【レポート】リテールテックJAPAN 2018(後編)〜話題沸騰のQRコード決済、Amazon Go対抗ソリューションなどが活況に

3月初旬に東京ビッグサイトで開催された「リテールテックJAPAN 2018(主催・日本経済新聞社)」。後編では、Amazon Goに対抗して各社がこぞって出展した無人店舗やレジレスのソリューション、Visaの「タッチ決済」など、電子決済関連の最新サービスを紹介する。

■Amazon Goが火を付けた「無人店舗」、 RFIDのアプローチも活発化
 「リテールテック(流通小売の技術)」を銘打つ展示会だけに、レジなし・無人店舗を実現した「Amazon Go」への対抗心が垣間見える出展もあった。
 商社の高千穂交易は、新生代チェックアウトシステム「Supersmart(スーパースマート)」の取扱を今年2月から開始、その全容をリテールテックJAPANで披露した。買い回りの際にはスマートフォンアプリを用いて商品バーコードをスキャンしていき、最後にチェックアウト機器に買い物カゴを載せ、QRコードを読み込ませると、商品の照合と決済が行われる流れとなる(写真①、②)

写真① Supersmartはイスラエルの会社

写真② 会計時にはスマホ画面のQRコードをチェックアウト機器にかざす

 日本電気(NEC)のブースでは、レジなし・行列なしをコンセプトとする次世代店舗をデモ展示した。店内では商品を手に取るだけで、頭上のタブレット画面に商品関連情報が表示されるほか、オススメ情報が提案される。また支払いの際にもレジに並ぶ必要がなく、顔認証のみで完了する(写真③、④)

写真③ AIもフル活用して新しい購買体験を演出

写真④ 商品棚上のタブレット画面に手に取った商品関連の情報が表示される

 「無人コンビニ」「顔パス決済」の体験ブースを設置したテクムズでは、興味津々の来場者が一度、未来の購買を体験してみたいと行列を作った。同社の仕組みはシンプルで、入場ゲート前で顔写真の撮影と氏名(イベント会場では名字のみ)を登録。ゲート設置カメラで顔認証(写真⑤)を行い、店内へ。好きな商品を選んだら、出口前のタブレットに自分の顔と、商品を見せるだけ(写真⑥)。これで会計が完了する。

写真⑤ 入場ゲートでまずは顔認証

写真⑥ 商品と、自分の顔をタブレットカメラに映すだけで認証と決済が完了する

 なお、経済産業省が昨年4月にぶち上げた「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」効果もあって、リテールテックJAPAN会場内ではRFID(ICタグ)を利用した無人精算の展示デモも例年になく多く見られたようだ。
 リテールテックJAPANでは開催初日の3月6日に、当の経済産業省が講演でAmazon Goと日本のRFIDへの取り組みアプローチの違いについて「Amazon Goは小売店舗内の商品の動きだけを見ているが、RFIDでは店舗だけでなくサプライチェーン全体を管理、効率化しようとしている」(経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ 消費・流通政策課長の林 揚哲氏)と説明。現実に、大量のカメラを導入、設置する必要があるAmazon Goの仕組みは店舗の規模によってはそぐわないことも想定されるため、RFIDを用いたシステムとは優劣を単純比較できないと感じた。

■Visaの「タッチ決済」端末ズラリ、mPOS揃い踏みの一画も
 Visaは、これまで「Visa payWave」の名称で展開してきた非接触IC決済サービスについて、日本国内では「タッチ決済」と称することでさらなる普及拡大を図っていく意向。そのことがよく表れたブース展開だった(写真⑦、⑧)。タッチ決済に対応している決済端末がズラリと並び、「タッチ決済OK」、「タッチしてお支払い」のキャッチコピーが掲出されていた(写真⑨〜⑫)

