【記者が体験】SAKULaLaの手ぶら決済を東武ストアで初体験、クレカを持たずにクレカ決済が可能に

東武鉄道と日立製作所は、今年4月から一部で提供開始した生体認証サービス「SAKULaLa(サクララ)」を9月以降、本格展開へと移行した。コンビニエンスストアや家電量販店、ショッピングモール、東京スカイツリー、鉄道などさまざまな業種で本格展開し、全国の100カ所以上に順次導入していく予定だが、東武グループの食品スーパーマーケットである東武ストアの一部店舗でも、9月以降に対応店舗が広がり始めた。あらかじめ指の静脈情報を登録しておくことで、決済やポイント獲得などを手ぶらで利用できるというSAKULaLaサービスを記者がさっそく体験してみた。

TOBU POINTとの情報連携でスムーズな会員登録

 WebページからSAKULaLaに会員登録する方法は、大きく分けて2つある。1つはSAKULaLaと提携している既存の会員ID(東武鉄道が提供する「TOBU POINT」など)を用いて新規登録する方法で、もう1つは純粋にSAKULaLaへ新規登録する方法。後者の場合には、メールアドレスと携帯電話を使用して登録を行う。
 記者は元々TOBU POINTユーザーだったので、SAKULaLaや、TOBU POINTとの連携に関する各種サービス利用規約に同意した上で、TOBU POINTの会員IDとして登録済みのメールアドレスとパスワードでログインした(画面1)。すると、直後に表示されたSAKULaLa登録画面で、入力項目のうちの氏名、生年月日、性別、住所に加えてTOBU POINTアプリの会員番号が自動的に引き継がれて表示された。ここでかなり入力の手間が省けた印象だ(画面2)

画面1 TOBU POINTの会員登録情報をSAKULaLaの会員情報に連携させる

画面2 氏名や生年月日などの基本情報が自動で転記された

 さらに必要なメールアドレスや携帯電話番号、SAKULaLaログイン用のパスワードなどを決めて入力すると、登録確認画面が表示されて、登録が完了する。なお、この際の登録確認画面でも先述した、TOBU POINTからSAKULaLa会員登録への個人情報の引き継ぎがアイコンでグラフィカルに表示されており、情報連携の状況がわかりやすいと感じた(画面3)

画面3 情報を連携した項目の右横にTOBU POINTのアイコンが示されている

 これで会員登録完了!と思いきや、携帯電話発信による2要素認証が求められる。ここでは先ほど入力した自身の携帯電話番号から指定された電話番号へ通話発信することで、認証が完了する仕組みだった(画面4)

画面4 携帯電話番号認証を用いた2要素認証が実施される

 今度こそ会員登録完了!と思いきや、再び次の画面でパスコード認証を求められた。先ほど入力した自身のメールアドレス宛てにパスコードが届くので、これを受信して入力することで、ついに、本登録が完了する。手間は多いものの、個人情報を提供して利用するサービスだけに、安心感につながる手順といえそうだ。

クレジットカード登録時は3-Dセキュア対応

 SAKULaLa会員の登録作業はここで終えてもまったく問題ないのだが、今回の目的は、お店で指をかざすだけで決済まで完結できる「手ぶらでの決済」なので、ここで先回りして決済に使用するクレジットカードの登録も済ませておくことにした。会員メニューの一番下に配置されている「決済方法一覧」から「クレジットカード」の登録ボタンを押して、クレジットカードの情報を登録していく(画面5)。カード番号や有効期限など必要な情報を入力していくと、途中で本人認証サービスである3-Dセキュアの画面が立ち上がるので、手順に沿って進んでいくだけでクレジットカードも簡単に登録できた。

画面5 連携可能なID情報として、TOBU POINT以外に「キリンID」が対象になっている

 ここまでがいわば事前準備。記者の場合にはここまで済ませた状態で、いよいよSAKULaLa対応店舗の1つである東武ストアへと足を運んだ。しかし、喜び勇んでさっそくレジへ向かうのは禁物。なぜなら、「手ぶらでの決済」を利用するためにはまだ必要な登録があるからである。最も肝心な、生体情報の登録をお店で済ませる必要がある。

