えた3社が東京都内で記者発表会を行い、提携の意義を説明した(写真1)

写真1 左から、三井住友カード 代表取締役 社長執行役員 CEOの大西 幸彦氏、ファイサーブ CEOのマイク・ライオンズ氏、ビザ・ワールドワイド・ジャパン 代表取締役社長のシータン・キトニー氏

 米国企業のファイサーブは、アメリカをはじめオーストラリア、ブラジル、カナダ、ドイツなど世界100カ国以上で事業展開する金融・決済事業のプロバイダーで、600万以上の加盟店にサービス提供している(画面1)。ピーク時には「1秒間に2万5,000件を超える取引処理能力を有し、米国処理市場でのシェアは40%を超える」(ファイサーブ CEOのマイク・ライオンズ氏/写真2

画面1 (出典:「【三井住友カード/Fiserv/Visa】新たなキャッシュレス&店舗DXに関する戦略提携発表会」発表資料より)

写真2 ファイサーブ CEOのマイク・ライオンズ氏は「日本市場に参入するタイミングとパートナーを得た。日本のキャッシュレス比率60%という目標に向けて貢献できる」と期待を込めた

 中小企業向けの決済端末提供では「Clover(クローバー)」のブランド名を冠したサービスを世界12カ国で展開する(画面2)。売りは、単なる決済端末の機能にとどまらず、1台のハードウェアを介して飲食店や小売業、サービス業といったさまざまな業種ごとに必要となる店舗関連のサービスを統合して提供するところで、「金融から小売業などまでカバーする当社の『統合力』に、競争力がある」(ライオンズ氏)

画面2 (出典:「【三井住友カード/Fiserv/Visa】新たなキャッシュレス&店舗DXに関する戦略提携発表会」発表資料より)

 ハードウェアとなる端末は写真3〜写真6の通りで、日本では今年10月からの提供を予定する。メニューの日本語化をはじめとしたローカライズは三井住友カードが担当するが、提供形態や、提供後の端末の保守、サポート体制などは現在、両社で協議を行っている最中だという。

写真3 据置型

写真4 モバイル型

写真5 デスクトップ型

写真6 キオスク型

 また、写真のように、海外ではディスプレイサイズの大小によるバリエーションのほか、タブレット、プリンターなどが接続されたタイプや、キオスク端末タイプなども提供されているが、日本での提供形態はあらためて発表する。ただし、「複数の機種をラインアップする予定」(三井住友カード・代表取締役 社長執行役員 CEOの大西 幸彦氏/写真7)とのことだ。

写真7 三井住友カード 代表取締役 社長執行役員 CEOの大西 幸彦氏。「来年度から当社と三井住友銀行が一緒になってSME(中小企業)向けの取り組みをより強化していく。TrunkにあわせてCloverも展開していきたい」

狙うは中小企業の店舗DX化、stera端末との棲み分けは?

 三井住友カードの大西社長は、ファイサーブの「Clover」を日本市場へ投入する意義として、近年急激に高まっている店舗オペレーションのDX化ニーズを挙げる。
「近年、決済端末の高機能化とあわせてタブレットを活用したPOSレジサービスが普及しており、店舗周りのDX環境が出来てきているが、一方でいろいろなツールを複数導入した結果、管理が煩雑になったとの声も聞こえてきている。決済だけでなく、予約、注文、在庫管理などの店舗管理を集約したトータルソリューションサービスが求められている(画面3)」(大西社長)

画面3 (出典:「【三井住友カード/Fiserv/Visa】新たなキャッシュレス&店舗DXに関する戦略提携発表会」発表資料より)

 三井住友カードは中小企業向けの取り組みとして、SMBCグループの三井住友銀行と共同で法人口座を中核としたB2B向けサービス「Trunk(トランク)を2025年5月から提供している。獲得した法人口座数は昨年12月時点で3万口座を超えたが、このTrunkをCloverと連携させることで中小企業への売り込みを加速させる(画面4)。「TrunkとCloverの連携は、金融決済と加盟店POSの完全な融合を意味するのではないか」(大西社長)
 Cloverでは5年間で25万台の設置を目標に掲げる。

