ネットスターズが東証新規上場、コード決済GWのパイオニアの強みは「クラウドネイティブ」の技術力

決済ゲートウェイ事業を展開するネットスターズは9月26日、東京証券取引所グロース市場に新規上場した(証券コード:5590)。公開価格の1,450円に対し、上場後の初値は1,334円。当日の午後には代表取締役CEOの李 剛氏、取締役COOの長福 久弘氏、取締役CFOの安達 源氏が登壇して記者会見が行われた。

国内の導入済みアカウント数は40万超に

 同社の代表取締役社長CEOを務める李 剛氏(写真1)は、中国遼寧省大連市の出身。1990年代末に来日してIT企業で勤務後(2005年に日本国籍を取得)、2009年にネットスターズを創業した。当初は国際通信ゲートウェイの事業を手がけていたが、2010年代の初頭に中国・テンセントが立ち上げた「ウィーチャットペイ(WeChat Pay)」を見て「世界が変わった」(李氏)と感じたという。
 これが転機となり、2015年にウィーチャットペイを初めて日本に持ち込み、「コード決済のゲートウェイ」へと事業の軸足を移した(画面1)。これこそが、同社が「コード決済のパイオニア」と呼ばれるゆえんである。

ネットスターズ・代表取締役社長CEOの李 剛氏

画面1 決済ゲートウェイの事業フロー(出典:ネットスターズ資料)

 ウィーチャットペイから始まったコード決済の接続先は、2023年9月時点で29社にまで拡大。クレジットカード、電子マネー、共通ポイントを加えた「マルチペイメント」のゲートウェイ事業を提供する国内の加盟店はアカウント数で40万を超える(1アカウントは導入端末に1対1で紐づく。2023年5月末時点)(画面2、3)

画面2 決済種別ごとの決済額推移(出典:ネットスターズ資料)

画面3 決済ゲートウェイ取扱高の推移(出典:ネットスターズ資料)

 同時並行して、2020年からは「省人化」を志向するDX事業も本格化。専用アプリや、他の決済アプリなどに機能として登録が可能な「ミニアプリ」の開発・提供を通じて、モバイルオーダーや予約システム、クーポン、EC(越境ECを含む)といった店舗に求められるサービスを提供している。具体的には、羽田空港のネットショッピングや、JTBの施設チケット購入、美容サロンの会員証などをミニアプリの形態で提供するほか、神奈川県のキャッシュレス・消費喚起事業である「かながわPay」ではアプリ開発と運用に携わっている。
 決済ゲートウェイ事業では、海外にも進出している。参入実績として、まだ2022年のサッカーワールドカップ開催地としても記憶に新しいカタールをはじめ、モンゴル、カンボジアがある。これらの導入は現地の大手商業銀行やナショナルバンクを「パートナー企業」として行われているため、現地オフィスが必ずしも必要にならない点が強みだという(画面4)

画面4 海外展開時の事業フロー(出典:ネットスターズ資料)

 李氏は上場後の記者会見で、競合他社に対する同社の優位性として「高い技術力」を挙げた。多くの決済代行やPSPがオンプレミスや、サーバー技術を補完的に使用するにとどまっている中にあって、ネットスターズのシステムは「クラウドネイティブインフラ」と「コンテナ技術」により構築、稼働していることがその理由だ。「クラウドネイティブインフラ」とはアプリケーションやサービスをクラウド環境で設計・構築・運用するアプローチや考え方で、「コンテナ技術」は実行環境をホストOS上に他のプロセスから隔離された仮想的な区画を作り、その区画内でアプリケーションを動作させる技術を指す。
 その結果、決済処理成功率は99.99%と高い安定性を保持しつつ、1取引(トランザクション)あたりのコストも抑えられるなど多数のメリットがあるという(画面5)
 李CEOは上場記者会見の席で、「日本のキャッシュレスがもっと進展し、店舗のDXがより進化するように、いっそう努力していきたい」と意気込みを見せた。

画面5 クラウドネイティブインフラの特長(出典:ネットスターズ資料)

画面6 開示された連結損益計算書(出典:ネットスターズ資料)

画面7 業績推移(出典:ネットスターズ資料)

写真2 2021年9月にLINE Payから転身した、ネットスターズ・取締役COOの長福 久弘氏。「当社のDX事業では特に『省人化』をキーワードに掲げているが、キャッシュレスもその一環。今後もサービスを拡充していきたい」

写真3 ネットスターズ・取締役CFOの安達 源氏は、「キャッシュレス市場自体が伸びているが、当社はそれよりもはるかに早く売上高や取扱高を伸ばしている。まだ赤字上場なので、なるべく早く黒字化への道筋を示したい。加盟店からの信任を頂いて、トップラインを伸ばしていきたい」と話した

写真4 上場セレモニーの模様(写真提供:ネットスターズ)

写真5 上場セレモニーの模様(写真提供:ネットスターズ)

 

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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