対面での本人確認により年齢認証もスキップ

 よく晴れた10月のある日、折しも10月1日からSAKULaLaに対応した東京・板橋の東武ストア前野町店(写真1)の前に記者は立っていた。開始を記念したキャンペーンが実施されており、お店の内外にはポスターや配布ちらしなどが大々的に張り出されていた(写真2)

写真1 手ぶら決済の初体験日は晴天に恵まれた

写真2 お店の入口にさっそく目立つポスターが。最大5,000ポイント還元の大盤振る舞いが来店者の注目を集めていた

 SAKULaLa登録により、ボーナスポイントが貰えるキャンペーンの呼び込み効果もあり、店内に用意されたSAKULaLaの申し込み特設カウンターには、時間帯によっては行列が出来ていた。そこで記者もこのカウンターに、スマホの登録画面を提示しつつ、生体情報の登録希望を申し出てみた。
 カウンターに座ると、担当者があらためて記者のSAKULaLa登録画面を確認してくれて、そこから登録作業へと移っていった。本人確認資料として、運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカードのいずれかの提示が求められたので、記者は運転免許証を提示した。運転免許証は特設の読み取り機により真正確認がされていた。
 次に、担当者の誘導により生体情報の登録へと進む。生体情報として指の静脈情報を使用するとのことで、別の読取装置のセンサー部分に人差し指、中指、薬指の指3本を乗せるように指示があった(写真3)。この「指3本乗せ」が記者は初めての体験だったので、話を聞くと、指3本にして認証することで、より認証精度を高くしているという説明だった。なるほど。

写真3 まずは左手の指から登録開始。押し付けず、自然に指を乗せる感じがよいらしい

 左手(指)の登録が終わると、ちゃんと登録されているかの検証のために、もう一度指を読取装置に乗せて、読み取りのテストが行われた。ランプが光って読み取りは無事に成功。次に、両手の指をそれぞれ登録するので、今度は右手を読取装置に乗せるように促された。こちらもテストを含めて、2回の読み取りが行われた。
 ここまで終わると、登録作業はこれですべて完了とのこと。念のため、記者のSAKULaLaのマイページ画面を開いてみると、登録情報のうち、氏名(漢字)、生年月日、住所、そして生体認証の欄の脇に「対面で身分証を用いて確認済み」のアイコンが表示されるように変わっていた(画面6、7)。生年月日の確認が済んでいるため、タバコやお酒を購入する際の年齢確認はスキップできる旨の記載がされていた。

画面6 この時点でマイページから会員情報を確認すると、氏名、生年月日、住所の欄に本人確認のアイコンが追記されていた

画面7 生体認証の項目にも、本人確認済みのアイコンが付記された

生体認証は「会計開始時」と「決済時」の2回

 さて、はやる気持ちを抑えつつ、店内で商品を選んだらいよいよレジへ。SAKULaLaは有人レジには対応していないとの注意書きがあったので、フルセルフレジへ向かう(写真4)。タッチパネルを押してセルフレジをスタートさせると、いきなり生体認証の利用有無を聞かれる画面が表示された(写真5)。ここで生体認証の利用を選択すると、VポイントとVマネーは利用できない注意書きも付記されていた。これはおそらく、SAKULaLaとVポイントが現時点では未連携だからだろう。

写真4 セルフレジの待ち受け画面は、手ぶら決済対応を示すスペシャル画面に

写真5 いきなり最初に、生体認証を利用するかどうか尋ねられる

 生体認証の利用有りを選択すると、さっそく指静脈の提示が求められる(写真6)。画面のガイドに沿って先ほどの登録時の要領で指3本をPOS画面下の読取装置にやんわりと乗せる(写真7)。画面に「会員情報取得中」と表示される中、ブルーのLEDが点滅して体感では5秒ほどで認証は完了した(写真8)