写真⑦ 大きなブランドロゴを配したVisaブース

写真⑧ payWaveから「タッチ決済」へ呼称を変更

写真⑨ QRコード決済にも対応する決済端末

写真⑩ モバイル決済型の決済端末

写真⑪ タブレット型の決済端末も

写真⑫ タッチパネルで決済ブランドを選択する決済端末

   JR東日本メカトロニクスは、J-mupsセンターに接続する新端末として、タクシー向け端末「決済PAD-LK01」を参考出展した(写真⑬)。クレジットカードのほか、交通系電子マネー(Suicaなど)、流通系電子マネー(WAON、iD、QUICPay+)、キャブカードに対応する。またカプセル玩具の自動販売機「TUTUU PLANT」に対しても、電子マネー決済機能を提供する(写真⑭)

写真⑬ J-Mupsセンターがタクシーに初対応。端末の販売は日立ソリューションズ・サービス

写真⑭ カプセルマシンに電子マネー決済が対応

 大日本印刷(DNP)のブースでは全体キーワードとして掲げられた「キャッシュレス」の下、「カードレス」のテーマで、展示会直前にみずほ銀行、ジェーシービーと共同で発表した「みずほスマートデビット」のデモ機を展示していた(写真⑮)。DNPモバイルWalletサービスの採用事例でもあり、カード発行なしで、スマホ単体での非接触IC決済(QUICPay+)が利用できる。

写真⑮ QUICPay+に対応する「みずほスマートデビット」はカードレスでの提供

 香港の決済端末メーカーであるPAX Technologyも、今年のリテールテックJAPANで存在感を示していた。日本のエム・ピー・ソリューションとも提携する同社。今年はFeliCaに対応した新型のモバイル決済端末(S920F)を引っ提げ、北海道、京都、米沢、広島のタクシーへの導入を開始するそうだ(写真⑯)。年間500万台以上を出荷するグローバルメーカーも、日本市場の取り込みを虎視眈々と狙っている。

写真⑯ グローバルメーカーのPAX端末がFeliCaに対応

 流通店舗に設置されたキオスク端末や、最近ではマルチ対応の電子マネーチャージ機などで存在感を示しているPFU。同社のブースでは、電子マネーの現金チャージ機の新製品ラインアップとして、チャージ以外の機能を強化した製品群を披露していた。例えば、一定金額以上の現金チャージを行ったお客に対し自動で紙のクーポンを発券する機能(写真⑰)や、ルーレットでのポイント特典機能を大胆に盛り込んだモデル(写真⑱)など、チャージ時のちょっとした隙間時間を、お店がお客とのコミュニケーションに有効活用できる提案が盛り込まれた。

写真⑰ チャージ金額に応じてクーポン券の発行が可能な現金チャージ機

写真⑱ スロットマシンのようなポイント特典サービスは存在するが、電子マネーチャージ機に組み込んだところがユニーク

 ちょっと見たことのない景色が広がっていたのが、セイコーインスツルのブース。同社のBluetooth対応モバイルプリンタ「MP-B20」は、販売価格1万9,800円の手軽さもあって、カード決済のmPOS(モバイルPOS)サービスの多くで採用されている。そこで同社ブースでは、コイニー、Airペイ、ペイメントマイスターなど、世の中のmPOS端末たちとそれぞれ「ペア」で展示していた(写真⑲)。本来ライバル関係にあるmPOSがここまで一堂に集まるとは、まさに圧巻の風景だった。

写真⑲ 本来モバイルプリンタの展示なのだが、つられてmPOS端末揃い踏みという構図

 凸版印刷が出展した「マルチスタンプ」は、何とスマホ画面に直接「スタンプ」を押せる電子のスタンプサービス。スマホの静電気入力によるタッチスクリーンの特性を生かし、電源不要のスタンプ装置を用いてデジタルスタンプを実現した(写真⑳)。スタンプラリーやクーポンのデジタル化を店舗に対して提案していくという。

写真⑳ どう見ても普通のスタンプにしか見えないが、スマホ画面に押し付けると、ホラこの通り

 

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多田羅 政和 / Masakazu Tatara

電子決済マガジン編集長。新しい電子決済サービスが登場すると自分で試してみたくなるタイプ。日々の支払いではできるだけ現金を使わないように心掛けています。

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