画面4 (出典:「【三井住友カード/Fiserv/Visa】新たなキャッシュレス&店舗DXに関する戦略提携発表会」発表資料より)

 ところで三井住友カードが推進する決済端末といえば、「stera(ステラ)」シリーズがある。そのsteraは2025年12月時点で47万台が設置されている(画面5)。Cloverの追加投入により、今後、同社では両端末をどのように拡販していくのだろうか。

画面5 (出典:「【三井住友カード/Fiserv/Visa】新たなキャッシュレス&店舗DXに関する戦略提携発表会」発表資料より)

 大西社長は「中規模以降の店舗のお客様、特に自社でPOS等をお持ちのお客様向けにはそれとのつなぎもフレキシブルに出来るsteraをさらに広げていきたい。一方でファイサーブとの提携はサービスの中身に尽きると言ってよく、SaaS的なソフトの充実が非常に大きい。当社がさまざまな業種ごとにすべてのサービスを作っていくのは時間もコストもかかる(ので提携を判断した)」と説明した。
 ちなみに少しややこしい話だが、Cloverの決済端末でも決済ネットワークとしては、三井住友カードとGMOペイメントゲートウェイ、ビザ・ワールドワイド・ジャパン(写真8)の3社が共同で構築したstera(ネットワーク名)を使用する。一方、その逆に相当するような、steraの対応端末上にCloverのアプリケーションやサービスを載せて利用することはできない。「Cloverはハードウェアが一体になっているのが特長なので、お客様がCloverの機能を使われたい場合には(決済端末も)Cloverに切り替えてお使いいただくことになる」(三井住友カード・マーチャントビジネス統括部 部長の谷川 真一氏/写真9)とのことだ。

写真8 ビザ・ワールドワイド・ジャパン 代表取締役社長のシータン・キトニー氏。「今回の両社によるパートナーシップをお祝い申し上げる。これこそ、日本のキャッシュレス市場が目指すべき次なる成長段階に向けて、求められているエコシステムだ」

写真9 三井住友カード マーチャントビジネス統括部 部長の谷川 真一氏

予約、注文、在庫管理までを1台の決済端末で

 Cloverの特長をもう少し見ていこう。谷川氏は端末1台ですべて完結する「オールインワン」であること(画面6)、そして拡張性の2つを挙げた。
 「これまでで分断されてた決済の機能をsteraにより統一してきたが、(決済に限らずに)『店舗業務』という幅広い視点で見ると、まだまだ分断されている。そうした機能追加は後から導入していくことになるので、それぞれ別々のIDで、異なるシステムを管理していくことになるが、うまく活用しきれなくて困っているとのお声を聞く」(谷川氏)とのコメントからは、タブレットや端末などさまざま並んだお店の風景を想像すれば至極もっともな課題に思える。

画面6 (出典:「【三井住友カード/Fiserv/Visa】新たなキャッシュレス&店舗DXに関する戦略提携発表会」発表資料より)

 さらに、「タブレットと決済端末を連動して使っていると、故障の際にどちらが壊れたのかわからない。Cloverは1台の筐体にすべてが備わっており、IDも1つで管理できる。これが既存のサービスと異なっている点」(谷川氏)という。
 もう1つの特長である拡張性については、お店の業種や規模によって異なる機能やサービスへのニーズに対して、Cloverでは「アプリマーケット」を通じて容易に機能を追加していける点を挙げた。
 「日本でPOSは完成品のイメージが強く、ずっと使い続けるものというのが常識だった。しかし、Cloverではお店の成長とともに歩んでいける(画面7)」(谷川氏)
 Cloverの販売形態や提供費用などの詳細は、決まり次第あらためて発表される予定だ。

画面7 (出典:「【三井住友カード/Fiserv/Visa】新たなキャッシュレス&店舗DXに関する戦略提携発表会」発表資料より)

 

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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