Origamiがプリペイド決済や資金移動に対応へ、そしてオレンジ色のニクいプラスチックカードも

スマホ決済サービスを提供するOrigamiは9月27日、報道陣や関係企業などを招き、事業戦略を発表する「Origami Conference 2019」を東京都内で開催した。約2時間に及んだ発表会では同社が今後提供するサービスや事業に関して数多くの告知が含まれていた。整理して紹介する。

資金移動&プリペイド決済に対応(2019年11月上旬開始)

 Origamiが提供するスマホ決済サービス「Origami Pay」では、サービスを開始した2015年10月以降、決済カード(クレジットカード/デビットカード)への紐付け登録か、銀行口座からの直接引き落としのいずれかの方法で利用代金を支払う仕組みだったが、今年11月からは新たに事前チャージ方式のプリペイド決済にも対応する(写真1)。これに先立つ8月29日に同社は資金移動業としての登録を完了。「資金移動業」としてのサービス提供となることから、ユーザー間での送金も可能になる(写真2)

写真1

写真2

プラスチックカードの「ORIGAMI Card」をラインアップ(詳細は今後発表予定)

 同社のコーポレートカラーであるオレンジ色をフィーチャーしたカード券面の「ORIGAMI Card」の名称とデザインが初披露された(写真3)
 券面には6ピン端子の接触ICモジュールが見えるが、「カードのタイプや機能などの詳細は追ってあらためて発表したい」(Origami 事業開発ディレクターの伏見 慎剛氏)とのこと。11月にプリペイド決済に対応することからプリペイドカードである可能性も考えられるが、「カード券面の右側のほうとか、方式とか気になるなぁ、という方もおられると思うが、面白いほうの機能を盛り込んで提供していきたい」(伏見氏)と含みを持たせた。

写真3

Origamiの決済機能を無償で外部提供(9月27日から提供)

 Origamiの決済機能を、企業がアプリに組み込んで提供できるパッケージを無償提供する。同日の発表会ではこの発表に最も力を込めていたようにも見えたOrigamiの康井 義貴代表取締役社長(写真4)は、「企業が決済のための基盤を1から10まで構築していくのは大変で、技術的にもハードルが高い」ところをOrigamiが無償で提供することで「Payを開放する」と宣言した。

写真4

 「単にOrigamiアプリを提供するという意味ではなく、Origamiの『Pay』の機能を開放し、無償で提供していく。いろいろな業種のアプリに(Origamiの機能が)入っていくことで裏側のネットワークを提供していきたい(写真5、6)」と話した。
 また、こうした共同での取り組みを「Origami Network」と命名し、オープンな金融プラットフォームと位置付けた。企業のデータ利活用なども視野に入れており、発表会当日には写真7の14社がパートナー企業として名乗りを上げた。

写真5

写真6

写真7

しんきんバンキングアプリにOrigamiの決済機能を搭載(9月26日から提供)

 上記した外部提供の第1弾として、信用金庫発表会前日の9月26日に信用金庫のモバイルバンキングアプリである「しんきんバンキングアプリ」(写真8)がOrigami Payの機能を使えるようになった(Android版)。

写真8

 なお、Origamiは今年5月から信用中央金庫(2018年9月にOrigamiと資本業務提携を締結)を中央機関とする全国の信用金庫との連携を拡大しており、各信金の口座がOrigamiに登録できるほか、信金から店舗への加盟店紹介が進んでいるという(写真9)。信用中央金庫の須藤 浩 専務理事は「信金がOrigamiを紹介した店舗数は国内のコンビニの数(約6万店)を超えた。今後も、決済に限らず、地域活性化に向けてOrigamiとの連携に取り組んでいきたい(写真10)」と意欲を見せた。

写真9

写真10

Origamiアプリ上で保険や融資も提供(行政機関への登録を経て順次開始)

 Origamiは今後、決済にとどまらず、「殖やす」「借りる」「備える」のメニューをラインアップすることで、金融事業としての強化を図っていく(写真11)。そのために同社は、100%子会社としてOrigami Financial Servicesを2019年9月9日に設立した。資本金は1億円(資本準備金を含む)。

写真11

 社長には、金融ITベンチャーやヤフーなどで証券、FX、投資信託、クレジットカード事業、保険などの事業開発に携わった正木 美雪氏が就いた。OrigamiのWallet残高を通じて、「投資」「融資」「保険」などのメニューを今後、提供していく。「テクノロジーを活用して次の世代の課題を解決するような世界を、パートナーの皆さんと一緒に作っていきたい」(正木氏/写真12
 「Origami Credit(クレジット)」ではOrigami Payと連携する「後払い」の機能も提供する。「急な資金需要に対して融資を行う。申込から返済まで、すべてOrigamiアプリの中で完結する」(正木氏)ことを想定しているという。Origami Payの利用履歴をベースとし、IT技術を活用しながら与信の精度を高める。
 「Origami Insurance(保険)」の展開に関しては、提携パートナーとして、あいおいニッセイ同和損保、第一生命の2社の名前が発表された。

写真12

ビッグデータ分析を事業化する推進組織を発足(発表日以降)

 AI・IoT・ビッグデータなどのデジタル技術やデータ活用を検討する新規事業として、「Origami Technologies」を開始した。Origami Payの決済を通じて収集・蓄積されたビッグデータを活用した事業を立ち上げていく(写真13)
「Origami Payやネットワークの提供がコインの表だとしたら、裏はビッグデータアナリティクスだと考えている。データを使って、本質的にどうやって事業を作っていくのかがこれからのテーマになる」(康井社長)
 具体的なサービス内容などの詳細は、追ってあらためて発表される。

写真13

Origami Payの導入加盟店数は国内145万カ所に(2019年末予定)

 Origami Payの導入加盟店数は、2019年末予定で国内145万カ所に上る。月間の利用者数は2年前の2017年8月と、今年8月との比較で21倍に成長しているという。
 パートナー企業との提携事例では、LCC航空会社のPeach Aviationが、今年10月1日から東京(成田)との間、12月26日からは大阪(関西)との間で就航する奄美群島でOrigamiの利用を促進する。地元の金融機関である奄美大島信用金庫とも連携し、観光施設や土産物店などのOrigami加盟店で利用できる割引クーポンを飛行機の搭乗券に掲載するほか(写真14)、Origamiでの支払いがその場で割引になるQRクーポンを掲示するなど、島を訪れる観光客だけでなく現地住民の利用も促す。

写真14

 地域への取り組みでは統一QRコードの「JPQR」にも積極的に対応する(写真15)。Origami・取締役/社長室ディレクターの桑原 智隆氏(写真16)は「JPQRの意義は、地域や小さなお店に寄り添う存在であること。人手不足や生産性向上といった諸課題を解決して、キャッシュレスを推進していきたい」と意気込みを見せた。

写真15

写真16

写真17 左から、Peach Aviation 執行役員 事業戦略室長の轟木 一博氏、Origamiの康井 義貴 代表取締役社長、信用中央金庫の須藤 浩 専務理事

 

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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