PayPayの決済利用の勢いが止まらない。2020年度の年間決済回数は20億回を超え、前年の2.5倍になった。新型コロナウイルスの感染拡大第3波を受けて、発出された2度目の緊急事態宣言下にあった2021年1月〜3月の期間も右肩上がりに推移し、「3月単独で見れば交通系IC電子マネーに匹敵する決済回数」(Zホールディングス・代表取締役社長Co-CEO/共同最高経営責任者の川邊 健太郎氏)に到達した。
『超PayPay祭』が利用増誘い、3月単月では3億回前後の決済回数に
2021年1月〜3月のPayPayの決済回数は6億1,559万回。前年同期間の3億7,500万回から1.6倍に成長した(画面1)。特に、付与上限はあるものの、利用金額の20%以上のPayPayボーナスを還元する「超PayPay祭」を大々的に実施した3月はさらに利用が伸び、その決済回数は3億回に迫ったものと推測される。
交通系IC電子マネーの決済回数は、一昨年の2019年12月に初めて2億5千万件を突破したとして、JR東日本などの交通事業者が連名でプレスリリースを発表している。川邊氏の発言はおそらくこれを意識したものだろう。
交通系 電子マネーのご利用件数が最高記録を更新!1ヶ月あたり のご利用件数が2億5千万件を初めて突破しました!【PDFファイル】
新興であるコード決済の、しかも1社が提供する決済サービスが、日本全国で発行・利用されている交通系IC電子マネーの総決済回数に肉薄した事実は、ショッキングともいえる。しかもここに至るまでの道のりがわずか2年半(PayPayのサービス開始は2018年10月)というスピード感も、決済業界の関係者にとってはただ驚きをもって受け止めるしかないのではないか。
決済回数以外の指標についても同様に拡大を続けている。加盟店数は316万箇所まで拡大し、登録者数は3,803万人となった(いずれも2021年3月末時点)。ちなみに、交通系以外を含むIC電子マネー(対象は「楽天Edy」「SUGOCA」「ICOCA」「PASMO」「Suica」「Kitaca」「WAON」「nanaco」の8サービス)の決済端末台数は536万台で、対応カードの発行枚数は4億5,141万枚である(2021年2月末現在。出典:「決済動向」日本銀行 決済機構局)。
コマースサイトのインハウス決済比率が7割弱まで上昇
「(超PayPay祭は)売上高の押し上げだけでなく、中長期的なユーザー基盤拡大につながる施策ととらえている。今後も、国民的なイベントに昇華できるように取り組んでいきたい」(川邊氏/写真1)
こうしてPayPay(画面2)で獲得したユーザー基盤を、ヤフーのグループ事業にフル活用していく。例えば「Yahoo!ショッピング」や「PayPayモール」の利用決済額の内訳を紐解くと、決済額のうち「Yahoo! JAPANカード」、「PayPay」、「PayPayボーナス」などの自社決済手段による決済比率が、PayPayを導入した2019年以降に急上昇していることがわかる。こうした「インハウス決済比率」は足下で過去最高の68.2%にも達しており、囲い込みが進んだことがわかる(画面3)。
また、収益面では、PayPayとの連携強化をクレジットカードや銀行の金融事業に生かしていく方針だ。今年4月5日に「PayPay銀行」へ商号変更したジャパンネット銀行に続き、ワイジェイカードも株主総会での承認を条件として「PayPayカード」への商号変更を予定している(画面4)。
なお、Zホールディングスでは主要な金融サービスを「PayPay ○○」の名称にリブランディングすることで、サービス間の連動性を高めていくことを基本方針としているが、3月に経営統合したLINEのサービスについては、現時点では「PayPay ○○」に名称変更していく予定はないという。
この他にも、同社が「シナリオ金融」と呼ぶ事業カテゴリでは、「Yahoo!ショッピング」と「PayPayモール」で昨年12月から開始した「あんしん修理保険」の契約が順調に伸びているという。両サイトから購入した新品家電製品の修理保険だが、超PayPay祭の最終日に当たった3月28日には単日で4万3,357件の契約があり、過去最高となった。
Zホールディングスの2020年度通期(2020年4月1日〜2021年3月31日)決算は、売上収益が対前年比14.5%増の1.2兆円を達成。特にショッピング事業の成長が好業績を牽引し、eコマース取扱高は対前年比24.4%増の3.22兆円となった(画面5)。2021年度は統合したLINE事業とのシナジー創出(写真2、画面6)により、売上収益1.52〜1.57兆円の増収を目指していく(画面7)。