初の10万ドル突破で話題を集めるビットコインをはじめとして、暗号資産の動向が再び世間の耳目を集めている。「メルカリアプリ」と一体化した暗号資産取引サービスを提供するメルカリでは、このタイミングで新たに「暗号資産を保有するだけで毎月、自動でポイントが貰える」サービスの提供を開始した。自社ユーザーを暗号資産取引の利用に向けて活発に誘うメルカリの狙いはどこにあるのだろうか。
対象はイーサリアムのみ。毎月自動付与のポイント年率は3.0%
メルカリの子会社で、暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発を行うメルコインは12月18日、メルカリ内で暗号資産のイーサリアムを保有すると、毎月メルカリポイントが付与されるサービスの提供を開始した(写真1)。同日から段階的に開放され、今後1週間程度ですべての利用者がサービスを受けられるようになる。18歳未満、ならびに75歳以上の利用者と、日本の非居住者は利用できない。
付与されるポイントは、メルカリでの買い物や、メルカリ外での「メルペイ・メルカード」の利用や清算への充当、暗号資産の購入への使用など、メルカリグループ内の各サービスに「1ポイント=1円」で利用できる。有効期限は180日間。
イーサリアムの保有数にあわせて毎月付与されるポイントの年率は3.0%(2024年12月18日時点)で、12月の保有分から対象になる(画面1)。来年1月に最初のポイントが付与され、以降は前月分の保有数を対象に算出し、毎月初6営業日までにポイント付与されるスケジュールとなる。なお、ポイント付与の年率は同社の決定により毎月変更される可能性があり、一定の年率を保証するものではない。
同サービスの提供に伴い、メルコインはイーサリアムの「ステーキング」を開始する。ステーキングは暗号資産を保有する対価として報酬を受け取ることができる仕組みで、利用者が保有するイーサリアムに対する報酬をメルコインが受け取る。メルコインはこの報酬を直接、ポイントの原資に充てるわけではなく、「(当社の)利益分にはなるが、ロイヤルティプログラムとして全体のユニットエコノミクスを計算してポイント還元の年率を算出している」(メルコイン・代表取締役CEOの中村 奎太氏/写真2)という。
「売上金」を寝かせても価値は増えないが、「暗号資産」にすればポイントが貯まる
メルコインでは2023年3月に暗号資産取引サービスの提供を開始。そこからの1年9カ月で利用者を300万の大台に乗せた。特に暗号資産のビットコインは、トランプ次期米大統領が推したことなども受けて過去最高の10万ドル台に達するなど、再び注目度が高まっている。
「暗号資産取引サービスを開始する前のアンケートで『暗号資産を購入してみても良い』と答えたユーザーは11%だった。メルカリのアクティブユーザーは約2,500万なので、200万くらいには使ってもらえるだろうと想定していた。しかし、それよりも早いタイミングで300万を達成していることから見て、われわれの想定以外の、より一般の人たちも参加してくれているのではないかと感じている」(中村氏)
新たに始める自動ポイント付与サービスの対象となるイーサリアムは、メルコインでもビットコインに続いて2番目に取扱を始めた暗号資産だが、「量としてはイーサリアムが追いかける状況で、徐々に貯まってきているが、日によってはビットコインを超えることもある。メルカリの売上金をそのまま寝かせていても価値は増えないが、暗号資産にしておけばポイントが貯まる分だけメリットになる。(今回の施策で)イーサリアム保有者が明確に増えると思っている」(中村氏)
新サービスに関して、将来的にはビットコインへの自動ポイント付与についても実現していきたい意向だ。中村氏は「ビットコインでもステーキングできる仕組みが出てきている。収益性のところで出せるポイントの上限値なども踏まえて、時代の流れや状況を見ながら検討していきたい」と話している。