じぶん銀行は4月3日、昨年夏に今春の投入計画をアナウンスしていた「スマホデビット」のサービス提供を同日より開始した。スマートフォン1台でのサービス完結にこだわってきたじぶん銀行らしく、新たにプラスチックカードを発行しない、完全カードレスのデビット決済サービス。ジェーシービー(JCB)との提携により、対面決済では「QUICPay+」、非対面決済では国内外のJCB加盟店でのインターネットショッピングなどに利用できる。
JCBブランドを冠するスマホデビット、iPhoneは非対面決済のみ対応
じぶん銀行が4月3日からサービス開始した「スマホデビット」は、カードを発行しない完全カードレスのデビット決済サービス。ジェーシービー(JCB)との提携により開発・提供され、国内外のJCB加盟店での支払いに利用できる(高速道路料金、ガソリンスタンドなど一部例外あり)。利用代金はその都度、じぶん銀行の普通預金口座から引き落としされる。利用限度額は口座残高の範囲か、あらかじめ自身で設定した利用限度額まで利用できる。
スマホデビットの発行は、同行に円普通預金口座を持つ16歳以上の利用者が対象。年会費や発行手数料は無料。発表当日にアップデートされたじぶん銀行のスマートフォンアプリから、メニューとして新たに掲載された「スマホデビット」をタップすることで申し込みと発行が受けられる仕組みだ。(以降、本稿では便宜上、アプリに発行されるスマホデビットのことを「バーチャルカード」と表現する)
バーチャルカードの発行は、基本的に即時発行で行われ、同行によれば最短30秒で申し込みから発行までが完了する。スマホデビットはアプリからの申し込みが完了すると、画面中にJCBマークの付いたカード券面が表示される(写真1)。この時点で、カード番号やセキュリティコードなどの記載情報を使ってインターネットなどの非対面決済に利用できる。(セキュリティの観点から記載情報はアプリ起動時点でマスク表示されており、券面をタップすることで番号などの情報を表示するようになっている)
その上で、さらにメニューから「Google PayでQUICPayに登録する」をタップして進むと、利用規約の表示などを経て「QUICPay+(クイックペイプラス)」がスマートフォン中に発行される。この際、アプリに表示されているカード番号が直接使われるのではなく、JCBがトークン化したカード番号を用いてQUICPay+を発行する(写真2)。この状態まで進めば、晴れてスマホデビットがQUICPayとQUICPay+対応店舗での対面決済にも利用できるようになる。
なお、今回の新アプリでQUICPay+対応の対面決済と、インターネットなど経由の非対面決済の両方に対応するのはAndroid OS版のみ(対面決済はAndroid 5.0以上でおサイフケータイアプリ6.1.5以上に対応するデバイスが利用可能)。iPhoneのiOS向けは非対面決済のみの対応となっている。
じぶん銀行としてはiPhoneのiOS向けにも対面決済を提供したい考えだが、iPhoneのApple Payには現時点でデビット決済に対応しているものが存在しないことから(FeliCaベースの場合)、導入できていないというのが実情のようだ。
こだわったのは、『その日からお客さんがすぐに使えるように』
リリース日となった4月3日の当日には、スマホデビットの開始を記念して、東京都内でプレス発表会が開催された。
じぶん銀行で受信・決済ユニット長を務める榊原 一弥 執行役員(写真3)は、スマホデビットの開発経緯について「デビットカードは以前から出したいと思っていたが、チーム長として、検討チームに私から3つのお題を出していた。1つ目は『1枚もカードは発行しない』、2つ目に『スマホですべて簡単に済ませられること』、3つ目に『その日からお客さんがすぐに使えるようにしたい』ということ。そんな折、JCBから素晴らしい提案をもらい、協業することにした」と開発の経緯を振り返った。
提携先となったジェーシービー プロセシング事業統括部門長 兼 プロセシング事業統括部長の北島 繁太 執行役員(写真4)は「QUICPayは全国84万台以上の端末で利用できる。支払う際に、スマホを起動したり、お客さんが金額を入力したりする必要もなく、かざすだけで決済できるのが特長だ」と述べ、その加盟店数は現在進行形でさらに拡大中であることをアピール。加えて、その場で即時発行ができるスマホデビットの陰の立役者として、同社がバーチャルカードの発行を裏で支えている自負をのぞかせた。
ネット銀行では後発となる2008年に開業したじぶん銀行の利用者は、2018年末までに約338万口座を突破。実店舗を持たず、すべての金融サービスをスマートフォン向けに提供することを特徴として、住宅ローンの提供やスマホだけで利用できるATM(セブン銀行との協業)、AIによる外貨予測・自動積立などのサービスを提供してきた。
折しもこの4月1日からの体制変更で、じぶん銀行はKDDIが同日に立ち上げた中間金融持株会社「auフィナンシャルホールディングス株式会社」の傘下に入り、「auフィナンシャルグループ」の一翼を担う存在に(写真5)。榊原氏は「グループ唯一の銀行としてデビット決済を提供していきたい」と意気込みを見せた。