キャッシュレスで呑みたいのなら福岡へGO! 中州の屋台村でQRコード決済に酔いしれる

日本政府の旗振りもあって、キャッシュレスの波は今や日本全国に広がりつつある。こうした時流に乗って自治体と決済事業者の連携が相次いでいるが、とりわけ活気付いているのが福岡市だ。行政として掲げた実証事業がその牽引役だが、QRコード決済に取り組む事業者による陣取り合戦がすでに始まっている。全国的にアツかった今年の夏、福岡市は果たしてキャッシュレスの聖地となれるだろうか。そんな思いを胸に秘め、まずは乾いた喉を潤そうと中州の屋台村を目指す筆者であった。

■「金印」見たさにLINE Payでお支払い
 福岡市と福岡地域戦略推進協議会(FDC)が、AIやIoTなどの先端技術を活用した社会課題の解決等に繋がる実証実験プロジェクトを全国から募集し、優秀なプロジェクトの福岡市での実証実験をサポートする「福岡市実証実験フルサポート事業」の募集を開始したのは今年5月のこと。このうち「キャッシュレス」をテーマとした実証実験の採択プロジェクト9件を決定し、6月12日に授賞式を行った。
 採択された9件の内訳は、福岡市の施設を対象とするものが1件、民間施設を対象とするものが8件で、それぞれ、LINE、楽天、Origami、ヤフーといったいわゆる「QRコード決済」に取り組んでいる事業者が採択された(表1)

表1 採択事業者の一覧
(出典:福岡市2018年6月28日付け記者発表資料「実証実験フルサポート事業『キャッシュレス』実証実験開始!」より)

 そして、6月29日からは博物館、動植物園などの公共施設を対象とした実証実験がスタート。その1つが、漢委奴国王印(かんのわのなのこくおういん)、通称「金印」を所蔵することでおなじみの福岡市博物館だ(写真1)
 観覧料は一般で200円。少額の支払いということで、キャッシュレスにうってつけの環境といえる。LINE Payで支払う場合には、自分のスマートフォンでLINE Payアプリを起動し、表示されたQRコードを専用端末で読み取ってもらうだけ(写真2)。これであっという間に決済が完了し、あとは金印目掛けて突き進むのみだ。
 利用できる電子決済としては他に交通系ICカードにも対応していたが、クレジットカードやAlipay/WeChat Payなどは未対応とのことだった。中国からの観光客が多いこともあって、このあたりのサービス拡充にも期待したい。

写真1 福岡市博物館。金印の実物はぜひ、足を運んでご自身の目でご覧いただきたい

写真2 電子決済は、LINE Payに加えて交通系の電子マネーにも対応していた

■屋台村に広がるQRコード決済、紙型のQRコード決済も
 そして、博多の屋台へ。取材に訪れたのは9月初旬とあって、8月中旬からすでに導入稼働済みの屋台、そしてまもなく導入を始める屋台が混在する状況だった。QRコード決済を導入している屋台の一覧は福岡市のホームページで公開されており、表2の通りとなっている。この表は随時更新されており、日々刻々と利用できる屋台が広がっていっている状況だ。

表2 利用できる屋台の出店場所マップ – ※地図タップで下記ホームページへリンクします
(計22屋台、2018年9月10日現在。出典:福岡市実証実験フルサポート事業のホームページ)

 さて、この地図を片手に中州の屋台村を廻ってみる(写真3、4)。すると、何ともお店のキャッシュレス対応の手本のような素晴らしい屋台を見つけた。訪れたのは中洲十番さん(写真5)。論より証拠でご覧ください。このスキのないアクセプタンスマークを(写真6)。お話を伺うと、「導入してから実際にひと通りは使われた」というから、屋台を訪れるお客さんのニーズに合っていたといえるだろう。

写真3、4 川沿いに続く屋台村の光景。眺めているだけで喉が渇いてくるから不思議

写真5 レッドな看板がまぶしい中州十番さん

写真6 クレジットカードから非接触ICの電子マネー、QRコード決済まで、完璧なキャッシュレス受け入れ状況!

 生ビールで乾いた喉を潤し、博多名物の焼きラーメンを堪能し、すっかりイイ気分になった筆者(写真7)。中洲十番さんは、QRコード決済としてはアリペイ、ウィーチャットペイ、楽天ペイ、LINE Payの4種類に対応していたが、ここでは「楽天ペイで!」と選んで告げてみた。
 すると、意外なことに、スマートフォンでお店の端末に表示されるQRコードを読み取って支払うか、お店で印刷した紙のQRコードを読み取って金額を自分で入力するか、と尋ねられた。確かに、お店の脇に楽天ペイを象徴する赤色カラーに縁取られた紙のQRコードが立ててある。お客さんが好きなほうを選べるのだという。
 自分で金額を入力して決済し、スマホの画面を店員さんに見せるのは何となく趣がないと感じた筆者は、お店の端末を使ってもらうことにした。支払金額を確認された後、店員さんがタブレット画面にQRコードを表示してくれたので、筆者は自分のスマートフォンから楽天ペイのアプリを立ち上げ、「コード表示」「QR読み取り」「セルフ」のタブから真ん中の「QR読み取り」をタップするとカメラが起動した(画面1)
 お店のQRコードがカメラのフレームに入ったと思った刹那、画面は切り替わり(画面2)、支払いを完了するためにボタンを横にスワイプする画面、そして決済の最終確認画面と進み、無事にお支払いが完了した(画面3)。店員さんもニッコリだ。ほどなくして、楽天ペイで決済をしたことを示すEメールもスマホに飛んできていた。

写真7 屋台の柱に輝くキャッシュレスのアクセプタンスマークと、博多名物の焼きラーメンと、よく冷えた生ビール(2杯目)

画面1 お店のタブレットに表示されたQRコードを楽天ペイのアプリから読み取る

画面2 楽天ペイでは決済時にポイントの充当も併用できる

画面3 画面がくるっと回って決済完了。お店の名前が表示されているので安心感がある

 筆者が店員さんのタブレットとスマホを重ね合わせたりしている場面を見て、お隣の若いお客さんたちが「あれ、アリペイじゃね?」なんてザワつく光景も見られたが、操作方法は至ってシンプル。ふらっと気軽に立ち寄れる反面、屋外という開放的な環境だけに、特に旅行者は現金の管理に少し気を使ってしまいそうに思えるが、そうした事情からも屋台とQRコード決済の相性は非常に良いのではないかと感じた。

 なお、先述の一覧表では「楽天ペイが使える」と記載されている屋台に足を運んだものの、「契約が遅れていてまだ利用できない」と説明されたお店もあった。じゃあQRコード決済は使えないかのかと残念な顔を見せたところ、「LINE Payは使えますよ」と店主が教えてくれる屋台もあった。一覧表を見る限り、屋台によって使えるQRコード決済は棲み分けられているように感じていたが、実際はそんな仕切りとは関係なくQRコード決済各社の熾烈な営業合戦が始まっていることが伺えた。
 もしあなたが日本のキャッシュレスの勢いを感じたいなら、ぜひ博多の屋台村に足を運ぶことをオススメする。その前に必ず、QRコード決済アプリのインストールをお忘れなく!

写真8 LINE Payのマークを掲げる屋台もけっこう見かけた

 

 

 

About Author

多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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