【レポート】「2年以内に指紋センサー単体で10ドルを切りたい」 ノルウェーのZwipe社が生体認証機能内蔵ICカードで日本市場進出を狙う

 

 
生体認証機能を内蔵したICカードの開発技術を保有するZwipe AS(ノルウェー)と日立ハイテクノロジーズは、1月24日に東京都内でソリューションの説明会を開催した。バッテリーレス(電池非搭載)で、ICカード単体での指紋認証機能が利用できるZwipe製品の特徴を生かして、提供価格の低廉化と、決済、入退管理、政府系IDなどの利用分野で日本市場への進出を目指す。[2017-01-24]

 

●EMVカード単体で「指紋認証」が可能に
ノルウェーを本拠とするZwipe(ズワイプ)社は、薄型の指紋センサーを既存のICカードに内蔵し、本人認証に使われている現在のPIN入力方式を、個人の生体情報による認証に置き換えるカード技術に特化して設立された企業。このほど日本市場への販路拡大に向けて、日立ハイテクノロジーズと提携した。

Zwipeの生体認証技術は、クレジットカードなどにも採用されているカードの国際標準サイズ(ISO/IEC 7810 ID-1)に適合しており、また、決済系ICカードの標準仕様である「EMV」に準拠した接触/非接触ICカードに応用が可能だ。Zwipe ASでセールス&マーケティングのSVPを務めるEinar Boije氏(写真①)は、「(非接触ICカードをかざすだけで使えてしまう)コンタクトレス決済では利用可能な金額に上限が設定されているが、Zwipeの生体認証カードであれば、コンタクトレスのスピーディさを、上限金額の設定なしで利用できるようになる」として、特に非接触ICカードと指紋認証の組み合わせの利点を強調した(写真②)

写真① Zwipe AS セールス&マーケティングSVPのEinar Boije氏

写真① Zwipe AS セールス&マーケティングSVPのEinar Boije氏

写真② 磁気ストライプ、接触EMV、非接触EMVとの比較

写真② 磁気ストライプ、接触EMV、非接触EMVとの比較

さらに、スマートフォンなどを用いたモバイル決済と比べた場合の優位性として「モバイル端末はバッテリーが切れてしまえば利用できないが、カードリーダからの給電を受けて作動するZwipeは、カードと本人がそこにいるだけで利用できる」という。この優位性は同社がパテントを保有する「エナジー・ハーベスティング技術」(写真③)に拠っており、生体認証機能を内蔵したカードを提供する競合他社ではZwipe製品のようなバッテリーレス型は実現できない、とBoije氏は主張した。

写真③ Zwipe社は指紋認証機能内蔵カード技術で多数のパテントを保有する

写真③ Zwipe社は指紋認証機能内蔵カード技術で多数のパテントを保有する

Zwipeの製品の特徴は、個人の生体情報をサーバに転送したり、保存することなく、ICカード内部の安全性の高いメモリ領域にのみ保存される点にもある。これに対し、欧州で採用されている身分証明書などの政府系IDでは、個人の生体情報がカードではなく管理サーバ側に保存されることが多いが、「Zwipeではサーバ側のバックアップデータを安全にカード内にダウンロードしてくる仕組みを開発している」とのことだ。

 

●「ピースサインの撮影」で、なりすましはできません
Zwipeでは特に、「決済(Payment)」、「入退管理(Access Control)」、「政府系ID(Government ID)」の3つの市場への導入に意欲を見せている。お膝元であるノルウェーでは現地金融機関のSparebanken DIN銀行が、オベルチュールテクノロジーズ、Mastercard、そしてZwipeとの共同で指紋認証を搭載した非接触ICカードによるMastercardコンタクトレス決済の試行導入を実施した実績もあり、前述のようにスピーディな処理が要求されるコンタクトレス決済との相性の良さが評価を集めているようだ。

説明会の中でBoije氏は日本市場の特殊性にも言及した。「日本では今後、2020年のオリンピック大会開催に向けてキャッシュレス化が進み、現金とEマネーのバランスが変わってくるであろう点に注目している。ただし、Zwipeは技術開発企業であり、世界展開においては地場の企業とのパートナーシップを築いていくことが重要。日立ハイテクノロジーズと組むことでこのエマージングな市場に入っていきたい」(Boije氏)
ちなみに入退管理向けに関しては、向こう6カ月以内に「Zwipeアクセス」(写真④の最背面にある製品。ICカード型と異なりバッテリーを内蔵する)の提供を開始できるように準備中だという。

写真④ Zwipe社の製品ラインアップ。手前から接触/非接触両搭載のZwipe対応デュアルインターフェースカード、Zwipe対応非接触ICカード、入退管理向けの「Zwipeアクセス」デバイス

写真④ Zwipe社の製品ラインアップ。手前から接触/非接触両搭載のZwipe対応デュアルインターフェースカード、Zwipe対応非接触ICカード、入退管理向けの「Zwipeアクセス」デバイス

良いこと尽くしに見えるZwipeだが、最大の障害は価格だろう。既存のICカードに比べて果たしてどのくらいのコスト上昇要因となるのだろうか。
「近年スマートフォンへの搭載需要が増えたことが大きく寄与し、指紋センサー単体の価格がこなれてきた(affordable)。今後2年間で『10USドル』を切りたい。といってもわずか1年半前の時点では25USドルもしていたものなので、十分に実現可能ではないか。これもZwipeのミッションだ」(Boije氏)

ところで日本では最近、指でピースサインを作っているところをスマートフォンで撮影されると、指紋情報がコピーされる危険性があるとの報道が記憶に新しい。記者がこの件について尋ねたところ、Boije氏は「Zwipe製品では『3Dスキャナー』を採用し、指紋情報については260のポイントを検証している。単なるピクチャーのコピーではなりすましはできない」と説明し、同社の製品には該当しないリスクであると断じた。

 

 

[2017-01-24]

 

 

About Author

Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

Comments are closed.