写真6 画面下の読取装置に指をかざすように指示される

写真7 生体認証装置の上部先端が、ブルーに光ると認証が完了する

写真8 サーバーに会員情報を取りに行っているとの表示

 その後、通常のセルフレジの操作で、購入したい商品をスキャンしてPOSに読み取らせていく。この時点で画面の右上には記者が保有しているTOBU POINTのポイント数が表示されており、会員認証が正常に行われたことが確認できる(写真9)

写真9 一般的なフルセルフレジの操作と同様に商品をスキャンしていく

 商品スキャンがすべて終わったら「お会計」ボタンへ。支払方法の選択画面が表示される(写真10)。SAKULaLaの手ぶら決済を選ぶには、「現金」ボタンの右横にある「クレジット・手ぶら決済」のボタンをタッチする。すると、ここで再び選択の画面が(写真11)。あらかじめ生体情報に紐付け登録しておいたクレジットカード以外のカードを使用したい場合は、画面左の「お手持ちのクレジット」ボタンを選んで操作を進めればよい。一方、記者のように「手ぶら決済」をしたい人は迷わず右側のボタン「生体認証のクレジット」を選択する必要がある。

写真10 支払方法の選択画面。けっこう選択肢が多い印象だ

画面11 支払方法に「クレジット・手ぶら決済」を選ぶと、生体認証に紐付け登録したクレジットカードか、あるいは別のカードを使用するかどうかを聞かれる

 「生体認証のクレジット」を選ぶと、今回の支払いに使用したいクレジットカードを尋ねる画面が表示される(写真12)。記者は1種類しか登録していなかったので選択の余地はないが、複数のクレジットカードを買い物ごとに使い分けたり、将来は決済手段が増えたりすることを想定した画面構成なのではないかと想像した。今回は迷わず登録しておいたカードを選ぶ。

写真12 「生体認証決済」を選ぶと、あらかじめ生体認証と紐付けたクレジットカードが表示される。複数枚を登録している場合、この画面で選べるようだ

 と、ここで本日2回目(登録時を含めて通算6回目)の指静脈認証へ(写真13)。この手順にもだいぶ慣れてきた記者とあって、スムーズに決済を完了できた(写真14、15)。発行された紙のレシートを後で確認すると、決済手段の欄には「生体認証クレジット」、利用したクレジットカードの伝票もしっかりと記載がされていた(写真16)
 当日の空模様と同様、実に晴々とした気持ちで、ミッション・コンプリートに浸る記者であった。

写真13 セルフレジでは本日2度目に遭遇するこの画面。再び読取装置に指をかざすように誘導される

写真14 生体認証中の画面。一瞬とはいかず、数秒かかる

写真15 支払完了を示す画面。同時にプリンタからレシートが発行される

写真16 レシートに決済方法欄には「生体認証クレジット」の記載がある。レシートの下段には通常クレジットカード決済をした場合と同じようなフォーマットでカード決済の情報が記載されていた

顔認証にも対応し、ファミマや鉄道改札への導入にらむ

 SAKULaLaのサービスを共同で展開している東武鉄道と日立製作所では2024年9月3日付けのプレスリリースで、今後はさらに、ジェーシービー、DGフィナンシャルテクノロジー、博報堂を協力パートナーとして本サービスの普及拡大に向けた検討を行っていく、としている。国内の主要なポイントサービスにも対応する計画で、利用者が手ぶらでさまざまなポイントを獲得できるようになることを目指しているという。
 導入先の拡大についても、2025年度に上新電機の大阪2店舗と東武東上線の座席指定制列車「TJライナー」、2026年度にはファミリーマートにて導入を開始予定とうたう。あわせて2025年度には、指静脈認証に加えて顔認証にも対応し、将来的には鉄道改札への導入などさまざまな利用場所を検討していくというから、今回記者が登録を済ませた「手ぶら認証」を利用できる場所や、クレジットカード以外に利用できる決済手段が、追ってどんどん広がっていくことに大いに期待したい。

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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