【更新】開始半年で50万店、600万人登録を突破、PayPay一色に染まったヤフーの決算説明会

昨年10月から提供を開始したスマートフォン向け決済サービス「PayPay(ペイペイ)」の加盟店が今年(2019年)4月時点で50万店を突破した。PayPayの累計登録者数は、2度に渡る100億円キャンペーンに牽引され、サービス開始から半年で600万人を超えた。決済件数(決済回数)は累計2,500万回を突破している。4月25日にヤフーが開いた2018年度通期および第4四半期決算説明会で、ヤフーの川邊 健太郎 代表取締役社長(最高経営責任者)が初めて明らかにした。

決済件数も大幅伸長、「早期に1,000万人を超えたい」

 昨年10月5日にリリースされた「PayPay」。その営業開始から7カ月間での50万加盟店達成に対し、ヤフーの川邊 健太郎 代表取締役社長(最高経営責任者)(写真1)は「他社の50万店に至る過去の実績を調べたが、(PayPayが)最も早かった」と胸を張る。

ヤフー 代表取締役社長・最高経営責任者 川邊 健太郎氏

 特にこだわっているKPI(重要業績評価指標)は決済件数。その決済件数(決済回数)はサービス開始半年で累計2,500万回を突破している(写真2)。注目すべきは、家電量販店などに並ぶ高額商品の購入に最大20%還元を求めてユーザーが殺到、大きな話題を呼んだ第1弾の「100億円キャンペーン」が行われた第3四半期(昨年10〜12月)よりも、第4四半期(今年1〜3月)のほうが著しく決済件数が伸びていることだ。今年2月から始めた第2弾の100億円キャンペーンでは、最大20%還元をうたいながらも、1回の支払いに対する還元の上限額を1,000円相当に設定するなどのサービスを変更した。その結果、「日常生活利用に振り切ったため、問題も起こらず、安定してキャンペーンを提供できている。決済件数も伸びた。われわれが考えていた通りに事が運べている」(川邊社長)と評価した。

写真2

 PayPayの累計登録者数は、3月末までに600万人を超え、昨日(4月24日)時点では666万人を突破した。ただし、単純に決済回数(2,500万回)を人数(600万人)で割れば、半年間で1人あたり4回ほどしか利用していない計算にもなる。川邊社長はこの数字に「まだまだまだ。」と姿勢を正すが、「逆に言うと、すべてが“伸びしろ”」と切り返す。その上で、「早期に1,000万人を超えたい。ここを超えると、知名度の高いものを使用すると言われるユーザー層が使い始める。日本のキャッシュレスを牽引していける存在になるのではないか」と早くも次の目標に視線を移している。

「データ」と「残高」を使ってマネタイズ、2019年度もPayPayへの投資は継続

 とはいえ、店舗数、利用者数、決済回数、そのいずれを取っても実際に営業に注力するのはPayPay(株式会社)であって、ヤフーではない。ソフトバンクとの合弁会社(PayPay)の設立、また100億円キャンペーンを含めて、その事業立ち上げに前期から巨額を投じてきたヤフーは、どこで投資を回収するのか。
 その答えは、「O2O」「広告」「金融」という3つの領域であり、その際の資産となるのがPayPayの積み上げた「(決済)データ」と「残高」だ(写真3)。具体的な事業としては、PayPay残高が不足する場合でも利用実績に応じて一定額まで支払いを可能にする後払いサービスや、余剰残高、ポイントを用いた投資信託、保険などの提供を通じて、金利や手数料収入を目論んでいるという。

写真3

 PayPayが事業を開始する際の記者会見の席で「ヤフーをもう一つ作る覚悟」と話した川邊社長。「2019年度もきっちりとマネタイズの準備をして、ゆくゆくは1,000億円以上の営業利益の出るような事業に育てていきたい」と意気込みを見せている。
 なお、同社の2019年3月期決算(連結)における持分法による投資損益はPayPay単体で183億円に上る(*1)。「PayPayの前期は半年しか事業を行っていないが、今期は1年間になるので、さらに増える見通し」(坂上 亮介常務執行役員・最高財務責任者)とのことだ。

「100億円」終了後のボーナス付与率は3%に

 PayPayの事業に関する説明はまだ続く。それだけ投資家やアナリストの注目度が高いことの表れでもあるのだろう。実際、1時間の決算説明会で半分ほどの時間がPayPayの説明に割かれた。
 まず、PayPay加盟店の拡大は、この第1四半期も続く。イオン、中国の滴滴出行とソフトバンクが合弁で立ち上げたタクシー配車のDiDi(ディディ)、丸亀製麺、ライトオン、商店街などでも導入が進む予定だ(写真4)
 また、現在提供中の100億円キャンペーンが終了する5月8日以降のユーザー還元についても発表があった(写真5)。PayPayの支払いで付与される「ボーナス」残高は通常0.5%だが、これが3%に上がる(YJカード以外のクレジットカード紐付けは0.5%据え置き)。さらに、20回に1回の確率で最大1,000円相当のPayPay残高が当たる(YJカード以外のクレジットカード紐付けは対象外)。100億円キャンペーンでおなじみの「20%還元」は、6月以降は地域や加盟店を絞って継続される(適用条件に変更あり/写真6)。

写真4

写真5

写真6

 6月からは、ヤフーショッピングでの支払いにもPayPayが使えるようになる(写真7)。これはコード決済による決済ではなく、DiDiと同じく、オンライン決済による対応となる。ヤフーショッピングでは「期間固定Tポイント」が貯まる仕組みがあるが、これが「PayPayボーナス」に切り替わる。ヤフオクの売上金をPayPay残高にチャージして使うこともできるようになる。「期間固定Tポイント」と「ヤフオク売上金」の合算では昨年度実績で年間7,000億円相当が還元されているという(*2)。まさに、ヤフーのサービスの至るところに「PayPay」が融合していく展開だ。

写真7

金融中間持株会社を新設し、ガバナンスを強化

 決算説明会では、同社の事業再編に関する発表も行われた。本年10月1日付けで、会社分割により持株会社制に移行する(写真8)。「新しいことを作っていこうということで、『Y』の次の『Z』へ」(川邊社長)との由来で命名された「Zホールディングス株式会社」がグループ全体の経営機能を担う。その下に新設される事業会社として「ヤフー株式会社」、そして金融中間持株会社を新設して、ジャパンネット銀行などをぶら下げる計画だ。
 この移行について川邊社長は、「より事業のスピードを上げて、柔軟にしていきたい。加えて、これからPayPayを通じて金融事業を行っていくときに、きちんとしたガバナンスを整え、意思決定していくために決定した」と説明していた。

写真8

 

<2019年4月25日22:30 記事の修正>
*1)初出掲載時、持分法による投資損益の金額についてPayPay以外のものを含む数字を記載しましたが、より正確な数字が得られましたので、PayPay単体の持分法投資損失の金額に修正しました。
*2)初出掲載時に、「ヤフーショッピングでは「期間固定Tポイント」が貯まる仕組みがあり、年間7,000億円相当が還元されているが、これが「PayPayボーナス」に切り替わる。」としましたが、写真7に記載の通り、年間7,000億円相当は「期間固定Tポイント」と「ヤフオク売上金」の合算でした。このため、記載から誤りを訂正しています。

 

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

Comments are closed.